交通事故は、車を運転する方なら誰しもが巻き込まれる可能性があるものです。普通車、貨物車だけではなく、パトカーであっても事故を起こすリスクもあります。
平成28年の交通死亡事故の原因には、運転操作不適や安全速度違反など「安全運転義務違反」がトップを占めていますが、どんなに優秀なドライバーでも一瞬の隙が大きな事故を引き起こす可能性があるのです。(※1)
では、もしもパトカーとの間で交通事故が起きてしまったら一体どうすれば良いのでしょうか。この記事では時々見かけることがある「パトカーの追跡車両」に追突された場合を想定し、事故時の対処法や注意点について詳しく解説します。ぜひ、ご一読ください。
(※1)参考URL 警察庁交通局 平成29年2月23日公表
「平成28年における交通死亡事故について」
この記事でわかること
- パトカーの追跡業務の内容
- 追跡行為による事故は誰が補償するのか
- 追跡車両と事故に遭った際の対応方法
- 国家賠償法への請求方法
- 事故に備えられる自動車保険による補償内容
パトカーの追跡車両とは|どのような業務を行っている?
街中で時々見かけることのあるパトカーですが、時に激しいサイレンを鳴らし、急加速している様子が目に留まります。高速道路では覆面パトカーが速度違反をしている車両を追跡する様子も、決して珍しいものではありません。
では、パトカーの追跡車両とはそもそもどのようなものでしょうか。この章では、パトカーの追跡車両の特徴や、業務内容について概要を解説します。
パトカーとはパトロールカーのこと
赤いサイレンに白と黒のコントラストの車体が特徴的な、日本のパトカーですが、正式名称は「パトロールカー」と呼びます。パトカーは街中や高速道路などを走行しながら、治安の維持活動を行っており、不審者や不審な動きをする車両を呼び止めたり、交通違反を行った車両を追跡します。
また、犯罪や災害などの理由で警察署から緊急発進の要請があった場合も現場へ急行します。
パトカーの特徴と業務内容
パトカーは不審車などを急発進で加速し、追跡する様子を見かけることがあります。本来一般的な車両ではできない急発進で進むことが可能ですが、パトカーは治安の維持を業務内容としているため、法律で「緊急自動車」として認められています。
緊急自動車とは救急車・消防車と同等の扱いを意味します。緊急自動車は、道路交通法第39条で認められており、停止が必要な箇所を停止せずに通過しても良いことになっています。赤信号を通過できるのは、法律で認められているからなのです。
パトカーは厳密には業務内容によって車両が異なっています。白と黒のコントラストである点では共通していますが、交通取り締まり向けの車両は「交通取締用四輪車」、パトロール用に使用されている車両は「警ら用無線自動車」、小回りが利いた方が効率の良い街中の治安維持には「ミニパトカー」が使用されています。
全国の警察署でトヨタのクラウンが多く使用されていることで知られている「覆面車両」は、パトカー特有の赤い点灯を車両上部には付けずに走行しています。速度違反などの取り締まりや、緊急時の逮捕に向けての治安維持活動を主な業務としています。
覆面車両は白と黒のコントラストカラーの車両ではないため、一見するとパトカーとはわかりません。そのため、覆面と呼ばれています。覆面車両は一般的に警察官が2名乗車し、バックミラーが2つ装備されています。また、車両後部にはアンテナがついていることが多いでしょう。いずれの車両も、犯罪を防ぐ・解決するための業務に邁進しています。
追跡行為とは
パトカーは緊急発進を行い、不審車を追跡していることがあります。追跡行為と呼ばれる業務は、パトカーが日常的にこなしている業務の1つです。こうした光景はドライバーなら少なからず見かけるものであり、違和感なく感じる方も多いでしょう。
しかし緊急自動車として認められている救急車や消防車とは異なり、パトカーの追跡行為は不審車などを追跡する必要があるため、その他のドライバーからすると動きが推測しにくいという難点があります。
たとえば、救急車は信号を無視して走行できますが、目的地は明らかに病院であり、急患を乗せている以上は蛇行するような素振りはありません。しかし、パトカーは追跡対象となっている車両を追跡する以上、蛇行するような運転に転じざるを得ない場合があります。
救急車や消防車よりも危険な運転に陥りやすいのです。
追跡から交通事故が発生することがある
犯罪に加担している、交通違反を犯してしまった車両は、パトカーから追跡されると「捕まりたくない」「怖い」などの思いから、急加速して逃げることがあります。パトカーは治安維持や逮捕を目指して追跡しますが、追跡行為をきっかけに「交通事故」に発展することがあります。
2023年10月24日には、福岡市内で警察の追跡車両から逃れようとした車両が軽乗用車などに2台衝突する事故がありました。追跡行為は第三者への被害を生みやすいのです。また、追跡行為をするパトカー自身が事故を起こすこともあります。
NHKの報道によると、2023年12日夜、「新潟県上越市の国道の交差点でパトカーと軽乗用車が衝突する事故があり、横転したパトカーに乗っていた警察官1人が頭を打って病院に運ばれました。」(※2)
追跡行為による事故は、以下の2つに分類できます。
- 1.追跡行為を受けた車両が起こす事故
- 2.追跡行為をするパトカーによる事故
(※2)引用 NHK 2023年6月13日 15時55分
パトカーが事故で横転 警察官1人が頭を打ち病院搬送 新潟 上越
追跡行為による事故は誰が補償する?
パトカーによる追跡行為によって第三者に対して事故が発生した場合であっても、一般的な交通事故と同様に死傷したり、車両が損壊したりするおそれがあります。
そこで、この章では第三者が巻き込まれた場合の事故時の賠償責任の在り方や、補償について考察します。
通常の事故と同じで、損害賠償責任は発生する
一般的な交通事故の場合、交通事故の相手方が加害者だった場合には、加害を与えてしまった本人が損害賠償責任を負います。
自動車保険は加害者側になった時に賠償責任に備える側面もあり、高額の請求時に契約者に変わって保険会社側が支払いを行っています。
業務中の事故はどうなる?
営業車による事故のように、運転者と車両の所有者が異なるケースもよくあります。この場合、車の所有者や会社についても、損害賠償請求ができます。
自動車保険は法人契約も可能であり、社有車に対して保険をかけていることが殆どで、社員による事故に備えています。
パトカー自身による事故の賠償責任の所在とは
パトカーは公用車であり追跡行為は公務を行っている警官の運転で行われています。では、パトカー自身による事故の賠償責任の所在はどこにあるのでしょうか。
公務による事故に対しては、民間の方による交通事故について解釈する民法とは異なり、「国家賠償法」が適用されます。つまり、民間の営業車とは異なる解釈で損害賠償責任を負うことになります。
警察官が追跡中に事故を起こしてしまい、第三者に対して被害を与えてしまった場合には、警察官が公務を行うために所属する各都道府県が、賠償責任を負います。なお、パトカー以外の公用車による事故も、国家賠償法によって補償が行われています。
「国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。」(※3)
(※3) 引用:昭和二十二年法律第百二十五号 国家賠償法 第一条第一項より
追跡された車両による事故に巻き込まれた場合
では、追跡された車両が暴走や蛇行などを行った結果、追突された場合には誰が損害賠償責任を負うのでしょうか。
被害者側としては、追突してきた加害者も許しがたいですが、追跡行為を行ったパトカーに対しても賠償責任を問いたいのではないでしょうか。
しかし、追突してきた加害者が引き起こしている事故であるため、損害賠償責任については「加害者側」に求めることになります。
警察側に損害賠償責任は追及できるのか
追跡によって暴走した車両に追突され、被害者となった場合には、警察側に対しても損害賠償責任を追及できるのでしょうか。
結論から言うと、警察側の追跡行為に「違法性」があったか否かが争点となるため、賠償責任を認めてもらうためには被害者側が追跡行為の違法性を立証する必要があります。
違法性が認められた場合には国家賠償法に基づいて、各都道府県が賠償を行います。(※4)
しかし、追跡行為の違法性を立証することは決して容易ではありません。
(※4)参考URL:最高裁昭和61年2月27日判決
警察官のパトカーによる追跡を受けて車両で逃走する者が惹起した事故により第三者が損害を被つた場合において右追跡行為が国家賠償法一条一項の適用上違法であるというための要件
追跡車両に追突された後はどうするべき?事故の対処法とは
追跡から逃れようとした暴走車両や、パトカーによる追突事故に第三者として巻き込まれてしまったら一体どうするべきでしょうか。この章では、追跡車両に追突された後の事故処理や入通院などの事故後の流れについて、詳しく解説します。
追跡事故直後の事故対応とは
追跡行為による事故に巻き込まれたら、事故対応はどのように行うべきでしょうか。
まず、結論から言うと事故時には相手方がどのような車両であっても、変わることはありません。
以下の6つのステップを守るようにしましょう。
- 1.安全な場所に車両を停車する
- 2.負傷している場合は救急車を至急手配し、救護活動を行う
- 3.警察への報告
- 4.事故の相手方の情報を把握する
(相手方の氏名・車両番号・加入している自賠責保険は任意保険の確認) - 5.自身の保険会社への報告
- 6.ケガが無くても、追突されている場合は医療機関の受診をする
(むち打ちなどの症状は事故後数日して現れることがあります。事故後は必ず医療機関を受診してください。)
緊急自動車であるパトカーとの事故の注意点
パトカーは法律で緊急自動車であると認められている!と解説しました。救急車や消防車と同じように、パトカーは追跡行為をしている時にはサイレンを鳴らし、赤信号であっても停車をせずに走行が可能です。
交差点への侵入も、停車側であったとしても可能であるため、一般車両は緊急自動車側に通行を譲る必要があります。(道路交通法第40条)
では、緊急自動車を優先すべき場面で、一般車両が侵入し事故に至った場合はどうなるのでしょうか。
通常は一般車両同士の事故の場合、信号を守らなかった側の過失が大きくなりますが、緊急自動車としてサイレンを鳴らしながら走るパトカーと事故があった場合、一般車両側の過失が大きくなる可能性があります。
緊急自動車側の方が、優先度が高いと法律で定められているからです。
つまり、赤信号を無視して交差点にしてきたとしても、サイレンを鳴らして走行するパトカーの方が優先度は高く、事故時にも過失割合が低くなる可能性が高いでしょう。一方で、緊急自動車として走行していない場合(サイレン・赤点灯無し)には、交差点での事故なども通常の車両同士の事故として過失割合を検討します。
パトカーは自動車保険に加入しているのか
パトカーはすでに解説のとおり、事故時に負うべき賠償責任については、民法上ではなく国家賠償法に沿って責任を負います。では、パトカーが加害者側になった時にはどのように補償を行うのでしょうか。任意加入である自動車保険には加入しているのでしょうか。
2023年6月14日の神戸新聞NEXTによると、2017年に覆面車両が追突事故を起こした結果、警察車両の自動車保険未加入が判明する事件がありました。この時、兵庫県警の警察車両2064台中、6割以上に当たる1372台が自動車保険未加入であることが判明しており、おおよそ6割超が自動車保険に入っていないことが発覚しています。
兵庫県警の場合、パトカー全車が自動車保険に加入するなら1億に上る自動車保険料が要ること、法律上「緊急走行する車を優先すべき」と規定されていることなどから、全車は自動車保険には加入しなかったと考えられています。つまり、自動車保険に加入していないパトカーは多い可能性があり、事故時には通常の事故対応以外の示談交渉が必要となる場合があります。
なお、任意保険の加入については各都道府県警によって異なっており、今後も対応にはばらつきがあることも予想されます。
参考URL:神戸新聞NEXT 2023/6/14 06:50
覆面パトが追突事故→警察車両の任意保険未加入知らされ… 兵庫県警では6割超、全車加入なら1億「緊急走行する車を優先」
パトカーであっても自賠責保険には加入必須
自動車保険の加入率が低いことが予想されているパトカーですが、強制保険である自賠責保険はどうでしょうか。
自賠責保険は自動車を運行する以上は加入が義務付けられているものです。(自賠法3条)つまり、パトカーも車両の本体自体は一般的な車両を同じであるため、自賠責保険に加入する義務があります。
事故が発生し、賠償責任を求める際には自賠責保険からの補償は確実に受けられることになります。
自衛隊の車両はパトカーと同じ?
しかし、パトカーと類似している自衛隊車両は、一般車両として扱いません。
戦車や装甲車の扱いは、自衛隊法 第114条第1項(道路運送車両法の適用除外)により、一般車両から除外されています。そのため、自動車保険にも自賠責保険にも未加入であることが予想されます。
パトカーの追跡事故|加害者と被害者の保険はどう使う?
パトカーの追跡車両に追突された場合、実際に被害から回復していくためにはどのように自動車保険を利用すれば良いのでしょうか。
この章では、パトカーに過失があった交通事故と仮定し、自動車保険の活用方法について詳しく解説します。
パトカー(加害者)の自動車保険の対応
パトカーの場合任意保険への加入がないことも予想されるため、事故時には任意保険の有無についてまずは確認する必要があります。
任意保険が無い!という場合には国家賠償法にそって請求を行い、賠償責任を果たしてもらう必要があります。任意保険がある場合は、通常の事故対応と同じです。
パトカー側との示談交渉については被害者側の方にとって大きなストレスとなることが予想されるため、自身が加入している自動車保険会社に相談したいところですが、以下のケースでは注意が必要です。
【もらい事故の場合】
交差点で出会い頭同士の交通事故の場合には、双方に過失割合が発生することが予想されますが、パトカーに追突された「もらい事故」の場合は、保険会社側が警察側に示談交渉できません。弁護士法に違反してしまうためです。
ソニー損保のように、もらい事故に関しては「もらい事故相談サービス」を用意している保険会社もあるため、示談交渉を自分で行わないといけなくなっても、保険会社からサポートを受けられる場合があります。
もらい事故の場合は示談交渉を自ら行う必要があるため、後遺障害等級や過失割合など、高度な交渉を要する場面でも被害者側が負担を負う必要があります。
被害者の自動車保険の対応
被害者側は過失割合が双方にある場合は、自身が加入している保険会社側の担当者が示談交渉を行ってくれます。過失割合などについても交渉を一任できますが、先に触れたようにもらい事故のケースでは、保険会社側が交渉できません。
また、一般的な保険会社間での示談交渉とは異なり、賠償額の確定まで時間を要する可能性があります。そこで、円満に交渉を進めるためには、「弁護士費用特約」の活用が推奨されます。
弁護士費用特約の活用とは
もらい事故や難易度の高い示談交渉が必要なケースでは、自動車保険の特約の1つ、「弁護士費用特約」の活用がおすすめです。弁護士費用特約とは、弁護士に法律相談や事故の交渉などを依頼する際に、保険会社側が上限300万円まで負担してくれるというものです。(保険会社によって異なります)
弁護士費用特約があれば、難解な国家賠償法が絡むことがあるパトカーとの事故にも、弁護士が示談交渉などを代理人として対応してくれます。
特にパトカーに追突されている場合は、もらい事故であり保険会社側が示談交渉できないため、弁護士に依頼をすることがおすすめです。
【示談交渉】について詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にして下さい。
交通事故の示談交渉とは?自動車保険が果たしている示談交渉サービスを解説
国家賠償法に基づいて請求する方法とは?
一般的な交通事故とは異なり、パトカーとの事故では国家賠償法に基づいた補償を受ける必要があります。パトカー側の責任を追及し、適切な補償を得るためにはどのような手順を踏むべきでしょうか。
この章ではパトカーに対する請求を前提に、国家賠償法への請求の流れを解説します。
国家賠償請求の手続きと流れ
国家賠償を受けるためには、被害者側が請求を求めて訴えを起こす必要があります。
請求の流れは以下3つのステップです。
【1.訴状を裁判所に提出する】
国家賠償請求を求める場合、裁判所に訴えを起こす必要があります。
原告の住居のあるエリアを管轄する裁判所に訴状を提出可能です。求める金額や、パトカー側の責任について記載した上で訴訟提起が必要です。
【2.訴訟】
訴状を提出すると、審査が裁判所にて行われ無事に受理された後には期日が指定されます。
期日になると、被害者側・加害者側が出廷し口頭弁論を行います。口頭弁論の前には、弁論に向けて証拠や準備書面を提出する必要があり、時には事故に対する陳述書なども提出します。
一般的に交通事故に関する訴訟は後遺障害における賠償金など、高額の賠償金額を争うケースが多く、重度な後遺傷害がある場合に長期化することもあります。
【3.和解もしくは判決】
裁判では必ずしも判決を待たなくても、納得のできる示談が提案されたら和解することも可能です。
裁判所側が示談について提案することもあります。和解が成立しない場合には判決が下され、判決内容が不服な場合は控訴できます。
訴訟が必要となる場合は弁護士が必要
民間の方同士の交通事故であっても、高次脳機能障害などの高度な後遺障害が残されている場合は、億単位の賠償金が必要となることが多く、保険会社間の示談交渉ではなく双方が弁護士を立てた訴訟で解決を図るケースが多くなっています。
国家賠償法に基づいて請求を求める場合は、通常の訴訟よりも難解になりやすく、被害者自身が訴訟まで対応することは難易度が相当に高いと言えるでしょう。また、被害者側がパトカーとの事故で負ったケガやストレスを癒すためには、入通院をしっかりと行う必要もあります。
訴訟時には受けた被害に関する被害額を算出するだけではなく、事故で失ってしまった、将来得られたはずの利益(逸失利益)も算出する必要があります。
今後の人生を支えるための大切なお金を計算する必要があるため、弁護士に依頼するようにしましょう。
追跡車両との事故を防ぐためにできることとは?
自動車保険に加入している方は、「万が一の事故」に備えて、賠償責任分野や人身・車両へ分野への補償を手厚くしていることでしょう。しかし、今回のテーマであるパトカーとの事故や、パトカーに追跡された車両との事故は、一般的な車両事故よりも複雑な手続きを要する可能性があり、できる限り回避したいものです。
では、追跡車両との事故を防ぐためには、どのようなことができるでしょうか。
緊急自動車の通行には停車する
パトカーはもちろん、救急車や消防車は、事件や事故に迅速に対応するために緊急自動車としての通行を許可されています。
凶悪な犯罪に立ち向かうために追跡行為をしているパトカーも少なくありません。
緊急自動車が通行する際には、優先側(青信号など)に居る車両も、道を譲る必要があります。緊急自動車は優先する必要があり、「左に寄せて道を譲る」ことが義務です。
また、パトカーは緊急自動車走行時に、サイレンを鳴らしています。車両を追跡している場合は、急なアクセルやブレーキも予想されるため、車間距離をしっかりと取り、事故に巻き込まれないように注意しましょう。
歩行者や自転車に注意
緊急自動車が通行する時は、左に大きく車両を寄せなければ車両が通行できないことがありますが、歩行者や自転車にも細心の注意を払う必要があります。狭い道でもパトカーが突き進んで来る事があるため、慌てて進路を譲る際にはご注意ください。
パトカーの接近時の注意点
パトカーが緊急自動車として走行している際には、交通違反車や不審者を追跡していることが多くなっています。緊急走行をしているパトカーが接近している際には、知っておきたい注意点があります。それは「罰則」です。
パトカーをはじめとする緊急自動車の走行をもしも妨害してしまったら、罰則を受ける可能性があります。
特にパトカーは違反者をその場で取り締まれるため注意が必要です。
緊急車妨害等違反の罰則は、以下のように設定されています。(2023年10月現在)
反則金 | 違反点数 | |
---|---|---|
大型車 | 7,000円 | 1点 |
普通車 | 6,000円 | |
二輪車 | 6,000円 | |
小型特殊車 | 5,000円 | |
原動機付自転車 | 5,000円 |
追跡されたら落ち着いて停車を
万が一、自身が交通違反などの理由でパトカーから追跡を受けた場合には、落ち着いて停車し警察の指示に従いましょう。追跡を受けると焦ってしまうかもしれませんが大きな交通事故を誘引してしまったり、自身も事故を起こす可能性が高まります。
2020年11月、福井県福井市で福井署のパトカーが追跡した車両が、軽自動車と衝突を起こす事故がありました。
この事故では軽自動車に乗車していた大学生が死亡、酒気帯び運転を隠そうと逃げた会社役員が逮捕されました。
この事件では早期に警察側が適切な追跡だったとしていることから、損害賠償責任については逃走した会社役員側にあります。事の発端は一時停止の無視、そこから死亡事故を起こすに至ってしまったのです。加害者側は重い責任を背負うことになります。
参考URL:中日新聞 2020年11月28日 5:00
福井でパトカー追跡の車事故 軽と衝突3人死傷
万が一の事故に、自動車保険で備えよう
パトカーの追跡車両による事故に巻き込まれるリスクは、一般車両同士の事故と比較すると低いものです。しかし、事実として追跡が引き金となる事故は発生しています。
国家賠償法など複雑な手続きを要することもある事故に備えるためには、自身の自動車保険をしっかりと強化しておくことがおすすめです。
たとえば、今回のように公務に関係する事故は、複雑な訴訟手続きを要するため「弁護士費用特約」があると安心です。
訴訟などを一任できるため、治療に専念することができます。また、過失割合などの示談交渉も安心です。
警察との交渉は誰でもストレスに感じるものです、しっかりと特約を使って解決を目指しましょう。
無保険車に備えるにはどうするべき?
パトカーに追跡される車両の中には、車検切れや無免許、飲酒など「隠匿したい事実」があるが故に、追跡を逃れようと暴走行為を働いていることがあります。
実際に先に触れた福井県での事故は、飲酒運転を隠匿するために追跡から逃亡していました。
このようなケースでは、加害者側が無保険車である可能性もあり、任意保険・自賠責保険のいずれからも補償が得られない場合があります。
無保険車が相手となる事故では、政府の保証事業(※4)により補償が得られますが、自身の任意保険からも補償が得られます。
無保険車による事故の被害に備えるために、以下の保険や特約内容を今一度確認しておきましょう。
- 人身傷害保険
相手の過失割合や無保険に関係なく、死傷に対しての保険金支払いが行われる。 - 車両保険
時価額を限度に自身の車両の損害に対して保険金が得られる。 - 無保険車傷害特約
相手方が無保険車や支払い能力のない方だった場合に、本来は加害者が負担すべき損害賠償について、自賠責保険からの支払いを超えてしまう部分を支払ってくれる特約。 - 弁護士費用特約
無保険車のような難航しがちな示談交渉などを一任できる。
(※4)参考URL:損害保険料率算出機構
「政府の保障事業とは」
まとめ
今回の記事では、「パトカーの追跡車両による追突事故」をテーマに、パトカーによる追跡事故時の損害賠償責任の所在や、国家賠償法における訴訟の流れなど、詳しく解説しました。
パトカー自身に追突される、追跡された車両に追突されるなどのトラブルをなるべく防ぐためには、緊急自動車の走行時には、きちんと安全を確保して停車することが大切です。また、日頃から事故のトラブルを防ぐためにも、自身の任意保険である自動車保険の補償を拡充しておくこともおすすめです。
投稿者プロフィール
- 経歴:大手損害保険会社に勤務後、弁護士事務所で秘書として交通事故訴訟の調査に従事