自動車保険は任意保険として販売されており、強制保険の自賠責保険よりも柔軟な補償や保険料設定が実現されています。各保険会社や共済が、さまざまな工夫を凝らして販売をしており、毎年どのような自動車保険に加入するべきか、悩む人も多いでしょう。
自動車保険は万が一の事故時に備えて加入するものであり、保険料だけではなく、事故対応や補償・特約の内容などを詳しく分析した上で加入することがおすすめです。では、自動車保険において、気になる「ワーストランキング」とは一体どのようなものでしょうか。この記事では、豊かな皆さまのカーライフを応援するために、各自動車保険を分析しながら解説します。
この記事をまとめると
- 選んではいけない自動車保険がわかる
- 代理店型損保は苦情が多い傾向がある
- ネット型損保も一定の苦情は受けている
- 保険選びの際には、過去の事件にも注目を
- 補償内容もしっかりと比較して加入しよう
選んではいけない自動車保険の見分け方
自動車保険は自賠責保険では埋められない補償をしっかりと補い、事故の相手への補償も、自身の大切な身体や車両も補償するものです。
適切な内容の自動車保険に加入するためにも、「選んではいけない自動車保険」の知識を身に付けましょう。
では、選んではいけない自動車保険とはどのように見分けるべきでしょうか。
この章で詳しく解説します。
保険料の算出内容が不透明
自動車保険は自賠責保険のように、保険料が車種ごとに決められているわけではありません。年齢、免許証の色、車種や等級など、さまざまな要素を使って保険料を算出しており、同じ年齢・性別・車種の方であっても、全く同じ保険料になるわけではありません。
自動車保険は各保険会社が保険料を算出しており、元々保険料の算出要素が分かりにくいものです。しかし、いたずらに保険料が高く、算出された理由が不透明な場合は不満を抱いてしまうでしょう。
特に代理店型損保は保険料に代理店手数料が加算されており、高い傾向があります。同じ補償内容でもネット型(ダイレクト型)とは大きな開きがあるため、保険料に不満を持つユーザーも多いようです。保険料説明が明瞭な自動車保険を選びたいものですね。
保険料はどうやって把握する?
ほとんどの保険会社は、見積もりが可能です。保険会社のサイト上で加入条件を入力したり、代理店の営業担当者に伝えると、見積もりが取得できます。1社だけでは保険料を比較、検討ができないので、自動車保険に加入する際には、保険料を見積もりするようにしましょう。
不十分な補償内容
自動車保険は、事故に備えて加入するものであり手厚い補償を求める方が多い保険です。しかし、不十分な補償内容しか用意していない自動車保険会社は、やはり不人気な傾向があります。
自動車保険は同じ特約名でも、実は補償の内容が異なることがあります。たとえば、同じネット型自動車保険のチューリッヒ(ネット専用自動車保険)と、SOMPOダイレクト損害保険(おとなの自動車保険)におけるロードサービスでは、内容が異なっていますので、一部を紹介します。
チューリッヒ | SOMPOダイレクト損害保険 | |
---|---|---|
レッカー搬送無料距離 (または費用補償) | 100km 「ロードサービス費用特約付帯時」 | 1回の走行不能につき15万円を限度に実費払 ※応急処置費用および運搬費用は合算する |
上記を例に解説すると、チューリッヒではレッカー搬送を100キロ以内、SOMPOダイレクト損害保険は15万円以内としています。レッカー代金が安ければSOMPOダイレクト損害保険は距離の指定はないため、お得となる可能性があります。このように補償内容はじっくりと比較しなければ、必要な時に不十分に感じられるおそれがあります。
自動車保険は一見するとどこも同じにみえるかもしれませんが、決してそうではありません。保険料だけに囚われていると、必要時に「こんなはずではなかった」とがっかりしてしまうリスクもあります。
過剰な特約オプション
日本は現在少子高齢化社会を突き進んでおり、自動車保険のユーザーも減少していく恐れがあります。少ない顧客を多くの保険会社で奪いあう実情があり、保険会社は少しでも多くの顧客を獲得するためにさまざまな特約も販売しています。
自動車保険には自動車保険に関連しないような特約も登場しており、魅力的な保険商品として成長しています。
その一方で、特約の増加は過剰な傾向にあり、「多すぎる」という意見もあります。
また、特約の多さは契約者一人ではなく、ご家族全体にも影響を与えています。家族の誰が、どのような特約に加入しているのかわかりにくくなり、補償の重複が起きやすいのです。
重複リスクは次に述べます。
特約は重複リスクもある
自動車保険の特約は、弁護士費用特約などにおいて、家族がすでに別の自動車保険に契約している場合は補償内容が「重複」しているおそれもあります。重複していても、お支払い時には二重に支払われるものではないため、保険料の過払い状態が発生してしまいます。
特約の重複は、各保険会社が情報を共有し、過払いを指摘してくれるものではありません。契約者自身が、重複の有無を確認する必要があります。
更新時の保険料が高い
自動車保険の更新時期が来ると、現在契約している保険会社から、次年度の保険料案内が届きます。(メールや郵送物での通知が一般的です)
自動車保険は事故がない、あるいはノーカウント事故しかなければ毎年1等級ずつアップしますが、なぜか保険料がアップしてしまい、保険会社に対して不満を抱くこともあります。
すでに文中に触れた通り、自動車保険は自賠責保険料のように各社共通ではありません。そのため、等級が1等級上がっても、なぜか自動車保険料が翌年上がることもあるのです。普段の保険会社の対応に不満は無くても、翌年の更新時に不満を抱くケースもあります。
等級アップなのにどうして保険料が上がるの?
自動車保険で翌年1等級アップしているにもかかわらず、自動車保険の保険料が高くなっていることがあります。
加入条件は前年同条件、等級はアップしていても、どうして保険料が上がることがあるのでしょうか?
「保険会社側のミス?」と思うかもしれませんが、車種によっては前年度事故リスクが上がっており、等級に関係なく保険料が上がってしまうことがあるのです。なお、リスクの算出には、基本的に保険金に支払い実績などを基に作られている、損害保険料率算出機構が発表している「型式別料率クラス」が使用されていますが、保険会社によっては独自の料率クラスを使用していることがあります。
損害保険料率算出機構における型式別料率クラスは、ご自身で調べることも可能です。
詳しくは下記リンクをご参考ください。
参考URL:損害保険料率算出機構 型式別料率クラス
【型式別料率クラス】について詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にして下さい。
型式別料率クラスで保険料が変わる仕組みとは?
事故対応の評判が悪い
自動車保険で、保険会社に対して不満を抱きやすいのは、やはり「事故対応」です。
事故対応における不満は、以下の2つのパターンが挙げられます。
《 ① 事故の自社契約側への不満 》
事故対応の際に、車対車(バイク)の場合は、過失割合を激しく争うことがあります。
場合によっては自分の過失の方が少ないはずなのに、加入している保険会社から納得のいく過失割合が提示されない場合もあります。
また、自動車事故では自身の車両保険を使って修理を検討することもありますが、車両保険における保険金額の算出は、「時価」で評価されます。思っていたよりも車両保険金から保険金が受け取れず、不満を抱く契約者も少なくありません。
《 ② 事故の相手方保険会社への不満 》
事故対応は、相手方が加入している保険会社の担当者と話す機会があります。被害者側となった場合、相手方保険会社から示談交渉や賠償金額の提示が行われますが、時に納得のいかない対応がなされることもあります。
主な例は以下です。
- 治療を打ち切りされる
- 驚くほど低額の賠償金額を提示される
- 過失割合で相手方が強硬な姿勢を見せる
- 難解な用語で説明される
自動車保険の相手方保険会社に良い印象を持たなかった場合、口コミでも低評価をつける方もいます。また、自動車保険の見直しをする際にも、事故の相手方となった保険会社には加入しない!と決めている人も。
事故対応は自動車保険の印象を大きく左右するものなのです。
口コミや悪口の参考は注意を
自動車保険は口コミサイトも多く、参考にしながら保険商品を選ぶ方も多いでしょう。しかし、事故対応は自身の契約者にとって行っているものであり、加害者側・被害者側のいずれの立場であっても契約者のために交渉や提案を行っています。どうしても事故に関連する口コミや悪口は主観が多くなっており、参考にし過ぎないことがおすすめです。
事故においては、過失割合を争ってくれることは、保険会社が提供する優れたサービスの1つ、と覚えておくと良いでしょう。
2024年版|自動車保険のワーストランキング
では、2024年現在における自動車保険のワーストランキングとは、一体どのようなものでしょうか。
この章では各自動車保険会社を客観的に分析しながらランキングを紹介します。
顧客満足度が低い保険会社
顧客満足度の低い自動車保険会社のワーストランキングはこちらです。
なお、ワーストランキングの算出には、一般社団法人 日本損害保険協会(以下:日本損害保険協会)が公表している、苦情件数を参考にしています。
日本損害保険協会とは、損害保険代理店を会員とする団体であり、損害保険の普及に関する啓発・宣伝、社会貢献活動等を行っています。
画像、データの引用URL:日本損害保険協会
2024.02.29公表 会員会社にいただいたお客様の声 2023年10月~12月より
第1位 東京海上日動火災保険
第2位 損害保険ジャパン
第3位 あいおいニッセイ同和損保
以下にて、なぜこのようなランキングとなっているのか、詳しく解説します。
『ワーストランキング 第1位 東京海上日動火災』
東京海上日動火災は、日本を代表するメガ損保の1つです。苦情件数の多さの背景には、まず圧倒的な加入者数が挙げられます。苦情・クレームは、加入者が多いと相対的に上がる傾向があります。
件数 8.979件
契約・募集に関するもの 36.4%
契約の管理等に関するもの 14.6%
保険金に関するもの 47.9%
その他 1.1%
保険金支払いに関する苦情が多いことから、事故対応時のトラブルが多いと予想されます。支払いに納得できない、事故対応への不満などが寄せられているのです。また、契約・募集に関することも挙げられています。東京海上日動火災は有名な代理店型損保であり、代理店営業への不満も多いと考えられます。
ただし、メガ損保である東京海上日動は、事故対応実績も豊富で、就職時にもホワイト企業として人気がある企業です。
後述しますが東京海上日動火災は過去に保険金支払いのトラブルもあります。
『ワーストランキング 第2位 損害保険ジャパン』
こちらも、東京海上日動と並んでメガ損保として知られている、大手の代理店型損保・損害保険ジャパンが第2位にランクインしています。
件数 8.839件
契約・募集に関するもの 17.5%
契約の管理等に関するもの 26.3%
保険金に関するもの 43.1%
その他 13.1%
損害保険ジャパンへの苦情も、東京海上日動火災と同様で保険金に関するものが多くを占めており、事故時の対応に関する不満が寄せられていると考えられます。
また、契約の管理に関することも多く、更新時の対応や保険商品への疑問も多く寄せられていると考えられます。そもそもの契約数が多い保険会社のため、苦情も多い傾向にあります。
損害保険ジャパンも、過去に保険金支払いのトラブルがあるため注意が必要です。
『ワーストランキング 第3位 あいおいニッセイ同和損保』
あいおいニッセイ同和損保も、代理店型の自動車保険会社の1つです。苦情件数は東京海上日動、損害保険ジャパンよりも低くなっていますが、保険金に関する内容が多く、事故時の対応に不満を持つ方が多いと考えられます。
件数 6,732件
契約・募集に関するもの 17.0%
契約の管理等に関するもの 14.7%
保険金に関するもの 62.7%
その他 5.6%
また、契約や募集に関する苦情もあり、契約~更新時にクレームを入れている方も多いと予想できます。
ワーストランキングの傾向と分析
日本損害保険協会のデータを基に、ワーストランキングを発表しましたが、ある特徴が浮かび上がることにお気付きでしょうか。
上位の3つの保険会社は、「代理店型」の保険会社ばかりなのです。
この背景には、以下の2つのポイントが考えられます。
- 契約者数が多く、相対的にクレームもアップしている
- 契約更新時のトラブルが、代理店型に起きやすい
代理店型損保は古くからある営業スタイルの保険会社であり、ネット型自動車保険が普及している今も、根強い人気があります。また、ショッピングモールなどに保険ショップが入っていることも多く、身近に立ち寄れる代理店型は人気が安定しています。
その一方で、更新時には営業が行われることも多く、自身で自由に加入できるネット型の自動車保険よりもストレスを感じる人もいるようです。また、車を購入する時に、ディーラーを通して加入している方も多く、「自分で選べなかった」と感じる方もいます。
また、営業担当者を信頼して相談していても、保険料や補償内容への不満は起きることがあります。「契約時にもっと内容を教えてくれていたらよかったのに…」と不満を抱く人もいるようです。
メガ損保ならどこも苦情は多い?
国内のメガ損保はBIG3と呼ばれていますが、その1つである三井住友海上への苦情は、以下に留まっており、上位2社と比較するとクレームが低いと言えるでしょう。
『三井住友海上火災保険』
件数 3,952件
契約・募集に関するもの 15.8%
契約の管理等に関するもの 16.5%
保険金に関するもの 55.2%
その他 12.6%
同月データでは三井住友海上は3,952件の苦情が寄せられていますが、東京海上日動火災は同月8,979件であるため、約2.27倍も多いのです。こうした数字も、自動車保険選びの際に確認しておくと良いでしょう。
同じメガ損保であっても、こうした数字を比較しながら自動車保険を選ぶことが大切です。
ネット型損保は苦情が少ない?
日本損害保険協会の公表しているデータを見ると、契約者数の多さもあって、国内大手代理店型損保に多くの苦情が発生していることが読み解けます。
では、ネット型損保は苦情が少ないのでしょうか?
ネット型損保はメガ損保と比較すると契約者数が少ないため、苦情件数自体も少ないと言えます。日本損害保険協会のデータを見ると、アクサ損保やソニー損保は上位にランクインしています。ただし、ネット型損保なら苦情がゼロ!ということではないので注意が必要です。
『アクサ損害保険』
画像、データの引用URL:日本損害保険協会
2024.02.29公表 会員会社にいただいたお客様の声 2023年10月~12月より
件数 5,903件
契約・募集に関するもの 57.6%
契約の管理等に関するもの 33.1%
保険金に関するもの 8.3%
その他 0.9%
※アクサ損保の場合、保険金支払いなどの苦情は少なく、契約や募集に関する苦情が多くなっています。これはネット型特有のもので、契約内容を十分に把握していない方からの苦情や、更新時の不審・不満が多いと考えられます。
『ソニー損害保険』
(画像、データ引用は同じ)
件数 3,986件
契約・募集に関するもの 38.3%
契約の管理等に関するもの 32.4%
保険金に関するもの 20.43%
その他 8.9%
※ソニー損保の場合、アクサ損害保険よりも契約や募集への声は少なく、保険の契約管理に関する苦情が多くなっています。同じネット型損保でも、寄せられる苦情の内容には大きな違いがあるのです。
事故対応へのクレームは実績の多さとも言える
日本損害保険協会では、寄せられているお客様の声の中で、「保険金に関するもの」の割合を公表しています。事故対応への苦情の多さは、契約者やこれから契約する方にとって気になるものでしょう。
事故対応に関する苦情は、それだけ対応している実績件数が多く、信頼できるとも言えます。代理店型自動車保険は、代理店が設置されている分保険料が高い傾向がありますが、歴史が長く、事故対応の経験も豊富です。苦情件数の多さは、あくまでも自動車保険商品選びの目安の1つとしてご活用ください。
代理店型とネット型|加入スピードによる満足度の違いとは
自動車保険はすでに文中に触れている通り、代理店型とネット型の2種類が挙げられます。
この他に一部の団体で加入できる共済などもありますが、多くは代理店型のネット型に集約されます。
では、代理店型とネット型では、加入スピードによる満足度にどのような違いがあるでしょうか。
この章では保険会社への加入を「スピード」の視点からも解説します。
代理店型は見積もり取得に時間がかかる
ネット型自動車保険が台頭している今、非常に多くの見積もりサイトが登場しています。また、ネットで誰でも、自由に、気軽に自動車保険に加入できるようになったため、ネット型自動車保険のサイトなら気軽に見積もりが取得できるようになりました。
しかし、代理店型はあまり見積もりサイトに登場しておらず、ネット型自動車保険と比較検討がしにくいのです。代理店に相談をしないと、見積もりが得にくい保険会社もあります。
また、代理店型の保険会社は営業担当者とやり取りがストレスになることもあります。ただし、自動車保険の知識があまりない場合、補償の見直しや特約の重複に関するアドバイスももらいやすいというメリットもあります。
自分の年齢にあった補償内容のアドバイスももらえるため、代理店型は安定した人気があるのです。
ネット型自動車保険は見積もりが迅速
ネット型の自動車保険は見積もりが取得しやすく、代理店型よりも圧倒的に便利です。
24時間気軽に見積もりが取得できます。また、見積もりから契約もスムーズです。
しかし、10社程度の情報が一気に届くサイトもあります。あまり知らない保険会社からも情報が届くため、困惑する方も多いようです。
ネット型自動車保険は大手メガ損保系列から、外資系、楽天損保などの新興勢力もあります。そのため、比較検討する際に価格や補償だけでは悩んでしまい、知っている企業名を選ぶ方もいます。
【ネット型自動車保険は新興勢力にも注目を】
近年自動車保険には、聞きなれない企業名も登場しています。ただし、補償内容や保険料で工夫している保険会社が多く、代理店型自動車保険には無いユニークな特約や補償内容を用意している企業もあります。
見積もりや保険の見直しの際には、知らない保険会社の見積もりも、取得されることがおすすめです。
ワースト自動車保険は避けたい!保険支払いの現状を分析
この記事では自動車保険のワーストランキングについて、日本損害保険協会のデータを活用しました。しかし、自動車保険は「保険金の支払い」についてどのような方針なのかも、きちんと押さえておきたいところです。
自動車保険の保険金支払いとは、事故時の対応を意味します。治療や車両の修理など、保険金は欠かせない存在です。
そこで、この章ではワーストの自動車保険を避けるためにも、事故対応の保険金支払い実績について分析します。
保険金支払いはトラブルの温床
自動車保険には悪い印象を持つ方もいます。その理由は、事故時の保険金対応に不満を持つ方が多いためです。
自動車保険では、対人・対物などの補償以外にも、車両保険や人身傷害保険、弁護士費用特約やファミリーバイク特約などからも保険金を得ることが可能です。
しかし、請求をすればすぐに支払われるわけではありません。特に重大なケガが発生している場合は、賠償金の支払いに時間がかかり、示談交渉も難航するケースがあります。双方ともに過失を認めていないケースや、被害者に重い後遺症が残されている場合は、保険金を巡り訴訟に発展するケースも少なくありません。
男性・女性問わず、保険金支払いに直面した多くの方が、自動車保険の保険金支払いに不満を抱えています。
- 【保険金にともなう主な苦情内容例】
- 治療が打ち切られ、求めている保険金が支払われない
- 示談交渉で威圧的な態度を保険会社から受けた
- 車両保険で時価評価を受け、修理費用が足りない
- 専門用語で説明され、本当に示談をすべきなのかわからない
保険金の払い渋りは本当に起きているのか
自動車保険の保険金は苦情が多いことが知られていますが、実際に発生しているのでしょうか。
結論から言うと、保険会社の払い渋りは実際に発生しています。
納得がいく額の保険金支払いが受けられないケースは多く、下記で解決を図るケースもあります。
⚫︎そんぽADRセンター(損害保険相談・紛争解決サポートセンター)
日本損害保険協会が設置した、苦情や紛争を解決するための機関
⚫︎日弁連交通事故相談センター
日本弁護士連合会(日弁連)が設立した交通事故を専門とする相談センター。弁護士が当解決に向けて法律相談に応じる。
⚫︎交通事故紛争処理センター
弁護士や法律の専門家が紛争の解決を目指して相談に応じる。公正・中立の機関。
こうした機関は保険会社とは異なり、公平な視点で相談に応じています。
支払いトラブルが多い保険会社とは
自動車保険の保険金トラブルでは、知っておきたい過去のトラブルがあります。過去の事件を参考に、ワースト自動車保険を考察しましょう。
『損害保険ジャパン』
損害保険ジャパンは平成25年4月~令和2年12月に自動車保険の一部特約で保険金の支払い漏れを発生させています。
相手方車両との衝突や接触事故で、本来なら免責金額として設定されている自己負担額5万円分を差し引かずに保険金を支払う特約で、誤って自己負担額を差し引いて保険金を支払っていたのです。保険金の支払いが完了した3676件のうち72件で支払い漏れがあったことが判明し、その後、1100件もの支払い漏れに発展しています。
ワーストと捉えられても仕方ないトラブルですが、損害保険ジャパン将来の支払いに備えた支払準備金も多くストックしている優良企業です。再発防止に努めてほしいですね。
『東京海上日動火災』
東京海上日動火災保険(東京海上ホールディングス傘下)は2014年2月、自動車保険の保険金支払い漏れについて、「対人臨時費用保険金」(対人臨費)や「人身傷害臨時費用保険金」(人身臨費)および「対物臨時費用保険金」(対物臨費)で<約1.8万件の契約に支払い漏れの可能性があったと公表しています。
2002年4月~03年6月の対人任意保険の支払い推定件数12万件についても支払い漏れがあり、大きな保険金支払いトラブルがありました。現在はこうした漏れは改善されているものの、過去に大きなトラブルがあったことは事実です。10万件を超える支払い漏れは、消費者不審を招いても仕方がありません。
保険金支払いトラブルには請求漏れも含まれる
自動車保険会社は上記のように、多数の支払い漏れを起こしている事実があります。
こうした事件があると、契約者側から見れば、保険会社の対応に納得できないかもしれません。しかし、保険金支払いのトラブルには、契約者側からの支払い漏れも含まれています。
現在も、弁護士費用特約などの特約は、付帯をしていても忘れてしまい、法律相談料を請求していなかったり、活用できるはずの個人賠償特約も、使わないままトラブルを解決している例も見られます。
保険会社側ではどうしても感知できないトラブルもあるため、些細なトラブルであっても、加入している自動車保険の補償は使えるかどうか確認されることがおすすめです。
【請求漏れを防ぐためには?】
自動車保険には、自動車同士の事故ではなくても、保険金が支払われることがあります。
そのため、日常生活でトラブルが発生したら、まずは自動車保険から支払いが受けられないか念のため確認されることがおすすめです。
たとえば、歩行中のケガであっても、人身傷害保険の補償範囲が「搭乗中のみ」でなければ、補償が受けられます。
ご自身の自動車保険は「搭乗中のみ」であっても、同居されているご家族が搭乗中以外の補償範囲で設定していれば補償が得られる可能性もあります。請求漏れがないように、必ず確認するようにしましょう。
ワーストから学ぶ失敗しない自動車保険の選び方
本記事では自動車保険のワーストランキングを紹介してきました。では、実際の保険会社名を把握した上で、私たちはどのように自動車保険を選べばよいのでしょうか。
この章で詳しく解説します。
過去の事件から学ぼう
損害保険ジャパンや東京海上日動火災にように、過去には保険金支払いにおけるトラブルを起こしている企業があります。現在はこうしたトラブルから是正し、企業体質を見直している所が多いですが、過去の事件は保険会社選びの指標として生かせるでしょう。
たとえば、大手メガ損保は、契約数もトラブル数も多い!という事実をどのように受け止めるのか、じっくり検討されることがおすすめです。また、大手メガ損保は代理店型の保険会社であり、自動車保険料は高く設定されています。契約者にとって重い負担となるおそれがあります。
その一方で、大手の強みを生かし、支払準備金がしっかりと用意されています。
- 【大手メガ損保を選ぶメリット・デメリット】
- 信頼・安心感はある、将来に備えて経営基盤も大きい。
- 過去に大きな保険金支払いのトラブルがある
保険選びの基準を確立する
自動車保険はメガ損保以外にも、さまざまな保険会社が販売に力を入れています。
特にネット型損保は、セコム損害保険や楽天損保なども人気が高まっており、ネット型損保をけん引してきたソニー損保やアクサ損害保険などとは異なった特徴を持っています。
セコム損害保険の場合、セキュリティ対策のプロであるセコムが現場に急行してくれるサービスがあり、注目が高まっています。
たとえば、楽天損保の場合、お得な楽天ポイントと連動した契約となっており、他社には真似しにくいメリットを兼ね備えています。
楽天カードやポイントを活用している方に、大きなメリットがある自動車保険です。
このように、従来のネット型損保とは違った特徴を持つ優良自動車保険も増加しています。どこと契約をすると、自分にとってメリットが大きいのか、保険料に囚われないように注意しながら選びましょう。
補償内容を細かく見極める
自動車保険は、事故に備えて加入する保険です。そのため、しっかりと補償内容を見極めて加入することがおすすめです。
しかし、どのように補償内容を見極めるべきか、悩んでしまう方も多いでしょう。
一般的にどの損害保険会社も、相手方への補償である対人・対物の賠償責任保険については「無制限」を推奨しており、被害者救済に力を入れています。
しかし、車両保険の場合は、免責金額の設定などで各社対応が異なっています。
たとえば、SOMPOダイレクト損害保険では、「増額方式」と「定額方式」を採用しています。
『増額方式』
増額方式は、1回目の事故と2回目の事故で免責金額が異なり、2回目の事故の際に免責金額がアップする方式を移民します。
1回目5万円、2回目10万円などの金額で設定できます。
『定額方式』
定額方式は、1回目と2回目の事故の免責金額が同一です。
1回目5万円、2回目5万円、のように変動しません。
増額方式を採用している保険会社の場合、保険料を抑制する効果があります。補償内容だけではなく、こうした細やかな免責金額の設定方法も各保険会社によって異なるので、十分に比較しましょう。
保険料だけでなくサービス内容も評価する
自動車保険は料金だけに囚われるのではなく、細やかなサービス内容にまで目を向けることはおすすめです。
保険料は等級や車種、運転者の年齢などの条件によって変動しますが、サービス内容は保険料で左右されるものではありません。
では、保険会社のサービス内容はどのように評価できるでしょうか。主なポイントは以下の2点です。
《 ① ロードサービスを比較しよう 》
自動車保険を活用する機会は、事故時だけではありません。運転中の急な故障や、鍵のトラブルなどの際にも、活用できます。
急なトラブルに活躍してくれるのは、「ロードサービス」です。レッカーや急な宿泊に対する費用を支払ってくれますが、各保険会社によって内容が大きく異なります。
安心のカーライフを送るためにも、自動車保険を検討する際には、必ずロードサービスを比較しましょう。
ロードサービスを見極める際には、以下の4つのポイントを確認しましょう。
- 利用しやすいレッカーサービスか
- 応急処置にはどのような方法が用意されているか
- 宿泊費などの臨時費用の支払いはあるか
- 搬送に関する距離や費用
- 連絡がしやすいか
旅行先で車が止まってしまった、などのトラブルにも対応してもらえるように、宿泊費用や連絡方法なども必ずチェックしておきましょう。
【ロードサービス】について詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にして下さい。
ロードサービスの種類と自動車保険!知らないと損するポイントとは?
《 ② 必要な特約を見つけよう 》
自動車保険には素敵な特約が多数用意されています。近年は自転車に関する保険に関心が高まっており、自動車保険の特約でカバーする動きも加速しています。
自動車保険の特約として知られている「個人賠償責任特約」は、自転車の事故によるトラブルを補償してくれるためです。
自転車は現在保険の義務化が進んでおり、関東では東京都や千葉県、埼玉県、神奈川県などで、地方でも静岡県や岐阜県、石川県などで義務化が行われています。現在努力義務となっているエリアでも、今後は義務化が進む見込みです。
自動車保険はこのように、特約を用意すれば別のトラブルに対しての補償も用意できます。
保険会社ごとに用意されている特約が異なるので、比較を十分に行いましょう。
ランキングの基準の多様性
ネット上にはさまざまなワーストランキングが紹介されていますが、各社がさまざまな統計を使って作成しています。
ランキングの基準は一律ではないため、さまざまなサイトを見てから、契約を決めることがおすすめです。また、口コミやランキングは1つの指標に過ぎないため、それだけで判断をすることは控えましょう。
ランキングの性質によっては、自身の保険ニーズとは異なるおそれもあります。
不安な場合はカスタマーサービスや代理店など、保険の専門家に相談をしてみることも検討しましょう。
将来を見据えた保険の選び方をしよう!
今回の記事では、自動車保険のワーストランキングを通して、自動車保険の選び方についても詳しく解説しました。
自動車保険は十分な補償を用意しておかなければ、万が一の事故の際に保険金が十分に受け取れないおそれがあります。保険料だけに囚われるのではなく、しっかりと充実した内容の補償で加入をするようにしましょう。
また、今回紹介のとおり、契約件数が多いメガ損保はその分保険金などに関するトラブルも多発しています。
ネット型損保にもトラブルは発生しており、苦情が寄せられているものの、この機会にネット型損保のメリットにもぜひ触れてみてください。
将来を見据えて、保険料も補償も納得できる自動車保険に加入しましょう。
投稿者プロフィール
- 経歴:大手損害保険会社に勤務後、弁護士事務所で秘書として交通事故訴訟の調査に従事