フロントガラスの飛び石傷は、車両保険に加入していれば補償の対象になるのが一般的です。ただし使えば原則1等級ダウン事故になりますので、修理費が安いうちは自費のほうが有利になることもあります。
高速道路を走っていて「パチン」と乾いた音がした。降りて確認したら、フロントガラスに小さな点のような傷ができていた——飛び石の被害は、これといった落ち度がなくても突然やってきます。
困るのは、決めることが一度に増える点です。直すのか、放置するのか。直すならどこに持ち込むのか。車両保険は使うのか。しかも先延ばしにするほどヒビは広がり、選べる手は減っていきます。
応急処置から、リペアと交換の分かれ目、費用の相場、車検の扱い、そして保険の損得計算まで順に見ていきます。保険の話だけ先に読みたい方は、目次から「保険を使うべきか:等級の差が消えるまでの負担で決める」へ飛んでください。
この記事のポイント
1リペアで直せるか交換になるかで、費用は数倍から十数倍変わります(1万5,000円前後 対 5万〜25万円程度)
2分かれ目は「大きさ」「位置」「深さ」の3点。500円玉と定規があれば自分でも一次判定ができます
3車検の法令に「傷は何mmまで」という数値基準は存在せず、運転者の視野を確保できているかで判断されます
4飛び石は一般型でもエコノミー型でも車両保険の対象です。ただし1等級ダウン事故に該当し、事故有係数適用期間が1年加算されます
5損得の分かれ目は「修理費 − 免責金額 > 将来の保険料増額」。増額は年間保険料6万円で約6万〜7万円、20等級なら約2万円が目安です
飛び石に気づいたら、その場で何をするか
安全な場所に停めて、傷の大きさと位置を見る
高速道路上で急に減速するのは危険です。サービスエリアやパーキングエリアまで、一般道なら安全に停められる場所まで移動してから確認してください。
見るべきは、傷の大きさ、ガラスの縁からどれくらい離れているか、運転席から見て視界の正面にかかっていないか。スマートフォンで撮っておくと、後で業者に相談するときも、保険会社に連絡するときも話が早くなります。
触らない、水をかけない、ワイパーはできるだけ使わない
傷の内部に水分や汚れが入り込むと、リペア用の樹脂がうまく充填できず、修理の仕上がりが落ちます。指で触るのも洗車機に入れるのも、仕上がりを落とす方向に働きます。
ワイパーについては、傷の周りにガラス片や異物が残っていると、動かした拍子に傷を広げることがあります。ただし雨天で視界の確保に必要なときまで我慢する必要はありません。無理に見えにくいまま走り続けるほうが危険ですので、その場合は使ったうえで、安全な場所に停めて対応を考えてください。
応急処置は、透明テープを貼るだけでいい
損害保険会社が公式に案内している応急処置は、傷やヒビに水分や汚れが入り込まないよう表面の水分と汚れをしっかり取り除いたうえで、ヒビを完全に覆う幅の保護用の透明なテープ(セロハンテープ、OPPテープなど)を、空気が入らないように貼り付けるという手順です。ヒビを覆いきれる幅のあるものを選びます。
リペアで直せるか、ガラス交換になるか
飛び石の傷には、樹脂を注入して補修する「リペア(部分補修)」で済むものと、ガラスごと交換しなければならないものがあります。費用は前者が1万5,000円前後から、後者は5万円程度から。どちらに転ぶかで、負担はまるで違ってきます。
最終的な可否は業者が現物を見て判断しますが、手元にコインと定規があれば、おおよその見当はつきます。
表①:リペアできるかの自己診断チェックリスト
| 確認する項目 | リペアできる可能性が高い | 交換になる可能性が高い |
|---|---|---|
| 傷の大きさ | 500円玉(直径26.5mm)で隠れる | 500円玉からはみ出す |
| ガラスの縁からの距離 | 縁から10cm以上離れている | 縁から10cm未満の位置にある |
| 傷の位置 | 運転者の視界の正面から外れている | 視界の正面、またはデフロスターの風が当たる場所 |
| 傷の深さ | 表面の欠けにとどまっている | ガラスの内部まで白く濁る、車内側からも見える |
| 過去の修理歴 | 初めての傷 | 一度リペアした箇所が再び傷んだ |
断っておくと、リペアの可否に法令で定められた一律の基準はありません。上の表も実務上の目安です。「大きさ」「縁からの距離」「デフロスターの風」の3点は損害保険会社が公式に挙げているもので、傷の深さと修理歴は施工事業者が一般に見ている点になります。
基準そのものが事業者ごとに幅がありますから、右の列に寄っていても諦めることはありません。見てもらったらリペアできた、という例は普通にあります。
大きさ:500円玉で隠れるかどうか
傷が大きいほど、樹脂を注入しても元の強度を回復しきれません。500円玉というのは、傷全体をコインで覆い隠せるかどうかという意味です。中心の欠けが小さくても、そこから放射状にヒビが伸びていれば、その端までを含めた大きさで判断します。
位置:ガラスの縁から10cm以内と視界の正面は交換になりやすい
ガラスの縁は、走行中の車体のねじれによる力が集中する場所です。ここに傷があると、リペアしても走行中の振動でヒビが伸びやすく、多くの業者が交換を勧めます。
視界の正面も事情は同じです。リペアには跡が残りますから、運転者の視線が通る位置に補修跡があると、かえって見づらくなることがあります。デフロスターの温風が直接当たる場所も、内外の温度差が大きくなるぶんヒビが進行しやすくなります。
深さ:中間膜まで達していれば交換
車のフロントガラスは、2枚のガラスで樹脂の中間膜を挟んだ「合わせガラス」です。傷が外側のガラス層でとどまっていればリペアの対象になりますが、中間膜まで達している場合は強度が回復しないため、一般に交換が必要とされます。
目安としては、ガラスの内部まで白く濁って見える、車内側からも傷が見える、といった場合は深くまで達している可能性があります。なお、指でなぞって確かめるのは逆効果です。傷を広げかねません。最終的な判定は事業者に任せましょう。
傷のタイプで、直しやすさが変わる
飛び石の傷は、施工事業者の間で形状ごとに次のように呼び分けられています。公的な分類ではありませんが、直しやすさの見当をつける材料になります。
表②:傷のタイプ別 リペア可否の目安
| タイプ | 見た目 | リペアの可否 |
|---|---|---|
| チッピング | 小さな点状の欠け | もっとも直しやすい傾向 |
| ブルズアイ | 円形に白く濁った傷 | 直しやすい傾向 |
| スターブレイク | 中心から放射状にヒビが伸びる | 範囲次第。伸びていれば難しい傾向 |
| コンビネーション | 円形と放射状が混在 | 業者の判断が分かれやすい |
| クラック(線状のヒビ) | 線状に長く伸びたヒビ | 交換になりやすい傾向 |
線状のヒビは、いま短くても走行中の振動と温度変化でじわじわ伸びていきます。「昨日より長くなった気がする」というのは気のせいではありません。
リペアしても、傷跡は完全には消えない
リペアは強度と気密性を戻す作業であって、傷を見えなくする作業ではありません。仕上がりは業者の腕によりますが、うっすら跡が残るのが普通です。
見た目を元どおりにしたいなら交換するしかありません。ただ、そのために10万円以上を出すかどうかは別の判断になります。
修理・交換にかかる費用と時間の相場
フロントガラスの価格に公的な統計はありません。以下は保険会社や修理事業者が公表している金額を集めた目安で、車種やガラスの仕様、依頼先によって上下します。
表③:修理方法別の費用・時間の目安
| 修理方法 | 費用の目安 | 作業時間の目安 |
|---|---|---|
| リペア(部分補修) | 1万5,000円前後(傷の状態により上振れします) | 30〜60分程度 |
| ガラス交換 | 5万〜25万円程度 | 数時間〜1日程度 |
| エーミング(別途) | 1箇所につき1万〜2万円程度 | 交換作業に上乗せ |
リペアなら待っている間に終わります。交換となると車を預けることになり、代車の手配も考えなければなりません。
先進運転支援システム(ADAS)搭載車は「エーミング」の費用が上乗せされる
衝突被害軽減ブレーキや車線逸脱警報などのADAS(先進運転支援システム)を積んだ車は、フロントガラスの内側にカメラが付いています。ガラスを交換するとカメラの位置がわずかにずれるため、「エーミング」と呼ばれる光軸・認識範囲の再調整が必要になります。
損害保険会社の公式解説では、この費用を1箇所につき1万〜2万円程度としています。近年の車ほど、ガラス代に加えてこの調整費用が乗るため、交換の総額は上がりやすくなっています。見積書にエーミングの項目が入っているかは、その場で確かめてください。抜けていると、後から金額が動きます。
純正ガラスと社外ガラスで価格が変わる
同じ車種でも、自動車メーカー純正のガラスと社外品では価格差が出ます。断熱・遮音といった機能が付いた高機能ガラスであれば、さらに上乗せされます。交換費用が5万円から25万円程度という幅を持つのは、この違いによるものです。
社外品は品質にばらつきがあると言われることもありますが、国内の主要メーカー品なら実用上の問題は生じにくく、費用を抑えたいときの現実的な選択肢です。メーカー保証や車両保険の扱いで条件が付くケースもあります。保証期間中ならディーラーに、保険を使う予定なら保険会社に、社外品でも問題ないかを先に聞いておきましょう。
そして、ここで出た金額が保険を使うかどうかの判断をほぼ決めます。リペア相当なのか交換相当なのかで、答えは別物になるからです。
飛び石で保険料が上がるのが気になるなら、更新のタイミングが見直しの機会になります。同じ補償条件でも、保険会社を変えれば保険料が下がることがあります。
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どこで修理するのが正解か:ディーラー・専門店・カー用品店・DIY
飛び石の修理を頼める先は大きく4つあります。同じ作業でも費用もスピードも保証も違いますから、何を優先するかで行き先が変わります。
表④:修理を依頼できる4つの選択肢(費用・スピードは傾向)
| 依頼先 | 費用 | スピード | 品質・保証 | 車両保険での修理 | ADASのエーミング | 向いている人 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| ディーラー | 高め | 遅め(数日〜) | 純正部品・保証が手厚い | 対応可 | 対応可 | 純正部品とメーカー基準を重視する人 |
| ガラス専門店 | 店舗による | 速い(当日対応も) | リペアの施工実績が多い | 対応可 | 店舗に要確認 | 費用とスピードを比べて選びたい人 |
| カー用品店 | 店舗による | 予約制で当日〜 | 店舗による差がある | 店舗に要確認 | 店舗に要確認 | 身近な店舗で相談したい人 |
| DIY(市販キット) | 数千円程度 | 即日 | 失敗のリスクが大きい | 対象外 | 対象外 | 基本的には非推奨 |
ディーラーは純正部品とメーカー基準を重視したい人向け
純正ガラスを扱い、メーカー基準に沿った修理を相談できるのがディーラーの利点です。他の整備とまとめて任せられる手軽さもあります。ただしガラス作業そのものは外部の専門業者に委託していることがあり、その場合は手数料が乗ります。安全側に振って、リペアで足りそうな傷でも交換を提案されることもあります。
見積もりを取ったら、ガラス専門店にも同じ傷を見てもらうと判断材料が増えます。
ガラス専門店は出張修理まで頼めるが、エーミングは業者しだい
出張修理まで頼めるのが専門店の強みで、車を持ち込まずに駐車場で作業してもらえることもあります。ただしADAS搭載車のエーミングに対応できるかは業者によって差があり、該当する車なら問い合わせの段階で聞いておく必要があります。
リペアの施工件数が多いぶん、短時間で終わることも多いようです。価格は地域や店舗、傷の状態で変わります。2〜3社に出してもらうと相場感がつかめます。
カー用品店は予約制で、店舗により対応が違う
オートバックスやイエローハット、ジェームスといったカー用品店でも飛び石のリペアを扱っています。ただし全店共通のサービスではなく、店舗ごとに設備も対応可否も違います。料金も店舗ごとの設定で、公式サイトに載っていないことがほとんどです。行ってから断られる例も珍しくありません。
市販のDIYリペアキットは基本的に勧められない
カー用品店やネット通販で、数千円程度の補修キットが手に入ります(価格は製品によって異なります)。樹脂を注入して紫外線で硬化させるという原理はプロの作業と同じですので、条件が揃えば直せないことはありません。
成功しやすいのは、ごく小さな点状の欠けで、ガラスの端から十分に離れている場合です。逆に、放射状にヒビが伸びたスターブレイク、線状のクラック、視界の正面にある傷は、素人の作業ではまず歯が立ちません。
失敗したときの代償が大きいところが問題です。注入した樹脂が中途半端に硬化すると、その後プロに依頼してもリペアを断られ、ガラス交換しか選べなくなります。数千円を節約して10万円以上の交換になっては意味がありません。少しでも迷う傷なら、業者に見せたほうが安く済みます。
飛び石傷を放置するとどうなる?車検・安全・費用への影響
「小さい点だし、視界の邪魔にもならないから」と放置している方は少なくありません。ただ、飛び石の傷は放っておいて自然に治るものではなく、時間とともに状況は悪くなる一方です。
ヒビは温度差と振動で進行する
真夏の炎天下に駐めた車内は高温になります。そこへエアコンを効かせれば、ガラスの内側と外側で大きな温度差が生まれます。冬場に凍ったガラスへお湯をかけるのも同じです。合わせガラスはこの温度差で膨張と収縮を繰り返し、傷を起点にヒビが伸びていきます。
走行中の振動、段差の乗り越え、ドアを強く閉めたときの衝撃も、すべてヒビを伸ばす方向に働きます。
視界を妨げると安全上のリスクになる
ヒビが伸びて視界にかかると、対向車のヘッドライトや西日がヒビの断面で乱反射します。とくに雨の夜、路面が光を返す状況では、ヒビ1本で見え方が変わります。ワイパーの拭き取り範囲にヒビが入ったら、見えにくくなっていると考えてください。
リペアで済んだはずの傷が交換になり、費用が大きく膨らむ
金額でいうと、これがいちばん大きな損です。発見した時点なら1万5,000円前後のリペアで済んだ傷でも、放置してヒビが広がればリペアができなくなり、5万〜25万円の交換に切り替わります。各社が繰り返し「早めに」と促す理由は、この差にあります。
車検の法的根拠は道路運送車両の保安基準 第29条
フロントガラスと車検の関係は、道路運送車両の保安基準 第29条に定められています。関係するのは次の2つの項です。
第2項では、前面ガラスについて「損傷した場合においても運転者の視野を確保できるものであり、かつ、容易に貫通されないものとして、強度等に関し告示で定める基準に適合するものでなければならない」と規定しています。
第3項が求めているのは、前面ガラス及び側面ガラスが「運転者の視野を妨げないものとして、ひずみ、可視光線の透過率等に関し告示で定める基準に適合するものでなければならない」という点です。
具体的な適合基準は、この条文から「道路運送車両の保安基準の細目を定める告示」に委任されています。
フロントガラスの飛び石は何cmまで車検に通る?法令に一律の数値基準はない
条文が求めているのは「運転者の視野を確保できること」「視野を妨げないこと」であって、傷の直径やヒビの長さについての数値基準は法令上どこにも定められていません。
インターネット上でよく見かける「1cmまでのヒビなら車検に通る」といった説明は、法令の基準ではなく検査の現場で語られる傾向値にすぎません。合否は傷の寸法そのものではなく、運転者の視野が確保されているか、視野を妨げるひずみがないかという保安基準への適合性で判断されます。傷の大きさが同じでも、位置が違えば結論は変わります。
実務上、問題になりやすいのは運転者の視野の範囲内にある傷です。ワイパーの拭き取り範囲、とりわけ運転席の正面にヒビがあれば、指摘を受ける可能性は高くなります。工場によっては安全側に振って、ヒビがあれば大きさを問わず不合格と判断することもあります。
リペア跡が残っていて指摘されることもある
リペア済みであっても、跡が視界の正面にはっきり残っていれば、視野を妨げると判断される余地は残ります。リペアしたから必ず通る、というものでもありません。
検査を受ける前に、整備工場かガラス専門店で現物を見てもらってください。その場でリペアできる傷なら数万円で済みますが、車検で不合格になってから対応すると、再検査の手間と費用が上乗せされます。車検全体の流れについては12カ月点検と車検の違いを解説した記事もあわせてご覧ください。
飛び石を飛ばした相手に修理費を請求できるか
自分に落ち度がないのに費用を負担するのは納得しづらいところです。前を走っていたトラックが原因なら、その相手に請求できないのかという疑問は当然出てきます。
結論から言えば、現実にはほぼ不可能です。損害保険会社も公式に「基本的に、飛び石被害を相手に賠償してもらうことは困難です」と説明しています。
相手の特定、因果関係、過失。すべて自分で証明することになる
損害賠償を請求するには、まず相手を特定しなければなりません。高速道路で前を走っていた車のナンバーを覚えているケースは稀ですし、覚えていたとしても次の2つのハードルが残ります。
ひとつは因果関係です。その車が跳ね上げた石が、自分のガラスに当たったことを証明しなければなりません。加えて相手の過失も要ります。タイヤの溝に挟まった小石が遠心力で飛ぶのは通常の走行に伴う現象で、運転者に落ち度があったとは通常認められません。
ドライブレコーダーがあっても認められにくい
前方を録画していれば相手のナンバーは記録できます。ただ、走行中に跳ねた小石そのものが映像に映ることはまずありませんし、映っていたとしても「その石が当たった」ことまでは証明できません。
工事現場から石が飛んできた、積載物が落下した、といった原因のはっきりしたケースなら話は別ですが、通常の飛び石ではまず難しいでしょう。
現実には、自分の車両保険を使うかどうかの判断になる
費用を誰かに負担してもらう道は、事実上閉ざされています。残る選択肢は「自費で直す」か「自分の車両保険を使う」かの二択です。
飛び石によるフロントガラスの損傷に車両保険は使えるのか
飛び石による損傷は、車両保険の補償対象です。
「飛来中・落下中の他物との衝突」に該当する
車両保険の約款では、補償される事故の類型として「飛来中または落下中の他物との衝突」が挙げられています。走行中に跳ね上げられた小石がガラスに当たるのは、まさにこれに該当します。
車両保険そのものの補償範囲については車両保険で補償される範囲とはで整理していますので、あわせてご確認ください。
一般型でもエコノミー型でも補償される
車両保険には、補償範囲の広い「一般型」と、範囲を絞って保険料を抑えた「エコノミー型(車対車+A、限定タイプなどとも呼ばれます)」があります。飛び石はどちらのタイプでも補償されます。
複数の損害保険会社が公式に、「一般タイプ」「限定タイプ」のいずれでも車両保険で補償される、「飛び石はどちらのタイプでも補償を受けることができる」と説明しています。
エコノミー型は単独事故や当て逃げが補償されないタイプですので「飛び石も対象外では」と考えてしまいがちですが、飛び石は補償対象に含まれています。両タイプの違いは車両保険の一般型とエコノミー型、どちらを選べばよいかで詳しく扱っています。
ただし、補償タイプの名称や細かい条件は保険会社・商品によって異なります。ご自身の契約が対象になるかは、約款か保険会社への確認で最終的に判断してください。
補償されないケース
逆に、次のような場合は保険金が支払われません。
- そもそも車両保険を付けていない(対人・対物賠償だけの契約になっている)
- 経年劣化による傷や、契約前から存在していた傷
- 契約者や運転者の故意による損傷
- 契約内容の告知に事実と異なる点があった
保険金が支払われないケース全般については自動車保険が降りないケースとはで整理しています。
修理費が免責金額以下なら、そもそも保険金は出ない
車両保険には「免責金額(自己負担額)」が設定されていて、修理費のうちこの金額までは自分で負担します。ここを確認しないまま話を進めると、判断そのものが成り立ちません。
損害保険会社の公式説明でも「修理費用が免責金額を下回っている場合は、保険が使えないので全額自己負担となります」と明記されています。免責金額を5万円に設定している契約で、リペア費用が2万円だった場合、保険金は1円も出ません。まず自分の契約の免責金額がいくらかを確認してください。
免責金額をいくらに設定すべきかという考え方は車両保険の免責金額とは?自己負担額はいくらにしたらよいかで解説しています。
保険を使うと等級はどうなるか
補償の対象であることと、使ったほうが得であることは別の話です。
飛び石は「1等級ダウン事故」になる
自動車保険の事故は、翌年の等級への影響によって3種類に分かれます。飛び石による損害で車両保険金が支払われた場合、一般に「1等級ダウン事故」として扱われます。
損害保険会社の公式FAQでも「飛び石による車両損害は『1等級(事故有係数適用期間を含みます。)ダウン事故』になります」「現在10等級の場合は、車両保険を使うと次契約は9等級(事故有係数適用期間を含みます。)でのご契約となります」と説明されています。同様の説明は大手損保4社の飛び石に関する公式ページで確認でき、保険会社によって扱いが変わるものではありません。
表⑤:等級ダウン事故の種類と影響
| 種類 | 翌年の等級 | 事故有係数適用期間 | 主な事故の例 |
|---|---|---|---|
| 3等級ダウン事故 | 3つ下がる | 3年加算 | 対物・対人事故、単独事故、当て逃げ |
| 1等級ダウン事故 | 1つ下がる | 1年加算 | 飛び石、盗難、いたずら、落書き、台風・洪水などの自然災害 |
| ノーカウント事故 | 1つ上がる(無事故と同じ扱い) | 加算なし | 人身傷害保険のみの利用、弁護士費用特約のみの利用など |
飛び石が1等級ダウンにとどまるのは、運転者の側では避けようがない事故だからだと説明されることがあります。
「等級が下がらない」は誤解。ただし3等級ダウンよりは軽い
「飛び石なら等級は下がらない」という説明を目にすることがありますが、これは正確ではありません。1等級は下がります。
とはいえ、対物事故などの3等級ダウンに比べれば影響は小さく、翌年を無事故で過ごせば元の等級に戻ります。等級の数字だけを見るなら、1年分の足踏みで済む計算です。
効いてくるのは、等級より「事故有係数」のほう
負担増の正体は、等級が1つ下がることそのものではなく、同時に加算される「事故有係数適用期間」です。この期間中は、同じ等級でも割引率が大きく下がります。
表⑥:試算に用いる4等級の割増引率
| 等級 | 無事故のときの割引率 | 事故有のときの割引率 |
|---|---|---|
| 8等級 | 38%引 | 15%引 |
| 12等級 | 50%引 | 22%引 |
| 15等級 | 53%引 | 28%引 |
| 20等級 | 63%引 | 51%引 |
損害保険料率算出機構が公表している参考純率の割増引率です。15等級で見ると、53%引だった割引が28%引まで落ちます。この状態が1年続きます。なお、実際の割増引率は保険会社によって異なります。
1等級から20等級までの一覧と等級制度そのものの仕組みは自動車保険の等級とは?初心者でも分かりやすく解説にまとめています。
保険を使うべきか:等級の差が消えるまでの負担で決める
判断式は「修理費 − 免責金額 > 将来の保険料増額」
保険を使って実際に手元に入るのは、修理費から免責金額を引いた分だけです。代わりに、翌年から保険料が上がります。この2つを並べて、前者が大きければ使ったほうが得、小さければ自費で直したほうが得になります。
式は単純ですが、右辺の「将来の保険料増額」がいくらになるのかは分かりにくいところです。この部分を少なく見積もっている解説もよく見かけます。
負担は「事故有係数の1年」では終わらない
飛び石で保険を使った場合、事故有係数適用期間は1年で切れます。この1年だけを見て「影響は1年で終わる」と受け取ると、計算が合いません。
使わなければ1つ上がるはずだった等級が、逆に1つ下がる。つまり使った場合と使わなかった場合では、2等級分の差が生まれます。事故有係数は1年で消えても、この2等級分の差は、両方が20等級に届くまで残り続けます。
表⑦:現在15等級の人が飛び石で保険を使った場合の等級の推移
| 経過年数 | 保険を使わない場合 | 保険を使った場合 |
|---|---|---|
| 1年後 | 16等級 | 14等級(事故有係数適用) |
| 2年後 | 17等級 | 15等級 |
| 3年後 | 18等級 | 16等級 |
| 4年後 | 19等級 | 17等級 |
| 5年後 | 20等級 | 18等級 |
| 6年後 | 20等級 | 19等級 |
| 7年後 | 20等級 | 20等級(ここで差が解消) |
15等級の人で7年、12等級なら10年、8等級だと14年かかって、ようやく差が消えます。3年で区切った試算は、この後半をまるごと取りこぼしています。
等級帯別・保険料水準別に負担増を試算する
参考純率の割増引率を使って、保険を使った場合と使わなかった場合の保険料の差を積み上げてみます。3年で区切った数字と、等級の差が解消するまで積み上げた数字を並べています。
表⑧:保険を使った場合の保険料の負担増
| 現在の等級 | 年間保険料 | 3年間での差額 | 差が解消するまで | 解消までの累計差額 |
|---|---|---|---|---|
| 8等級 | 4万円 | 約2.7万円 | 14年 | 約4.8万円 |
| 8等級 | 6万円 | 約4.1万円 | 14年 | 約7.2万円 |
| 8等級 | 8万円 | 約5.4万円 | 14年 | 約9.6万円 |
| 12等級 | 6万円 | 約4.2万円 | 10年 | 約6.7万円 |
| 15等級 | 4万円 | 約2.8万円 | 7年 | 約4.1万円 |
| 15等級 | 6万円 | 約4.2万円 | 7年 | 約6.1万円 |
| 15等級 | 8万円 | 約5.6万円 | 7年 | 約8.2万円 |
| 20等級 | 4万円 | 約1.4万円 | 2年 | 約1.4万円 |
| 20等級 | 6万円 | 約2.1万円 | 2年 | 約2.1万円 |
| 20等級 | 8万円 | 約2.8万円 | 2年 | 約2.8万円 |
20等級の人ほど、負担増が小さくなる
20等級の行だけ、数字の傾向がはっきり違います。年間保険料6万円で比べると、8等級は約7.2万円、15等級は約6.1万円の負担増。これに対して20等級は約2.1万円と、3分の1以下にとどまります。
理由は、20等級が等級の上限だからです。8等級の人が保険を使わなければ翌年9等級、翌々年10等級と上がっていきますが、20等級の人はもともと上がる余地がありません。保険を使って19等級に落ちても、翌年には20等級に戻り、そこで差が解消します。失うものが少ないぶん、負担増も小さくなるわけです。
長年無事故で等級を上げてきた人ほど「せっかくの20等級を崩したくない」と考えがちですが、金額の上では逆です。高等級の人のほうが、保険を使いやすい側にいます。
もっとも、実際の判断は免責金額や現在の保険料、保険会社ごとの料率、今後も契約を続ける予定かどうかでも変わります。最後はご自身の契約条件しだいです。
免責金額をいくらに設定しているかで結論が変わる
もう1つの変数が免責金額です。表⑧の負担増に免責金額を足した金額が、保険を使う価値が出る「損益分岐点」になります。
表⑨:損益分岐となる修理費の目安(年間保険料6万円・解消までの累計ベース)
| 現在の等級 | 免責金額0円 | 免責金額5万円 | 免責金額10万円 |
|---|---|---|---|
| 8等級 | 約7.2万円超 | 約12.2万円超 | 約17.2万円超 |
| 12等級 | 約6.7万円超 | 約11.7万円超 | 約16.7万円超 |
| 15等級 | 約6.1万円超 | 約11.1万円超 | 約16.1万円超 |
| 20等級 | 約2.1万円超 | 約7.1万円超 | 約12.1万円超 |
修理費がこの金額を上回るなら、保険を使ったほうが手元に残るお金は多くなる計算です。免責金額を10万円に設定している契約なら、リペアはもちろん、10万円台のガラス交換でも自費のほうが有利になります。
ただし、この表が見ているのは金額だけです。事故有係数適用期間中に別の事故を起こせば影響はさらに膨らみます。
迷ったら、この順番で決める
表はあくまで目安です。実際の保険料は保険会社ごとの料率で決まりますので、最後は自分の契約で確かめるのが確実です。
- 修理費を確定する — リペアか交換かで見積もりを取る。ADAS搭載車ならエーミング費用も含めてもらう
- 免責金額を確認する — 保険証券か契約者ページで確認する。修理費が免責金額以下なら、その時点で保険を使う選択肢は消えます
- 保険会社に将来の保険料を試算してもらう — 「今回保険を使った場合」と「使わなかった場合」の次回以降の更新保険料を出してもらう
そのうえで「修理費 − 免責金額」と「3で出た保険料の差」を比べれば、自分の条件での答えが出ます。
1. 今回の飛び石は補償の対象になりますか 2. 私の契約の免責金額はいくらですか 3. 保険を使うと、翌年の等級と事故有係数適用期間はどうなりますか 4. 保険を使った場合と使わなかった場合で、次回以降の更新保険料はいくらになりますか 4番目まで聞ければ、損得の判断材料はそろいます。連絡した時点では等級は下がりませんから、遠慮する必要はありません。
結論の目安
以上を実際の修理費に当てはめると、こうなります。
- リペアで済む1〜3万円程度:自費で直したほうが得になるケースが大半です。ただし免責金額0円で高等級といった条件では結論が変わることもあります
- ガラス交換で10万円前後:免責金額と等級で結論が分かれる帯です。表⑨の損益分岐点と見積額を突き合わせてください
- ガラス交換で20万円以上:保険を使ったほうが得になりやすい帯です
損害保険会社の公式解説でも、修理費が数万円以内なら保険を使わない方がよく、10万円を超えるような場合は保険を使ったほうが有利なケースが多いとされています。試算結果ともおおむね一致します。
保険を使うと決めたあとの手続きの流れ
- 保険会社の事故受付窓口に連絡する
- 修理工場やガラス専門店で見積もりを取る
- 保険会社による内容の確認・鑑定を受ける
- 修理を実施し、保険金が支払われる
注意したいのは、保険会社への連絡より先に修理を済ませてしまうことです。損傷の状況を保険会社が確認できなくなるため、必要な書類が増えたり、調査の方法が変わったりすることがあります。写真や見積書で対応できるケースもありますが、保険を使う可能性があるなら、修理より先に一報を入れてください。
なお、保険会社に連絡して相談しただけでは等級は下がりません。等級に影響するのは、実際に保険金が支払われた場合です。使うかどうか迷っているなら、まず連絡して、修理費と免責金額を確認したうえで決めても遅くはありません。
車両保険そのものを見直すきっかけにもなる
飛び石をきっかけに「そもそも車両保険は必要なのか」と考える方もいます。車両保険を付けると保険料は上がりますし、いざ使えば等級も下がります。それなら外してしまおう、という発想です。
車両の年式や資産価値、貯蓄の状況によって答えは変わります。車両保険はいらない?必要になる基準と保険料削減術を判断材料にしてください。更新のタイミングで他社の見積もりを取ってみると、同じ補償内容でも保険料に差が出ることがあります。
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飛び石をできるだけ避けるための走り方
前を走る車と、路面の状態。この2つでリスクはかなり変わります。
大型車の直後と未舗装路・工事区間を避ける
飛び石の多くは、前を走る車のタイヤの溝に挟まった小石が、回転の遠心力で後方へ飛ぶことで起きます。タイヤが大きく溝も深い大型トラックやダンプカーの直後は、それだけ発生しやすい位置です。
- 大型車や工事車両の直後を長く走らない。追い越すか、車線を変える
- 高速道路では車間距離を普段より長めに取る。石は距離が離れるほど勢いを失う
- 未舗装路や工事区間、砂利が浮いた路肩寄りの車線を避ける
- 冬場、凍結防止剤の粒が残っている区間も石が跳ねやすい
ガラス用プロテクションフィルムという選択肢
フロントガラスに貼る透明の保護フィルムも市販されています。飛び石の衝撃を吸収し、ガラスに達する前に受け止めるという考え方の製品です。
ただし相応の施工費用がかかりますし、可視光線透過率の基準を満たさない製品を貼れば保安基準に抵触します。適合するかどうかは製品表示だけでは判断できず、施工の状態にも左右されます。貼るなら、適合を確認できる専門業者に相談するのが前提になります。
まとめ
まず、その傷がリペアで直るかどうかを見てください。500円玉で隠れる大きさで、ガラスの縁から10cm以上離れていて、運転席の正面を外れていれば、1万5,000円前後で直せる見込みがあります。どれか1つでも外れると交換になり、金額は5万〜25万円に跳ね上がります。
そして、この判定は待つほど不利になります。ヒビは温度差と振動で伸びるので、いまリペアできる傷が来月には交換しか選べなくなっていることもあります。車検についても、法令に「何cmまで」という基準はなく、運転席の正面にヒビがあれば通らないことがあります。早めに見てもらってください。
保険が使えるかどうかは心配いりません。飛び石は一般型でもエコノミー型でも補償の対象です。考えるべきなのは、使うと保険料がいくら上がるかのほうです。
ここは1等級ダウンという言葉だけで判断すると読み違えます。使えば1つ下がり、使わなければ1つ上がるので、差は2等級。事故有係数が切れたあとも、この差は20等級になるまで消えません。年間保険料6万円なら合計で6万〜7万円ほど、すでに20等級の人なら2万円ほど余分に払う計算になります。
そのうえで目安を示すと、リペアで済む金額なら自費、20万円以上の交換なら保険、その間は免責金額と等級しだいです。修理費が免責金額より安ければ保険金は出ませんので、自分の免責金額だけは先に確認しておいてください。
いちばん確実なのは、保険会社に「使った場合」と「使わなかった場合」の来年の保険料を聞くことです。相談しただけで等級は下がりません。
フロントガラスの飛び石と自動車保険に関するよくある質問
投稿者プロフィール
- 経歴:大手損害保険会社に勤務後、弁護士事務所で秘書として交通事故訴訟の調査に従事





