「最近盗難が多いと聞いたけど、自動車保険に加入していると補償されるの?」
「自動車保険で盗難時に補償を受けると、保険料や等級には影響するの?」
大切な愛車はいつまでも大切にしたいものですが、「盗難」という悲しいトラブルに直面することがあります。
では、もしも愛車が盗難されてしまったら、一体どのように対処すれば良いでしょうか。
そこで、今回の記事では「盗難」にスポットを当て、自動車保険の活用方法や、保険使用時の注意点を中心に詳細を解説します。
この記事をまとめると
- 盗難時に使える自動車保険がわかる
- 盗難時の車両保険への請求の流れ
- 身の回り品補償特約とは
- 盗難被害が多い車種
- 盗難防止グッズや対策方法
車両保険で盗難時は補償できる?
もしも大切な愛車が盗難されてしまったら、一体どのように対処すれば良いでしょうか。
この章では盗難被害時の自動車保険の活用について、補償の有無を中心に紹介します。
盗難被害は車両保険で補償できる
愛車が盗難されたら、任意保険である自動車保険の「車両保険」から補償が得られます。
車両保険に加入していない場合は盗難時の補償は得られないため注意しましょう。
なお、車両保険には、以下に挙げる2つのプランが用意されています。
- ① 一般型
- ② エコノミー型(車対車+A)
②のエコノミー型(車対車+A)は補償範囲が一般型と比較すると狭く、その分保険料が低く設定されています。
盗難事故の場合、①と②のいずれであっても補償が行われることが多いですが、盗難対象外特約を付帯し保険料を節約している場合、盗難事故は対象外です。
【車両保険の一般型とエコノミー型】について詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にして下さい。
車両保険の一般型とエコノミー型、どちらを選べばよいか
盗難事故は自賠責保険の対象外
盗難は明らかに加害者がいるものであり、自賠責保険の対象になるのか疑問を持つ人も多いでしょう。
残念ですが、自賠責保険は事故時の人身部分(相手方の死傷・同乗者の死傷)を補償するものであり、自身が加入している自賠責保険から盗難された車両への補償が行われることはありません。
任意保険でのカバーが大切です。
盗難補償の対象となるものとは?
車両に関する補償を行う車両保険ですが、具体的に盗難が発生したら、どのような補償を行うのでしょうか。
盗難時に補償対象となるのは以下です。
- 車両本体
- タイヤ
- ナンバープレート
- ホイル など
車両保険での盗難への補償は、車両本体への補償だけではなく車両に付属する部品についても補償します。
なお、車両本体が盗難された場合は「全損」、部品が盗難された場合は「分損」として保険支払いの手続きが進みます。
車両に搭載していた身の回り品はどうなる?
車両本体が盗まれてしまったら、車内に載せていた身の回りのものも盗まれてしまいます。
ゴルフクラブやコートなど、いろんな身の回りのものを搭載したまま盗難に遭う方は少なくありません。
車両に搭載していた身の回りのものは、「身の回り品補償特約」(車内外身の回り品特約などの名称もある)によって、補償が行われます。
例えば、車両に元々組み込まれていたカーナビが車両ごと盗まれた場合は、車両保険から補償が行われます。
カーナビだけ狙われて車上荒らしを受けた場合は、身の回り品補償特約にて、補償が得られます。
同じものが盗難された場合でも、保険金を支払ってくれる保険は盗難時の状況によって異なります。
身の回り品補償特約には対象外も
車内に載せていたものが盗まれた場合、身の回り品補償特約から補償が受けられますが、補償の対象外となるものもあります。
例えば、クレジットカードや財布が盗まれたり、ペットやスマートフォンが盗まれた場合などは対象外としています。
また、一部の保険会社では「キャリアに固定された身の回り品」については、特約の対象外としています。
保険会社によって補償範囲が異なっているため、加入時には十分に比較することをおすすめします。
お財布やスマホは、車上荒らしに遭いやすいアイテムです。
停車時には他者の目が届きにくい場所に保管するか、きちんと携行するように心がけましょう。
盗難時に保険金を受け取ると、翌年の等級はどうなる?
「まさか盗難!?」と思える程、車両や携行品の盗難は、ある日突然発生するものです。
しかし、万が一の場合でも車両保険や身の回り品への特約があれば、補償が得られます。
では、盗難時に保険金を受け取ったら、翌年の等級はどうなるのでしょうか。
補償する保険・特約名 | 翌年の等級 |
---|---|
盗難時の車両保険の使用 | 1等級ダウン |
盗難時の身の回り品補償特約の使用 | 1等級ダウン(※1) |
一般的な車両保険の使用(車対車の事故時など)では、翌年に3等級ダウンしますが、過失の無い盗難事故での車両保険使用は、1等級ダウンします。
また、等級が下がることにより、事故有係数適用期間は1年加算されます。保険料は翌年上がります。
(※1)身の回り品補償特約については、ノーカウント事故の保険会社もあります。
盗難に備えたい!車両保険加入時の注意点
盗難に備えるためには、自身の自動車保険でしっかりと車両保険に加入する必要があります。
しかし、車両保険に加入するためには、知っておきたい注意点もあります。
車両保険に加入できない場合がある
盗難に備えるためには車両保険に加入する必要がありますが、そもそも車両保険に加入できない場合があります。
車両保険は加入したい車両全てが加入できるものではないのです。
例えば、以下のようなケースでは、車両保険に加入できないおそれがあります。
- 車両の初度登録から一定期間経過している(10年以上など)
- 車両料率クラスが高すぎて、事故リスクの観点から引き受けできない
- 高級車両で車両保険の金額が1,000万円を超えるようなケース
- 過去に事故が多く、デメリット等級である
このようなケースでは、そもそも車両保険に入りたくても、任意保険を販売する保険会社側から車両保険の加入を断られる可能性があります。
なお、加入については各社共通の判断基準があるものではなく、保険会社によっては加入できることもあります。
初度登録から時間が経過している場合、そもそも車両本体の時価評価が難しいため、車両保険にもしも加入できても10万程度、などの低い保険金額しか加入できない可能性もあります。
すると、事故時や盗難時に支払われる保険金額は非常に低いため、加入しても新しい車両を変えるような金額ではありません。
免責を設定している場合の保険金に注意を
車両保険は、車両の価値が高い新車などのケースでは、保険金額も高くなるため保険料も高くなります。そのため「免責」を設定している方も多いでしょう。
免責とは、事故時などで保険会社が保険金を加入者側に支払う際に、自己負担金を求めることを意味します。
例えば、1回目の事故の免責金額が5万円の場合で、事故時の支払われる保険金が90万円の場合、実際に支払われるのは、5万円が差し引かれた85万円です。
もしも損害額が小さい場合、免責金額を設定していると、実際に支払われる保険金は低くなります。
【免責】について詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にして下さい。
車両保険の免責金額とは?自己負担額はいくらにしたらよいか
盗難に遭ったら?保険金請求の流れ
実際に盗難に遭ってしまったら、どのような流れで自動車保険の保険金を受領できるのでしょうか。
この章では実際の請求から支払いに至るまでの過程を、わかりやすく解説します。
盗難が発覚したら警察へ!
交通事故が発生すると、速やかに警察へ通報する必要がありますが、盗難の際にも警察に通報する必要があります。
車両や人身が絡む交通事故ではありませんが、保険金を請求するにあたっては、盗難届を出す必要があるからです。
警察に車両や身の回り品に関する盗難届を行うと、受領番号が発行されます。
この番号は保険金請求時に必要となるため、無くさないように注意しましょう。
盗難届とは
警察に対して行う盗難届は、最寄りの警察署で可能です。(警察署なら基本的にどこでも受領できます。)
盗難届の際には、印鑑と身分証明書(運転免許証など)を用意してください。
車両本体の盗難の場合は、車検証が必要ですが車検証も携行していて盗難されてしまった場合には、自動車保険の証券の確認や車の購入先(ディーラーや販売店など)に問い合わせましょう。
保険会社への連絡
こちらも、交通事故時と同様で、保険会社への連絡が必要です。盗難についてもサービスセンター(SC)が対応しています。
もしも代理店型保険に加入している場合は、代理店へのご相談でも可能ですが、保険金支払い業務は代理店ではなく、保険会社が対応します。
盗難された場合、その実態について保険会社側が調査を行います。調査期間はおおよそ1~2ヶ月必要となることが多いでしょう。
保険金請求と支払い
調査が終わり、保険金の支払いが認められると、保険会社側から書類を依頼されます。
車両本体の盗難の場合、この段階で全損処理され、車両の所有者は「保険会社側」へ移行します。
車両の名義変更の手続きや、保険金を受け取る口座の申し出などを行います。無事に書類が整うと、保険金の支払いが行われます。
翌年の自動車保険手続き時の注意点
先に触れたように、盗難による車両保険・身の回り品補償特約の使用は1等級ダウンすることが一般的です。
そのため、次年度に盗難事故以外の事故が無ければ、等級は現契約よりも1等級ダウンします。
盗難時の保険会社とは異なる自動車保険に加入する場合、ご自身で等級と事故有係数適用期間を申告する必要があります。
保険会社を変えても等級は下がりますのでご注意ください。
【等級・事故有係数適用期間】について詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にして下さい。
自動車保険の等級制度とは?保険料の割増引率を徹底解説
盗難を防ぐ為にはどうしたらよい?
大切な愛車は、盗難からしっかりと守りたいものですよね。
では、車両や身の回り品の盗難を防ぐためには、一体どうすれば良いでしょうか。
この章では盗難対策を紹介します。
車上荒らしのターゲットにならないように工夫する
車上荒らしとは、車内の中にある身の回り品を狙う窃盗行為を意味します。
車上荒らしは車両本体の盗難と同様、一般社団法人日本損害保険協会の「第24回 自動車盗難事故実態調査」を参考にすると、22時以降に増加し、深夜から早朝にかけてターゲットになりやすいことが判明しています。
※引用 一般社団法人日本損害保険協会
「第24回 自動車盗難事故実態調査 2020年1月1日~2022年12月31日」
夜間は住まいの車庫であっても、盗まれそうなものを車内に残さないこと、車庫周辺には防犯カメラや砂利、人感センサーライトを設置し、「防犯意識が高い」ことを周囲に知らせることがおすすめです。
防犯意識の高いエクステリア工事を行っておくと、自宅の窃盗を防ぐ効果があります。
盗難防止グッズの導入
車両や車上荒らしを少しでも防ぐためには、「盗難防止グッズ」を導入することもおすすめです。
盗難防止グッズには以下が挙げられます。
- イモビライザー(複製キーなどでの開閉をブロック。車両に標準装備されている時もある)
- ハンドルロック(ステアリングをロックする手法。安価で手に入る)
- タイヤロック(車両の盗難を防ぎやすい。タイヤそのものをロックする)
- セキュリティ(市販されている車用のセキュリティを装備。音や光で盗難を防ぐ。)
追跡アプリを活用すること
盗難グッズの1つとも言えますが、車両を追跡する方法としてスマートフォンのアプリである「追跡アプリ」を活用することもおすすめです。
スマホと連携させるGPSを活用することで、盗まれてしまった後でも追跡ができます。
ただし、車両窃盗は単独犯ではなく、複数名で行われることが多く、ご自身で追跡することは危険です。速やかに警察へ連絡するようにしましょう。
盗難対策費用にお得な特約がある?
自動車保険を販売する保険会社としては、少しでも保険金支払いを抑えたいという考えがあるため、「盗難防止対策をしてほしい」と考えています。
そのため、一度盗難被害にあった契約者に対して、「盗難対策費用特約」などの名称で、盗難グッズの導入に保険金が支払われる特約が用意されています。
また、保険会社によっては「鍵交換費用補償特約」も用意されており、鍵の盗難・紛失や、盗難後に無事に車両が戻った場合の鍵交換費用について、補償を行っています。
車両保険に自動付帯となっていることが多いため、もしも必要な時は、こうしたお得な特約も忘れないように注意しましょう。
盗まれやすい車種がある
車両盗難に遭いやすい車種があることをご存じでしょうか。
海外に転売されやすい、市場流通量が多く、窃盗後も目立たないため違法ナンバーで街中を移動しやすいなどの理由で、以下の車種が盗難に遭いやすいとされます。
- ① ランドクルーザー
耐久性が高く、海外でも非常に人気があるため窃盗団の標的となりやすい。 - ② プリウス
トヨタの人気車種、プリウスはランドクルーザーとともに車両盗難に遭いやすい車種として知られています。
ハイブリット車は人気が高く、世界的に評価されている車種のため注意が必要。 - ③ レクサス
こちらもトヨタの人気車種であるレクサス。
特にLXはラグジュアリーな高級車として人気が高く、SUVという大きさもある車種のため、窃盗団の標的になることも。
この他に、商用車として不動の人気があるハイエースや、高級ミニバンであるヴェルファイアなども盗難に遭いやすいとされます。
すでにこうした盗難に遭いやすい車種をお持ちの方は盗難防止の強化を、今から車種選びをする方は、盗難に遭いやすい車種かどうかも購入の判断基準にするとよいでしょう。
駐車場での盗難はどう防ぐ?
駐車場での盗難を防ぐコツはあるのでしょうか。
この章では、盗難の対策について、駐車場の視点から詳しく紹介します。
施錠を徹底すること
ATMやコンビニエンスストアなど、「ちょっと立ち寄る」時は、エンジンをかけたまま駐車していませんか?
実は、このわずかな下車の際に車両が盗難されてしまうことがあるのです。
ほんのわずかな時間であっても、エンジンをきちんと切り、施錠を徹底しましょう。
月極駐車場は機械式がおすすめ
通勤・通学でこれから月極駐車場を契約する場合は、機械式を呼ばれる駐車場がおすすめです。
1つずつ車両を機械で運び、格納するスタイルのため、窃盗団の魔の手が及びません。
必要に応じてスタッフが車両を呼び出すように下ろすため、いたずらに遭わないというメリットもあります。
頻繁に使う駐車場は、安全性が高い場所を選ぶようにしましょう。
自動車保険と火災保険|盗難時に備える保険とは
盗難に関する保険は「盗難保険」と呼ばれており、車に関するもの以外に補償のためにも保険販売が行われています。
車両の盗難に関しては火災保険と比較されることもあります。では、車両の盗難に火災保険は使えるのでしょうか?
この章では2つの損害保険商品の違いを紹介します。
火災保険の盗難補償とは
火災保険では建物と家財を補償でき、火災以外のトラブルにも対応しています。空き巣対策にも火災保険が適用できるのです。
車両は住まいの敷地内に保管することもありますが、一般的には家財には含まないため、車両保険からの補償となり、敷地内盗難であっても火災保険の対象外です。
しかし、自転車や原付自転車(125cc以下)については家財補償の対象となります。
保管場所に注意が必要
自転車や原付自転車の補償は火災保険があるから大丈夫…と思っていても火災保険は建物と家財を補償する性質の保険です。敷地内に保管されていない物は補償できません。
例えば、敷地から離れた物置に原付自転車を保管し、盗難に遭ってしまった場合は対象外です。
また、火災保険を販売する保険会社によっては、敷地の保管に関して細やかな規定を設けており、ルールを守っていない保管は盗難補償が受けられない可能性があります。
自動車盗難に備えて車両保険を検討
警察庁 生活安全局の「自動車・二輪車盗難対策」がまとめている令和5年6月発表「自動車盗難等の発生状況」によると、自動車盗難は一時期より減少の傾向にあるものの、自動車本体だけではなく、カーナビやナンバープレートの盗難は依然として多く発生しています。
自動車の盗難は、犯罪グループが組織的に関与しており、「プロ集団」による計画的な犯行が多いのです。
思い付きで狙われるのではなく、事前に下調べをしていることが多いため、日頃から防犯対策を強化しておくことが大切です。
盗まれたナンバープレートは、別の犯罪に使うために転用されることが多いため、犯罪への関与を疑われないためにも、盗難発覚後は早急に警察へ届けましょう。
参考URL:警察庁 生活安全局 自動車・二輪車盗難対策
自動車盗難等の発生状況等について
特約もお得な車両保険の検討をしよう
車両保険は解説のとおり、加入できない場合もありますが、自動付帯でお得な特約も付いており、盗難に備えるためにも大変おすすめできる保険です。
日頃の事故にも備えられるため、大切な愛車のお守りとして機能します。
免責などを工夫すれば、保険料を抑えることも可能です。ぜひこの機会に、加入をご検討ください。
正しい知識で最適な盗難対策を
この記事では、愛車の盗難に備えて、知っておきたい自動車保険の車両保険について、盗難への対処法、注意点を詳しく解説しました。
盗難は全国的に発生しており、日頃から車両保険に加入し、しっかりと備えることが大切です。
また、盗難防止には日頃からできることがあります。盗難防止グッズや、駐車場の選び方などにも注意しましょう。
投稿者プロフィール
- 経歴:大手損害保険会社に勤務後、弁護士事務所で秘書として交通事故訴訟の調査に従事