自動車保険に新規加入をすると、何等級から始まるのかご存じでしょうか。
等級は保険料を左右する重要なものです。初めて加入をすると、「6等級」から始まりますが、条件によっては別の等級から始まることもあります。
そこで、この記事では自動車保険の新規加入する際の等級について、保険料との関係も踏まえながら詳しく解説します。
この記事をまとめると
- 自動車保険の新規契約が何等級から始まるのか
- 等級制度と保険料のしくみ
- ノンフリート契約とフリート契約の違い
- 6等級以外で自動車保険をスタートする方法
- 等級をコツコツ上げる方法
新規は原則6等級からスタート
自動車保険は保険会社が販売している任意保険です。
新規加入をする際には、原則として「6等級」から始まります。しかし、一定の条件が整っている場合は、6等級よりも高い等級で始めることもできます。
一方で、過去の加入歴によっては、6等級よりも低い等級で加入せざるを得ません。
この章では新規加入の等級について、等級制度の基本などを詳しく紹介します。
【等級】について詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にして下さい。
自動車保険の等級制度とは?保険料の割増引率を徹底解説
保険等級制度の基本
自動車保険は強制保険である自賠責保険とは異なり、保険料が車種ごとに一定料金として定められているものではありません。年齢や免許証の色など、さまざまな要素で保険料が変動しており、同じ車種にお乗りの方でも、同じ自動車保険料とは限りません。
自動車保険料を大きく左右する要素の1つが、「等級制度」です。自動車保険の等級制度は、1~20等級の幅が原則として定められています。(一部共済除く)
等級制度は数字が大きくなるほど、「安心できるドライバー」の証明となり、保険料が下がっていくしくみです。
1年間の自動車保険契約の中で、保険金支払いの実績が無ければ翌年に1等級アップします。一方で、事故があり保険金支払いを受けると、翌年に3等級ダウンします。
なお、等級制度は「ノンフリート契約」にのみ適用されています。「フリート契約」には等級制度は無く、別の方法で事故リスクや保険料の算出が行われています。
また、等級による保険料の算出には、事故からの経過年数も考慮されています。
6等級スタートの理由
では、なぜ自動車保険の等級制度は、新規加入時に6等級に設定されているのでしょうか。
等級制度では、以下のようなしくみが導入されています。
①メリット等級
6等級~20等級のことを、「メリット等級」と言います。
等級の数字が大きくなると、割引率もアップします。
②デメリット等級
1~5等級のことを、「デメリット等級」と言います。
デメリット等級は新規加入時よりも等級が「低い」ことを意味するため、事故が起きたことがある方が識別できます。デメリット等級は保険会社を変えた場合でも引き継ぎ、等級によっては割増率が適用されます。
デメリット等級の情報は共有されているので、保険料の未払いなどで保険契約を解除させ、等級のリセットを図ったとしても、リセットされずにデメリット等級で加入する必要があります。
6等級はメリット等級です。新規加入時にはメリットがある状態からスタートできるしくみとなっています。
等級につくアルファベットの意味
新規契約をすると、6等級から始まりますが、等級に「S」や「F」がついています。では、このアルファベットは何を意味するものでしょうか。
過去に全く自動車保険に加入したことが無い場合、6等級に新規を意味するSがつくため、「6S等級」と言います。一方で、Fの場合は継続契約の方を意味します。
たとえば、自動車保険に加入し6S等級だった方が、順調に7,8,9等級まで進んだと仮定しましょう。9等級の時に事故があると、翌年3等級ダウンのため、再び6等級に戻ります。
この時、新規契約と区別をするために、「6F等級」と表示することがあります。
下記では、6等級や7等級につくアルファベットの意味を紹介します。
年齢条件によってアルファベットがつくこともある
自動車保険会社によっては、上記のSやFとは別に、アルファベット等級に付けることがあります。
「A・B・C・E・G・D」が等級の後ろに設定されている場合は、年齢条件に関する意味があります。
アルファベット | 年齢条件の意味 |
---|---|
A | 全年齢補償 |
B | 21歳以上補償 |
C | 26歳以上補償 |
E | 30歳以上補償 |
G | 35歳以上補償 |
D | 年齢条件なし |
なお、年齢条件の等級は全社共通ではありません。また、共済と保険会社によっても表示が異なっていますが、等級継承ができる保険会社間なら、問題なく等級は引き継げます。
現在の保険会社から別の保険会社へ切り替えを行う際に、ネットの加入画面などでアルファベットの申告が上手くできない場合は、保険会社のカスタマーセンターなどにお問い合わせください。
等級制度におけるアップ・ダウンの基準
等級制度は先に少し触れたように、メリット等級とデメリット等級の2つに分けられており、事故の有無によって保険料が大きく異なるしくみが導入されています。
等級のアップ・ダウンは、「事故による保険金支払いの有無」が鍵を握っています。しかし、保険金支払いがあったら一律3等級ダウンなわけではありません。
詳しくは以下です。
① 今年の契約で事故が起き、車両保険や相手方への修理費用の支払いが起きた
自動車保険から保険金の支払いを受ける事故が発生したため、翌年に「3等級」ダウンします。
② 今年事故が起きたが、等級ダウンを避けるために保険金の支払いを控えた
車両保険で修理を行わず、相手方への対人・対物賠償の支払いなども無い場合、保険金支払いが一切発生していないため、事故はカウントされません。
③ 投げたボールで民家のガラスが割れてしまい、自動車保険の個人賠償特約から支払いを受けた
個人賠償保険特約だけの支払いが前年度遭った場合、ノーカウント事故として扱うため、翌年の等級に影響はありません。ノーカウント事故になる特約は多いため、確認した上で上手に活用することがおすすめです。
④ 契約している車両が盗難されてしまい、車両保険から支払いを受けた
一般的な事故による車両保険の使用は、通常3等級ダウン事故です。しかし、盗難による被害は車両保険の使用でも1等級ダウン事故として扱うため、翌年は1等級だけ下がります。
上記の①~④に事故の有無があっても、保険金支払いがあるかどうか、支払いを受けた理由は何かによって、等級が下がらなかったり、1等級しか下がらない場合もあります。
すべての事故ケースで3等級ダウンとなるわけではありません。
等級ごとの保険料の違い
自動車保険の等級制度は保険料に大きく影響していますが、実際に等級ごとの保険料はどの程度異なるのでしょうか。勿論等級によってのみ、保険料が算出されているわけではないため、1等級あたり〇〇円、と定められているわけではありません。
しかし、等級と事故有係数適用期間によって「割引率」と「割増率」が導入されており、保険料の違いは「見える化」できます。
詳しくは以下です。
ある自動車保険会社の等級別割引率・割増率
等級ごとに適用される割引・割増率は「事故有」と「無事故」によって異なります。
事故有の場合、無事故とは違った保険料算出が行われており、1~6年の範囲で割引率・割増率が適用されます。
① デメリット等級の場合
無事故(%) | 事故有(%) | 割増率・割引率の有無 | |
---|---|---|---|
1等級 | 108 | 割増率 | |
2等級 | 63 | 割増率 | |
3等級 | 38 | 割増率 | |
4等級 | 7 | 割増率 | |
5等級 | 2 | 割引率 |
デメリット等級である1~5等級の場合、1~4等級までは割増率が適用されています。5等級から若干ですが、割引率が適用されるようになります。事故の有無による割引率・割増率の差異は設けられていません。
② メリット等級の場合
無事故(%) | 事故有(%) | 割増率・割引率の有無 | |
---|---|---|---|
6等級 | 13 | 割引率 | |
7等級 | 27 | 14 | 割引率 |
8等級 | 38 | 15 | 割引率 |
9等級 | 44 | 18 | 割引率 |
10等級 | 46 | 19 | 割引率 |
11等級 | 48 | 20 | 割引率 |
12等級 | 50 | 22 | 割引率 |
13等級 | 51 | 24 | 割引率 |
14等級 | 52 | 25 | 割引率 |
15等級 | 53 | 28 | 割引率 |
16等級 | 54 | 32 | 割引率 |
17等級 | 55 | 44 | 割引率 |
18等級 | 56 | 46 | 割引率 |
19等級 | 57 | 50 | 割引率 |
20等級 | 63 | 51 | 割引率 |
メリット等級は6等級以外、すべてに無事故・事故有の選別が行われます。
ご覧のとおり、無事故の場合は高い割引率が適用されます。
ノンフリート等級とフリート等級
等級制度は一般的にノンフリート契約に対する制度を意味します。
ノンフリート契約とは
ノンフリート等級は契約者が所有・使用する車両が、9台以下の契約を意味します。
9契約とも同じ保険会社の場合に適用されるのではなく、各社共通して9台以下と定められています。
たとえば、3台はA保険会社、5台はB保険共済であっても8台所有としてノンフリート契約が適用されます。
フリート契約とは
フリート契約は10台以上所有・使用している場合に適用されるしくみです。
一般的な自動車保険とは異なり、フリート契約はノンフリート契約のような等級制度はなく、1台単位の自動車保険契約ではなくなります。
1契約者単位で保険料を算出し、事故が発生すると、契約全体の保険料に影響します。
年齢による割引制度はなく、特約も限られていますが、割引率はノンフリートよりも高く設定されています。
なお、フリート契約・ノンフリート契約は選べるものではありません。10台以上があるとわかったら、ノンフリート契約から移行する必要があります。
等級を保存する方法とは
自動車保険は基本的に1年契約となっています。必要に応じて契約・解約が自由にできる任意保険ですが、20等級などの高い等級をお持ちの方で、一度解約をされる場合には「次回自動車保険を契約したい時に、また20等級から加入したい」と考えるのではないでしょうか。
新規加入の6等級と、無事故の20等級とでは割引率が50%も異なっています。
では、等級を保存する方法はあるのでしょうか。
結論から言うと、「中断」をすれば、等級を保存することができます。
自動車保険の中断とは
自動車保険は中断をすると事で等級の保存ができます。ただし、すべての自動車保険の解約に適用できる方法ではありません。
詳しい条件は以下です。
- 現契約で7等級以上ある方
- 現契約の解約日もしくは満期日から13カ月以内に申請すること
- 車を手放していること(廃車・譲渡・車検切れ・盗難・他契約への車両入替)
つまり、現在車両に乗っていて、一時的に乗らない程度の理由では中断の発行は難しいのです。ただし、妊娠・海外渡航による解約は特例となる自動車保険会社もあります。
【中断】について詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にして下さい。
中断証明書とは?発行するメリットと発行条件・方法
自動車保険の等級スタートをお得にする方法
充実した補償が用意されている自動車保険に新規契約する場合、6等級から始まることを解説しました。しかし、等級の割引率・割増率表のとおり、6等級は7~20等級と比較するとそこまで高い割引率ではありません。
では、自動車保険の新規契約の際に、お得に等級スタートをする方法はあるのでしょうか。
詳しくは以下で解説します。
セカンドカー割引で7等級スタートをする
すでに1台自動車をお持ちで、自動車保険に加入済みの場合、「セカンドカー割引」が適用される可能性があります。
セカンドカー割引とは、「2台目以降の、新規自動車保険加入時にお得になる」割引です。
セカンドカー割引が適用されると、6等級ではなく、7等級から新規契約をスタートできます。
セカンドカー割引には、以下4つの適用条件があります。
① 現在の契約が11等級以上であること
② 現在の契約が自家用8車種であること
③ 現在の契約の記名被保険者が個人であること
④ 自動車の所有者が個人、もしくはみなし所有者であること(リース契約などの所有権留保)
どのような使用例が考えられる?
この方法は、すでに同居のご家族が1台以上契約している場合、ご家族のために自動車保険の契約をするパターンが考えられます。
法人は対象とならないこと、11等級以上無ければ適用できないことを覚えておきましょう。
等級継承のしくみを活用する
等級継承のしくみとは、等級を一定の範囲内の方で、条件が整えば等級をもらうことができることを意味します。
では、等級継承ができる一定の範囲とは、どのようなものでしょうか。
①記名被保険者の配偶者
②記名被保険者もしくは配偶者の同居の親族
この条件をクリアしていれば、等級継承によって、新規契約は現契約の等級をもらった上で、スタートすることが可能です。
たとえば、父親が20等級、同居の子が車両を新しく取得をするタイミングで自動車保険の新規契約を希望する場合、同居の子に20等級を譲り、父親が新規でセカンドカー割引適用の7等級からスタートすることができます。
等級継承の注意点は、「別居の未婚の子」です。
多くの方が高校や大学を卒業するタイミングで、運転免許証を取得します。取得後に進学や就職で別居することは多いですが、等級継承は別居の親族には等級を引き継ぎできない!という点です。
別居を開始する前に、等級継承をする必要があります。(等級継承後に別居をすることに問題はありません)
なお、配偶者は同居・別居を問わずに等級継承が可能です。
【等級の引き継ぎ】について詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にして下さい。
自動車保険の等級は引き継げる?引き継ぐときのポイントと注意点
等級継承ができないケースもある
等級継承は上記の継承できる範囲の制限だけではなく、等級継承がそもそもできないケースもあります。
たとえば、等級継承は他社契約への継承はできますが、等級情報の共有をしていない一部共済にはできません。これは親族間の等級継承に限らず、中断証明書の利用時や、満期時の他社契約への切り替え時も同様です。
また、等級継承を検討している現在の契約が、保険の未納などによる「契約解除」となっている場合も継承できません。
等級継承できる等級が高いと、補償を充実させると高額な保険料になりやすい若年ドライバーにとって、大変お得な契約となります。そのため、同居の親子間で広く活用されている方法です。
お得なネット自動車保険を選択する
自動車保険の保険料は、等級だけではなく様々な要素に左右されています。その1つが「契約方法」です。
自動車保険を新規契約する場合、ネット型の自動車保険で6等級スタートをするのか、代理店型の自動車保険で6等級スタートするのかによって、多くの場合保険料に差異があります。
一般的に代理店を通さないネット型自動車保険は、代理店型自動車保険よりも割安な保険料に設定されています。同じ等級でも、契約方法によって保険料が異なるため、見積もりを取得して比較することがおすすめです。
中断証明書の活用
先に触れたように、中断証明書がお手元にあるなら、中断時の等級から新規契約としてスタートができます。
中断証明書の利用方法
中断証明書は「前契約の等級を証明する書類」であり、必ずしも次契約も同様の保険会社にする必要はありません。
新契約をする時に中断証明書(原本)を提出すれば、中断した等級から契約がスタートできます。中断証明書は10年の発行期限があるためご注意ください。
ただし、契約できる車両は自家用8車種に限られます。また、原則として新契約は記名被保険者と車両所有者が旧契約と同一、もしくはその配偶者、記名被保険者もしくは配偶者の同居の親族などに制限されています。
新規契約後に等級を上げるコツとは
自動車保険は、新規契約後からコツコツ等級を積み上げることで、最大20等級まで上げることが可能です。20等級を実現すると、上げ止まります。しかし、6等級からスタートした場合、20等級までは、「14等級」上げる必要があります。
では、自動車保険の等級を上げるためには、一体どうすれば良いのでしょうか。
以下3つのアイデアをご確認ください。
まずは事故を起こさないこと
自動車保険の等級は毎年1等級ずつしか上げることができません。飛び級のように、2,3等級上がっていくしくみではないため、6等級から20等級を目指す場合、単純に無事故でも14年間かかることになります。
ノンフリート等級として等級を上げていくためには、とにかく事故を起こさないことを意識する必要があるのです。
ただし、自動車保険は万が一に備えて加入をするものです。たとえ翌年3等級下がったとしても、万が一の際には高額の賠償金支払いや、充実の補償を得ることも可能です。しっかりと補償内容は充実させ、なるべく事故が起きないように安全運転を心掛けましょう。
ノーカウント事故をしっかりと把握すること
自動車保険はお得な補償が豊富に用意されています。たとえば、弁護士費用や個人賠償特約などは、交通事故以外の場面でも大いに活躍してくれるものです。
こうした特約は、保険料もお得に設定されているだけではなく、保険金支払いを受けても「ノーカウント事故」として扱われるため、等級に影響しないので、賢く活用しましょう。
ノーカウント事故には以下が挙げられます。
- その他の保険金支払いはなく、搭乗者傷害保険金のみ支払いを受けた
- 自転車走行中に、歩行者にあたってしまった
- 弁護士費用特約を活用し、法律相談をした
- ファミリーバイク特約で支払いを受けた
- 人身傷害保険のみ使用し、休業損害などの補償を受けた
ノーカウント事故は特約や人身傷害保険のみ、搭乗者傷害保険のみのケースでも適用されます。
等級ダウンを我慢するのではなく、適切な補償を求めてもノーカウント事故として等級ダウンには至らないケースも多いと知っておきましょう。
車両保険の使用を見極めること
自動車保険は万が一に備えて加入するものですが、保険の使用に関しては慎重に見極めることも大切です。
特に中古車や、新車後年数が経過している車両への車両保険の場合、車両保険金を満額受領しても、修理費用は賄えない場合があります。
このようなケースでは、無理に車両保険を使用するのではなく、等級ダウンを避ける方がお得となる可能性もあります。
車両保険は自分で自由に保険金額を定められるものではありません。補償加入時にも、保険金支払い時にも、適切な時価額かどうか評価を保険会社側から受けます。
無理に保険金を受け取ると、翌年以降3等級ダウンとなり、事故有係数適用期間も受けることになるため、慎重に見極めましょう。(なお、相手方への補償が発生している場合、車両保険の使用の有無に関係なく等級はダウンします)
■車両保険に加入するメリット
時価評価の低い車両の場合、車両保険には加入しない方法もありますが、車両保険には事故時の修理費用以外のメリットもあります。
一般型への加入の場合、単独事故に備える効果もありますし、限定型でも盗難やいたずらに備えるメリットがあります。
時価評価が著しく低い場合は事故時に得られる保険金が少ないため未加入を選択することが現実的ですが、補償内容も確認した上で決めることがおすすめです。
等級の理解を深めて賢く活用!
今回の記事では、自動車保険の新規加入について、等級制度、保険料との関係も踏まえながら詳しく解説を行いました。
自動車保険は基本的に、新規契約時には6等級から始まります。
しかし、中断証明書の利用やセカンドカー割引などの活用で、お得な等級から始めることも可能です。ただし、ご紹介のとおり利用できる方の範囲などに制限が設けられているため注意しましょう。
ぜひ本記事を参考に、素敵なカーライフを自動車保険とともにスタートさせてください。
投稿者プロフィール
- 経歴:大手損害保険会社に勤務後、弁護士事務所で秘書として交通事故訴訟の調査に従事