自動車保険の見積もりや契約書を見ていると、必ずと言っていいほど「等級」という言葉に出くわします。「現在6等級です」「20等級になれば保険料が半額以下になります」——そう説明されても、仕組みまで正確に理解している方は意外と少ないものです。
結論からお伝えすると、等級とは1〜20等級で構成されるランク付け制度で、数字が大きいほど保険料の割引率が高くなります。無事故の期間が長く続けば等級は毎年1つずつ上がり、逆に事故を起こして保険を使うと等級は下がります。新規に契約する場合は、原則として6等級からのスタートです。
この記事のポイント
1等級は1〜20等級で構成され、無事故を1年続けるごとに1つ上がる
2新規契約は原則6等級スタート。20等級に到達するには最短14年かかる
3同じ等級でも「無事故」か「事故有」かで割引率が大きく変わる
4他社への乗り換えや家族間でも、条件を満たせば等級を引き継げる
以下では、割引率の早見表や事故時のルール、引き継ぎの条件まで、実務で役立つ順に解説していきます。
そもそも自動車保険は「何等級」が普通なのか
自分の等級が世間一般と比べて多いのか少ないのか、気になったことがある方も多いはずです。結論をいうと、等級に「平均」や「標準」と呼べる決まった数字は存在しません。理由はシンプルで、等級は無事故で1年経過するごとに1つずつ上がっていく制度だからです。契約してからの年数によって、妥当な等級はまったく違ってきます。
新規に契約する場合は、6等級(セカンドカー割引が使える場合は7等級)からのスタートが「普通」です。一方、10年、20年と無事故で乗り続けている方であれば、20等級に到達していても不思議ではありません。等級ごとの契約者分布を保険会社や損害保険料率算出機構が公表しているわけではありませんが、無事故なら毎年1等級ずつ上がっていく仕組み上、長く乗り続けている契約者ほど高い等級に偏っていくのは制度上当然の結果といえます。
つまり「何等級が普通か」という問いには、「契約したばかりなら6〜7等級、長期契約者なら20等級に近づいているのが普通」と、契約年数を軸にして答えるのが実情に近いでしょう。
6等級から20等級になるまで何年かかる?
新規契約の6等級から最高等級の20等級に到達するには、1年ごとに1等級ずつ上がる仕組み上、無事故を14年継続する必要があります。セカンドカー割引で7等級からスタートできた場合でも13年はかかる計算です。主な等級までの年数を整理すると、次のようになります。
| 等級 | 無事故年数 |
|---|---|
| 6等級 | 加入時 |
| 10等級 | 4年 |
| 15等級 | 9年 |
| 20等級 | 14年 |
20等級の契約者は、裏を返せば「10年以上無事故を継続してきた実績のある契約者」です。63%引きという大幅な割引は、この長期間にわたる安全運転の実績への対価と考えると納得しやすいでしょう。
自動車保険の等級(ノンフリート等級制度)とは
自動車保険における「等級」は、正式には「ノンフリート等級別料率制度」と呼ばれる仕組みです。契約者ごとの事故リスクの高低を、過去の事故歴に応じて保険料に反映させるための制度です。
なぜ「ノンフリート」という耳慣れない言葉が使われているのでしょうか。フリート(fleet)は本来「船団」「車両群」を意味し、10台以上の自動車をまとめて契約する「フリート契約」では、保有台数全体の事故実績をもとに保険料が決まります。個人や9台以下の自動車を所有する契約者に適用されるのが「ノンフリート等級別料率制度」で、私たちが普段目にする自動車保険のほとんどはこちらに分類されます。
等級は1〜20等級で構成され、数字が大きいほど保険料は安くなります。1年間無事故で契約を継続すれば、翌年度の等級は1つ上がります。反対に、事故を起こして保険を使うと等級は下がり、保険料は上がります。
なぜ新規契約は6等級からスタートするのか
新規に自動車保険へ加入する場合、原則として6等級からのスタートとなります。0等級や中間の10等級ではなく6等級である理由は、この等級が「事故歴のない標準的なリスク」として位置づけられているためです。契約したばかりの段階では事故歴のデータが存在しないため、いったん中間的な等級から出発し、その後の事故有無によって上下させていく設計になっています。
ただし、契約者の年齢条件によって、新規契約時の等級はさらに細かく区分されています。
| 区分 | 対象年齢条件 | 新規契約(1台目) | セカンドカー契約(2台目以降) |
|---|---|---|---|
| A区分 | 年齢を問わず補償 | 6A等級 | 7A等級 |
| B区分 | 21歳以上補償 | 6B等級 | 7B等級 |
| C区分 | 26歳以上補償 | 6C等級 | 7C等級 |
| E区分 | 30歳以上補償 | 6E等級 | 7E等級 |
同じ「6等級」でも、年齢条件を広く設定するA区分より、30歳以上に限定するE区分のほうが保険料は安くなります。等級だけでなく、運転者年齢条件の設定次第でも保険料が変わるということです。
セカンドカー(2台目以降の車)については後ほど詳しく触れますが、条件を満たせば6等級ではなく7等級からスタートできる「セカンドカー割引」という仕組みも用意されています。
【早見表】等級別の割引率・割増率
等級制度の核心は、この割引率・割増率表にあります。以下は損害保険料率算出機構が公表する自動車保険参考純率にもとづく数値です(出典:損害保険料率算出機構)。三井ダイレクト損保・SOMPOダイレクトなど複数の保険会社の公開情報でも共通して確認できる、業界共通の基準です。
| 等級 | 無事故 | 事故有 |
|---|---|---|
| 20等級 | 63%引 | 51%引 |
| 19等級 | 57%引 | 50%引 |
| 18等級 | 56%引 | 46%引 |
| 17等級 | 55%引 | 44%引 |
| 16等級 | 54%引 | 32%引 |
| 15等級 | 53%引 | 28%引 |
| 14等級 | 52%引 | 25%引 |
| 13等級 | 51%引 | 24%引 |
| 12等級 | 50%引 | 22%引 |
| 11等級 | 48%引 | 20%引 |
| 10等級 | 46%引 | 19%引 |
| 9等級 | 44%引 | 18%引 |
| 8等級 | 38%引 | 15%引 |
| 7等級 | 27%引 | 14%引 |
| 6等級 | 13%引 | — |
| 5等級 | 2%引 | — |
| 4等級 | 7%増 | — |
| 3等級 | 38%増 | — |
| 2等級 | 63%増 | — |
| 1等級 | 108%増 | — |
※1〜6等級には「事故有」区分は設けられていません。7等級以上になって初めて、無事故か事故有かで割引率が分岐します。
※上記は参考純率にもとづく標準的な数値で、実際の保険料への反映方法は保険会社によって細部が異なる場合があります。正確な金額は契約(見積もり)先の保険会社でご確認ください。
この表を見ると、4等級と5等級の間に「割増」から「割引」への分岐点があることが分かります。事故によって等級が4等級以下まで下がると、保険料は契約時より高くなります。5等級以上を維持できていれば、多少なりとも割引の恩恵を受けられます。
もうひとつ注目したいのが、同じ等級でも「無事故」と「事故有」では割引率に大きな差がある点です。17等級を例にすると、無事故なら55%引きですが、事故有だと44%引きにとどまります。差は11ポイント。等級の数字だけを見て安心せず、「無事故」区分を維持できているかどうかも確認しておきたいところです。
事故有係数適用期間とは
前述の「事故有」区分がなぜ発生するのか、その仕組みが「事故有係数適用期間」です。
事故を起こして保険を使うと、その等級には一定期間「事故有」の係数が適用されます。適用期間は最大6年で、事故の種類によって加算される年数が異なります。
- 3等級ダウン事故:事故有係数適用期間が3年加算される
- 1等級ダウン事故:事故有係数適用期間が1年加算される
- ノーカウント事故:事故有係数適用期間への影響はない
この期間は無事故で契約を継続するごとに1年ずつ短縮され、ゼロになれば再び「無事故」区分の割引率に戻ります。
図解:事故有係数適用期間のイメージ
10等級・無事故(46%引き)の契約者が3等級ダウン事故を起こした場合を例に、等級と割引率の推移を時系列で示します。
| 年度 | 等級 | 区分 | 割引率 | 状態 |
|---|---|---|---|---|
| 1年目(事故発生時) | 10等級 | 無事故 | 46%引き | 3等級ダウン事故が発生 |
| 2年目 | 7等級 | 事故有(残り3年) | 14%引き | 事故有係数適用期間スタート |
| 3年目 | 8等級 | 事故有(残り2年) | 15%引き | 無事故を継続、等級は+1 |
| 4年目 | 9等級 | 事故有(残り1年) | 18%引き | 無事故を継続、等級は+1 |
| 5年目 | 10等級 | 無事故(適用終了) | 46%引き | 事故有係数適用期間が終了、通常の割引率に復帰 |
※事故有係数適用期間は、無事故で契約を更新するたびに1年ずつ短縮されます。上表は説明のための一例で、事故の種類や保険会社によって細部が異なる場合があります。
※この表は仕組みを説明するためのテキスト版の図解です。記事公開時には、この推移をグラフィック(インフォグラフィック)として制作することを推奨します。
事故を起こした2年目は、7等級・事故有区分(14%引き)からの再スタートです。同じ7等級でも無事故なら27%引きなので、差は13ポイント。等級が3つ下がるだけでなく、その後数年間「同じ等級でも割引率が低い」状態が続く点は見落とされがちですが、影響は決して小さくありません。
事故を起こすと等級はどう変わるのか
保険を使う事故は、等級への影響度によって大きく3種類に分けられます。
| 事故区分 | 主な具体例 | 翌年度の等級 | 事故有係数適用期間 |
|---|---|---|---|
| 3等級ダウン事故 | 相手方との衝突事故、車同士の接触事故、崖からの転落など(対人・対物賠償や車両保険を広く使うケース) | 3等級下がる | 3年加算 |
| 1等級ダウン事故 | 単独事故で車両保険のみを使用した場合など | 1等級下がる | 1年加算 |
| ノーカウント事故 | 盗難被害、他人の不正行為(いたずら)による破損、過失のない「もらい事故」など | 影響なし(通常通り1等級上がる) | 加算なし |
事故を起こしても、必ずしも等級が下がったり保険料が上がったりするとは限りません。
等級はどうすれば上がる?維持・向上のコツ
等級を上げる方法自体はシンプルです。1年間無事故で契約を継続するだけで、翌年度の等級は自動的に1つ上がります。特別な手続きは必要ありません。
「保険を使うべきか」で悩んだときの判断基準
実務でもっとも悩ましいのが、「小さな事故やキズで保険を使うべきかどうか」という判断です。多くの方が誤解しやすいポイントでもあるので、具体的な数字で見ていきます。
前述の割引率表の通り、3等級ダウン事故で保険を使うと、翌年度から3年間は「事故有」区分の低い割引率が適用され続けます。保険を使うということは、目先の修理費用が浮く代わりに、向こう数年間にわたって割高な保険料を払い続けることでもあります。
無事故で10等級(46%引き)の契約者が、修理費用8万円の軽微な接触事故(3等級ダウン事故)を起こしたケースで比較してみましょう。
- 保険を使った場合:翌年度は7等級・事故有区分(14%引き)からの再スタートとなります。本来であれば11等級(48%引き)に上がっていたはずの割引率との差は34ポイントに及びます。契約条件によっては、この割引率の差が事故有係数適用期間の3年間で10万円近い差になるケースもあります。
- 保険を使わなかった場合:自己負担は8万円のみで、翌年度は予定通り11等級に上がり、保険料はむしろ下がります。
数万円程度の軽微な損害であれば、保険を使わずに自己負担で対応したほうが、結果的に総支払額を抑えられるケースは少なくありません。判断に迷ったときは、「今回の修理費用」と「等級ダウンによる数年間の保険料増加分」を天秤にかけて検討してください。多くの保険会社は、契約者から相談があれば「保険を使った場合の等級シミュレーション」を提示してくれます。事故対応の際に確認しておくと安心です。
「今回の修理費用」と「等級ダウンで数年間にわたって増える保険料」を比較し、修理費用のほうが小さければ自己負担、同等以上なら保険を使う、という基準で考えると判断しやすくなります。
車両保険・特約の見直しも並行して
車両保険や各種特約の内容を見直すことも、保険料全体を抑えるうえで有効です。年式の古い車なら車両保険の必要性そのものを再検討する、使っていない特約を外すといった工夫も、等級の管理とあわせて確認しておきたいところです。
等級は引き継げます
等級は、一定の条件を満たせば他の契約者や他の保険会社に引き継ぐことができます。
引き継げる人・引き継げない人 早見表
| 対象 | 引き継ぎ可否 | 条件・注意点 |
|---|---|---|
| 契約者本人が他社に乗り換える場合 | 引き継げる | 等級・事故有係数適用期間ともにそのまま引き継がれるのが基本ルール |
| 同居の配偶者 | 引き継げる | 記名被保険者の変更手続きが必要 |
| 同居の親族(子・親など) | 引き継げる | 同居の事実確認が必要な場合がある |
| 別居の配偶者 | 引き継げる | 配偶者は同居・別居を問わず引き継ぎ対象となる |
| 別居の子ども・親族 | 条件付きで引き継げる | 保険会社ごとに個別の条件あり |
| 友人・内縁関係者など家族以外 | 引き継げない | 記名被保険者の範囲外のため対象外 |
| 中断証明書なしで一定期間放置した契約 | 引き継げない | 中断日から一定期間を過ぎると6等級(またはセカンドカー割引適用時は7等級)からの再スタートとなる |
別居の子どもへの等級引継ぎは条件がやや複雑なため、詳しい手続きや注意点は別居でも自動車保険の等級を引継ぐ裏ワザで個別に解説しています。該当する方はあわせてご確認ください。
中断証明書を活用すればブランクがあっても等級を守れる
海外赴任や車の廃車・譲渡などで一時的に車を手放す場合、「中断証明書」を発行しておくことで、将来再び自動車保険に加入する際に以前の等級をそのまま引き継げます。
発行条件
中断証明書の発行を受けるには、中断時点の等級が7等級から20等級の範囲であることが必要です。事故で6等級以下になってしまった場合は対象外となるため注意しましょう。
対象となる主な中断理由
- 車の廃車・譲渡・リース契約の返還
- 車検切れ
- 盗難
- 車両入替
- 長期の海外渡航
有効期限と申請期限
中断証明書の有効期限は、中断日の翌日から10年間が基本です(妊娠を理由とする中断など一部例外は3年間)。証明書の発行自体にも期限があり、中断日の翌日から5年以内に申請を済ませる必要があります。「そのうち申請すればいい」と先延ばしにすると、申請自体ができなくなるため注意が必要です。
必要書類
発行申請の際は「中断証明書発行申請書」に加え、廃車・譲渡なら登録事項等証明書、車検切れなら自動車検査証、盗難なら盗難届出証明書など、中断理由に応じた公的機関発行の証明書類のコピーが必要です。必要書類や手続きの詳細は保険会社によって異なるため、解約前に確認しておきましょう。
発行条件は「中断時点で7〜20等級」、有効期限は「中断日の翌日から10年間」、申請期限は「中断日の翌日から5年以内」。この3点を押さえておけば手続きの抜け漏れを防げます。
新規加入・セカンドカーの等級
前述の通り、新規契約は原則6等級からのスタートです。すでに自動車を1台所有していて2台目を新たに契約する場合は、「セカンドカー割引(複数所有新規)」が適用され、6等級ではなく7等級からスタートできることがあります。1等級分の違いは小さく見えるかもしれませんが、割引率表で比較すると6等級(13%引き)と7等級・無事故(27%引き)では14ポイントの差になります。
新規契約時の年齢条件別の等級区分(6A/6B/6C/6Eなど)や、セカンドカー割引の適用条件、等級を有利にスタートさせる具体的な工夫については、別記事自動車保険の新規加入は何等級スタート?でさらに詳しく解説しています。
自分の等級を調べる方法
現在の等級を確認する方法は、主に3つあります。
- 契約時に発行される保険証券を確認する
- 契約中の保険会社のマイページ(会員専用サイト)にログインして確認する
- 契約している保険会社や代理店に直接電話で問い合わせる
いずれも難しい手続きは不要で、数分あれば確認できます。具体的な手順や、証券を紛失した場合の対処法については自動車保険の等級調べ方3選でより詳しく紹介しています。
等級と保険料相場の関係
ここまで見てきたように、等級による割引率の差は小さくありません。同じ条件の契約でも、6等級(13%引き)と20等級・無事故(63%引き)とでは割引率に50ポイントの開きがあります。年間保険料が10万円前後の契約なら、等級の違いだけで数万円単位の差が生まれる計算です。
年代別の保険料相場や、等級以外に保険料を左右する要素(年齢条件・車種・使用目的など)について詳しく知りたい方は、自動車保険の20〜30代の相場はいくら?もあわせて参考にしてください。
まとめ:等級を活かして保険料を見直そう
自動車保険の等級は、単なる契約年数の目印ではなく、保険料に直結する指標です。
- 等級は1〜20等級で構成され、無事故を続けるほど割引率が上がる
- 新規契約は原則6等級スタート、セカンドカー割引なら7等級スタートも可能。20等級まで到達するには最短でも13〜14年かかる
- 同じ等級でも「無事故」と「事故有」で割引率は大きく異なる
- 3等級ダウン・1等級ダウン・ノーカウントで事故有係数適用期間(最大6年)が変わる
- 等級は他社乗り換えや家族間(条件付きで別居でも)引き継ぎが可能。中断証明書があればブランクがあっても最大10年間等級を維持できる
現在の等級と割引率を把握したうえで複数の保険会社の見積もりを比較すると、同じ補償内容でも保険料に差が出るケースは珍しくありません。ぜひ一括見積もりを活用して、自分に合った1社を見つけてください。





