個人賠償責任保険は本当に必要?支払い事例と補償範囲を解説

自動車保険などに用意されている「個人賠償責任保険」をご存じでしょうか。
日常生活の中で賠償責任を負うトラブルが起きてしまった際に、保険会社が支払いを行ってくれる保険です。
自動車保険には個人賠償責任保険、個人賠償責任補償特約などの名称で用意されており、付帯に迷われる方は多いでしょう。

そこで、本記事では個人賠償責任保険の支払い事例、補償範囲などを紹介し、本当に加入が必要か詳しく解説します。

この記事をまとめると

  • 個人賠償責任保険は日常生活のトラブルを補償
  • 1つ加入すれば家族の補償もできる
  • 高額の支払いにも対応できる
  • 加入時には重複に注意する必要がある
  • 支払限度額も確認した上での加入がおすすめ

個人賠償責任保険とは?補償内容を解説

個人賠償責任保険は自動車保険、火災保険等に用意されている補償であり、日常生活のさまざまなトラブルに備えて加入するものです。
自動車保険では強制加入の補償ではないため、オプション設定となっておりご自身で加入の有無を決めます。

この章では本保険の補償内容について詳しく解説します。

補償される内容とは

個人賠償責任保険で受けられる補償内容は「自動車事故以外」が対象であり、日常生活で起きたトラブルで、他人にケガをさせたり、他人の所有物を損壊してしまった場合に保険会社側が補償を相手方へ支払います。

自動車保険では多くの交通事故に関して保険会社側の示談交渉サービスが受けられますが、個人賠償責任保険でも同様に、保険会社側が示談交渉を担ってくれます。
「損害を与えてしまった、どうしよう」というケースでも、保険会社が解決までアシストしてくれるため安心です。

支払い事例は後述します。

加入すると補償が受けられる人とは

自動車保険に用意されている個人賠償責任保険の場合、加入することで以下の人が補償を受けることが可能です。

    ■自動車保険における個人賠償責任保険で補償が受けられる人

  • 記名被保険者
  • 記名被保険者の配偶者(内縁、同性パートナー含む)
  • 記名被保険者の同居の子や親族
  • 記名被保険者の別居の未婚の子

なお、別居の既婚の子や別居の親族は対象外です。
加入できる記名被保険者は個人に限定されています。

参考URL:ソニー損保
個人賠償特約

補償の対象外となるケースに注意が必要

さまざまなトラブルに備えられる個人賠償責任保険ですが、以下のような事例では補償が対象外となるため注意も必要です。

《① 自動車運転中や停車中などに与えてしまった損害》
例として、自動車を降りる際に自車のドアを隣の自動車にぶつけてしまったり、走行中に店舗へぶつけてしまったような事例では、個人賠償責任保険ではなく対物賠償責任保険の補償対象です。

《② 業務中の損害》
個人賠償責任保険は個人の日常生活におけるトラブルに備えるものであり、業務中に発生させたトラブルは対象外です。たとえば、アルバイト中に店舗の商品を誤って壊してしまった場合は補償されません。

《③ 自然災害など不可抗力による事故》
強風で家屋から飛んでしまった屋根がぶつかった、大雪で壊れた壁が隣家を壊してしまったなど、自然災害によるトラブルも個人賠償責任保険の対象外です。

《④ 同居のご家族や、借りている物への損害》
同居家族のメガネを誤って踏んでしまった、友人から借りている漫画を汚損してしまったなど、同居家族への損害や借りている物への損害も補償の対象外です。

どのようなトラブルで補償されるのか?主な支払い事例と自転車事故への対応

個人賠償責任保険は実に広範囲にわたるトラブルに備えられるため、自動車保険に加入する際には押さえておきたい保険・特約です。
では、実際にどのようなトラブルが起きた時に補償が行われているでしょうか。

この章では支払い事例3選と自転車事故への対応を紹介します。

主な支払い事例3選

『① 子どもがうっかりトラブルを起こしてしまったケース』
よくある支払い事例には「子どものトラブル」が挙げられます。
例として以下のようなケースは個人賠償責任保険の対象となり、保護者の個人賠償責任保険から補償可能です。

  • 子どもがキャッチボールをしていたら、民家のガラスを割ってしまった
  • 子どもがお店の商品にいたずらし、壊してしまった
  • 子どもが遊具施設遊んでいたところ、誤って遊具を壊してしまった

ただし、近年増加している学校から貸与されているパソコン、タブレットへの損壊は対象外となる可能性が高いため注意が必要です。(借りている物に該当するため)

『② ペットがトラブルを起こしたケース』
大切なご家族として飼育されているペットが起こしたトラブルは、飼い主が賠償責任を負うため個人賠償責任保険の補償対象です。

  • 飼い犬が散歩中に、通行中の人を噛んでしまった
  • 飼い猫が子どもの友人をひっかいてしまいケガをさせた
  • 飼い犬がドッグランの中にいる他人を威嚇し、転倒させケガを負わせた

『③ スポーツ中にケガや物への損壊を起こしたケース』
サッカーや野球など、スポーツを楽しんでいる際に起きてしまったトラブルも補償ができます。
なお、一般的な行為がたまたま損害に発展してしまった場合は対象外となるため、保険会社への確認が必要です。

  • 道路でサッカーを楽しんでいたらボールが通行人にあたってしまった
  • スケートボードの板を持って歩いていたところ、見知らぬ人のスマホにあたり壊してしまった
  • ジムでランニング中にシューズの紐がマシンに絡んでしまい、マシンを損壊させた

この他に、自転車によるトラブルにも備えることができます。詳しくは次に解説します。

個人賠償責任保険は自転車事故にも備えられる

自転車を運転中にトラブルを起こしてしまうケースは決して少なくありません。
自動車保険の個人賠償責任保険は、自転車乗車中のトラブルも補償対象です。

  • 子どもが自転車を運転中に加速してしまい、歩行者にぶつかってしまった
  • 自転車を運転している際に、誤って停車中の自動車にぶつけてしまった
オススメの記事

【自転車事故】について詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にして下さい。
自動車保険の自転車特約とは?家族も補償される?詳しく解説

このような自転車事故の事例にも対応できます。
自転車については近年自転車保険の加入義務化が進んでおり、多くの自治体が加入を義務化しています。
個人賠償責任保険への加入がある場合は補償が用意できているため、相手への補償を用意する場合は自転車保険への加入は不要です。

義務化対象エリアについては、下記国土交通省のリンクをご確認ください。

参考URL:国土交通省
自転車損害賠償責任保険等への加入促進について

自転車保険との違いには注意!

自転車保険と個人賠償責任保険は、トラブルの「相手方」への補償は重複しているためどちらかに加入していれば問題ありません。
しかし、自転車保険との違いは「自転車運転者」への補償が挙げられます。

個人賠償責任保険はあくまでもトラブルの相手方への補償であり、自転車運転中の自分のケガへの補償ではありません。
自転車保険は自身のケガや死亡時への補償と、個人賠償責任分野がセットとなっています。もしも自転車運転者へのケガにも備える場合には、搭乗中以外も補償する人身傷害保険や、別途傷害保険への加入が必要です。

  • 人身傷害保険…自動車保険の補償の1つ。搭乗中以外の補償も可能、搭乗中のみ担保なら自転車は対象外となるため注意
  • 傷害保険…損害保険の一種として販売されている。ケガ、死亡に備える保険で、入通院や治療費等を補償、自転車乗車中も対象。

自動車保険で個人賠償責任保険へ加入するメリットとは?

個人賠償責任保険は幅広く日常生活のトラブルに備えられるため、非常に魅力的です。
しかし、自動車保険で加入する際には、費用や等級が気になる人も多いでしょう。

そこで、この章では自動車保険加入時に個人賠償責任保険もセットで加入するメリットについて考察します。

高額な損害賠償に備えられる

日常生活のトラブルは小さな金額の賠償責任で終わるとは限りません。高額の賠償に発展するケースもあります。
特に自転車による事故は、高額賠償事例が多く、以下の事例が広く知られています。

《神戸地裁2013年7月4日判決》
11歳の少年が夜間に自転車走行中、62歳の女性に衝突。女性は頭蓋骨を骨折し、意識が戻らない状態となった。
神戸地裁は少年側へ9,521万円の賠償金の支払いを命じた。

《高松高裁2020年7月22日判決》
男子高校生が無灯火・イヤホンで音楽を聞きながら自転車を走行していたところ、パトカーの追跡から逃走、職務質問中の警官に衝突し頭蓋骨骨折を受傷。警察官はその2か月後に死亡した。
高松高裁は高校生側へ9,330万円の支払いを命じた。

このように、自転車事故の事例では、約1億円近い高額賠償が発生しています。
個人賠償責任保険に加入しておけば、こうした高額の賠償責任にも備えることが可能です。
参考URL:日本損害保険協会
一般社団法人 日本損害保険協会 知っていますか自転車事故の実態と備え(2024年8月版)PDF

家族のトラブルに備えられる

自動車保険に用意されている個人賠償責任保険は、すでに補償の対象となる人をご紹介したとおり、同居しているご家族と別居の未婚の子が補償範囲です。
1つの保険でご家族のトラブル全般に備えることができます。

等級はダウンしない

自動車保険では対人・対物補償や車両保険を利用すると、翌年に3等級ダウンします。また、飛石によるフロントガラスの破損などのケースでは1等級がダウンします。
では、個人賠償責任保険から支払いを受けるとどうなるでしょうか。

個人賠償責任保険は等級ダウンの対象外事故のため、使用しても等級がダウンすることはありません。
等級が気になって加入を避けている方は、この機会に加入を検討してみましょう。

保険料は比較的安価

個人賠償責任保険は自動付帯ではないため、加入する際にはオプション料を支払う必要があります。しかし、補償対象も広く、等級もダウンしない保険(特約)ですが、保険料はおおよそ2,000~3,000円程度に留まります。
個人賠償責任保険単体で加入するよりも安い傾向があるため、お得と言えるでしょう。

参考URL:あいおいニッセイ同和損保
【自動車】日常生活賠償(受託物賠償追加型)特約の保険料は年間いくらですか
参考URL:ソニー損保
個人賠償特約 「個人賠償特約」はいくらで追加することができるの?

トラブル発生!個人賠償責任保険の利用の流れ

日常生活の中でトラブルを起こしてしまった場合、個人賠償責任保険を利用することがおすすめです。
では、実際に利用する際にはどのような流れで保険金が支払われるのでしょうか。

この章では事故後の流れについて詳しく解説します。

事故から支払いまでの流れ

個人賠償責任保険から保険金の支払いを受ける流れは以下です。

  • ① トラブル発生後、速やかに個人賠償責任保険加入先の保険会社へ事故報告
  • ② 保険会社から必要書類が発送される
  • ③ 必要に応じて示談交渉が行われる
  • ④ 示談締結、支払いに必要な書類の提出
  • ⑤ 保険金(賠償金)が相手方へ支払われる

保険金の支払いの流れは、一般的な交通事故のケースと同じです。トラブルの相手方が入通院をしている場合、治療が完了した後に保険金が支払われます。
トラブルが発生したら速やかに個人賠償責任保険に加入している保険会社へ連絡し、解決に向けた準備を始めましょう。なお、事故受付後は、保険会社側にて個人賠償責任保険の支払い対象かどうか審査が行われます。

示談交渉における注意点

トラブルを起こしてしまった場合、時に示談交渉を行う必要があります。しかし、保険会社によっては示談交渉のサービスを付けていない個人賠償責任保険もあります。
加入時にはサービスの有無を確認することがおすすめです。
示談交渉サービスがない場合、示談書の取り付け等はご自身で行う必要があります。

加入前に確認しよう!個人賠償責任保険の重複や途中加入とは

個人賠償責任保険に関心を深めたら、さっそく加入を検討しましょう。
では、加入時に押さえておきたい保険の選び方とはどのようなものでしょうか。

補償の重複に注意が必要

個人賠償責任保険はすでに解説のとおり、記名被保険者の同居家族・別居の未婚の子をカバーできる保険です。つまり、同居している家族が1つ加入しておけば、補償が受けられることになります。
ご家族の自動車保険や火災保険などに、すでに個人賠償責任保険が付いている場合は、追加で加入すると補償が重複し、保険料の過払い状態が発生します。
複数の個人賠償責任保険に加入しても、保険金が二重に支払われることはありません。
加入の際にはご家族に声をかけ、すでに加入していないか確認しましょう。

    ■重複を確認する時のポイント

  • 自動車保険以外にも、火災保険や傷害保険などに個人賠償責任保険、特約が付帯されていることがあります。クレジットカードに付帯されていることがあるため、漏れなく確認しましょう。
  • 重複が見つかった際には、補償範囲が異なっている場合は残した方が良いケースもあります

途中加入を希望する場合

個人賠償責任保険に現在加入しておらず、自動車保険の更新をまだ迎えていない場合は、各保険会社によりますが更新前でも多くの自動車保険では「途中加入」が可能です。ただし、お手続きは代理店型とダイレクト型で異なります。

  • 代理店型…代理店に個人賠償責任保険の途中加入を伝える
  • ダイレクト型…ネット上でご自身の契約情報にアクセスし、異動の手続きを行う

ダイレクト型の例として、チューリッヒでは「契約内容の変更」画面にアクセスし、ご自身で手続きを進めます。

参考URL:チューリッヒ保険会社
保険期間の途中で個人賠償責任補償特約を追加で付帯できますか。

賢く加入!個人賠償責任保険の選び方

自動車保険だけではなく、火災保険などにも用意されている個人賠償責任保険ですが、実際に加入する際には保険内容を比較し、慎重に選ぶことをおすすめします。

この章では個人賠償責任保険の選び方を解説します。

補償の限度額を確認しよう

個人賠償責任保険は高額賠償に備えられますが、保険会社によって補償の「限度額」を設けています。
限度額を超える賠償については賠償責任を負っている方の自己負担となるため、できれば限度額は十分に比較されることがおすすめです。

例として、一部の保険会社の補償限度額を紹介します。(2025年2月現在)

『ソニー損保』
ソニー損保の自動車保険に用意されている個人賠償特約では、お支払いの限度額を1事故につき「3億円まで」としています。

『おとなの自動車保険』
SOMPOダイレクト(旧・セゾン自動車火災保険)の「おとなの自動車保険」では、お支払いの限度額を「無制限」としています。

『楽天損保』
楽天損保の「ドライブアシスト」では、お支払いの限度額を1事故につき「1億円まで」としています。

なお、限度額が設定されていても、保険料が低く抑えられていることも多いため、保険料もあわせて比較し、ご家族にあった個人賠償責任保険を決めることがおすすめです。

示談交渉サービスは「あり」がおすすめ

多くの自動車保険の個人賠償責任保険は「示談交渉サービス」が設定されていますが、別の保険やクレジットカードなどの個人賠償責任保険では、示談交渉サービスがないケースもあります。

トラブルの内容によっては、相手方への対応に苦慮することも多く、個人賠償責任保険に加入される場合は示談交渉があるものを選ぶと良いでしょう。
示談交渉に慣れている保険会社が丁寧に対応してくれます。

事故に備えて安心の補償を|個人賠償責任保険に加入しよう

本記事では自動車保険などに用意されている個人賠償責任保険について、支払い事例や補償範囲などを中心に詳しく解説しました。
火災保険やクレジットカードなどにも用意されている個人賠償責任保険は、補償の重複が起きやすいため、加入時にはご家族内で確認されることが大切です。

また、個人賠償責任保険は各保険会社によって補償の限度額や保険料が異なっています。
ご家族の補償を十分に用意するためにも、じっくりと比較された上で加入しましょう。

投稿者プロフィール

岩田あき
岩田あき
経歴:大手損害保険会社に勤務後、弁護士事務所で秘書として交通事故訴訟の調査に従事

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