自動車保険などに用意されている「個人賠償責任保険」をご存じでしょうか。
個人賠償責任保険とは、日常生活で他人にケガをさせたり、他人の物を壊したりして、法律上の損害賠償責任を負った場合の損害を補償する保険です。自動車保険には個人賠償責任保険、個人賠償責任補償特約などの名称で用意されており、付帯に迷われる方は多いでしょう。
そこで、本記事では個人賠償責任保険の支払い事例、補償範囲などを紹介し、本当に加入が必要か詳しく解説します。
この記事のまとめ
1個人賠償責任保険は、日常生活での事故により他人への損害賠償責任を負った際に補償を受けられる保険であり、自動車保険等にオプションとして付帯できる。
2子どものトラブル、ペットの事故、自転車事故など幅広い日常生活のケースで実際に保険金が支払われている。
3等級ダウンの対象外事故であり、保険料も比較的安価なため、自動車保険にセットで加入するメリットは大きい。
4火災保険やクレジットカード付帯との重複に注意し、補償限度額や示談交渉サービスの有無を比較して選ぶことが重要である。
この記事の監修者
1級FP技能士/証券外務員一種/コンテンツディレクター
中野宏紀(プロフィール)
名古屋市出身。岐阜大学大学院自然科学技術研究科を修了後、2021年に独立。金融・保険・不動産分野を専門とし、これまでに100本以上の金融関係コンテンツの制作・監修に携わる。1級FP技能士および証券外務員一種の資格をもとに、保険商品の設計や税務の取り扱いなど、制度面の正確性が求められる領域を得意とする。
個人賠償責任保険とは?補償内容を解説
個人賠償責任保険は自動車保険、火災保険等に用意されている補償であり、日常生活のさまざまなトラブルに備えて加入するものです。自動車保険では強制加入の補償ではないため、オプション設定となっており、ご自身で加入の有無を決めます。
補償される内容とは
個人賠償責任保険は、日常生活上の偶然な事故によって他人にケガをさせたり、他人の物を壊したりして、法律上の損害賠償責任を負った場合に保険金が支払われる保険です。
自動車保険では多くの交通事故に関して保険会社側の示談交渉サービスが受けられます。個人賠償責任保険も示談交渉サービスが付いている商品であれば、所定の条件を満たす国内事故について、保険会社が相手方との示談交渉を行います。「損害を与えてしまった、どうしよう」というケースでも、保険会社が解決までアシストしてくれるため安心です。
支払い事例は後述します。
加入すると補償が受けられる人とは
自動車保険に用意されている個人賠償責任保険の場合、加入することで以下の人が補償を受けることが可能です。
■自動車保険における個人賠償責任保険で補償が受けられる人
- 記名被保険者
- 記名被保険者の配偶者(内縁、同性パートナー含む)
- 記名被保険者またはその配偶者の同居の親族
- 記名被保険者またはその配偶者の別居の未婚の子
別居の既婚の子や、別居している父母・兄弟姉妹などは一般に補償対象外です。また、自動車保険の個人賠償責任特約は、記名被保険者が個人の契約に限って付帯できるケースが一般的です。
補償の対象外となるケースに注意が必要
さまざまなトラブルに備えられる個人賠償責任保険ですが、以下のような事例では補償が対象外となるため注意も必要です。
《① 自動車運転中や停車中などに与えてしまった損害》
例として、自動車を降りる際に自車のドアを隣の自動車にぶつけてしまったり、走行中に店舗へぶつけてしまったような事例では、個人賠償責任保険ではなく対物賠償責任保険の補償対象です。
《② 業務中の損害》
個人賠償責任保険は個人の日常生活におけるトラブルに備えるものであり、業務中に発生させたトラブルは対象外です。たとえば、アルバイト中に店舗の商品を誤って壊してしまった場合は補償されません。
《③ 自然災害による不可抗力で法律上の賠償責任が生じない事故》
強風で家屋から飛んでしまった屋根がぶつかった、大雪で壊れた壁が隣家を壊してしまったなど、自然災害によるトラブルも個人賠償責任保険の対象外です。ただし、屋根や壁の管理不良などにより法律上の損害賠償責任を負う場合は、補償対象となる可能性があります。
《④ 同居のご家族や、借りている物への損害》
同居家族のメガネを誤って踏んでしまった、友人から借りている漫画を汚損してしまったなど、同居家族への損害や借りている物への損害も補償の対象外です。
どのようなトラブルで補償されるのか?主な支払い事例と自転車事故への対応
個人賠償責任保険は実に広範囲にわたるトラブルに備えられるため、自動車保険に加入する際には押さえておきたい保険・特約です。では、実際にどのようなトラブルが起きた時に補償が行われているでしょうか。
この章では支払い事例3選と自転車事故への対応を紹介します。
主な支払い事例3選
『① 子どもがうっかりトラブルを起こしてしまったケース』
よくある支払い事例には「子どものトラブル」が挙げられます。例として以下のようなケースは個人賠償責任保険の対象となり、保護者の個人賠償責任保険から補償可能です。
- 子どもがキャッチボールをしていたら、民家のガラスを割ってしまった
- 子どもが買い物中に商品へ誤ってぶつかり、壊してしまった
- 子どもが遊具施設で遊んでいたところ、誤って遊具を壊してしまった
ただし、学校から貸与されたタブレット端末やノートパソコンは、受託物を補償する個人賠償責任特約でも補償対象外とされるケースがあります。借り物のすべてが対象外になるわけではないため、受託物の補償の有無と対象外となる品目を確認しましょう。
『② ペットがトラブルを起こしたケース』
大切なご家族として飼育されているペットが起こしたトラブルは、飼い主が賠償責任を負うため個人賠償責任保険の補償対象です。
- 飼い犬が散歩中に、通行中の人を噛んでしまった
- 飼い猫が子どもの友人をひっかいてしまいケガをさせた
- 飼い犬がドッグランの中にいる他人を威嚇し、転倒させケガを負わせた
『③ スポーツ中にケガや物への損壊を起こしたケース』
サッカーや野球など、スポーツを楽しんでいる際に起きてしまったトラブルも補償ができます。スポーツ中の事故が補償されるかは、事故の状況や過失の有無などから、法律上の損害賠償責任が発生するかによって判断されます。
- 道路でサッカーを楽しんでいたらボールが通行人にあたってしまった
- スケートボードの板を持って歩いていたところ、見知らぬ人のスマホにあたり壊してしまった
- ジムでランニング中にシューズの紐がマシンに絡んでしまい、マシンを損壊させた
この他に、自転車によるトラブルにも備えることができます。詳しくは次に解説します。
個人賠償責任保険は自転車事故にも備えられる
自転車を運転中にトラブルを起こしてしまうケースは決して少なくありません。自動車保険の個人賠償責任保険は、自転車乗車中のトラブルも補償対象です。
- 子どもが自転車を運転中に加速してしまい、歩行者にぶつかってしまった
- 自転車を運転している際に、誤って停車中の自動車にぶつけてしまった
このような自転車事故の事例にも対応できます。自転車については近年自転車保険の加入義務化が進んでおり、多くの自治体が加入を義務化しています。加入中の個人賠償責任保険で自転車事故による相手方への賠償が補償され、運転者が補償対象に含まれていれば、相手方への賠償に備える目的で別途自転車保険へ加入する必要性は低いでしょう。
自転車保険との違いには注意!
自転車保険と個人賠償責任保険は、トラブルの「相手方」への補償は重複しているため、どちらかに加入していれば問題ありません。しかし、自転車保険との違いは「自転車運転者」への補償が挙げられます。
個人賠償責任保険はあくまでもトラブルの相手方への補償であり、自転車運転中の自分のケガへの補償ではありません。自転車保険は自身のケガや死亡時への補償と、個人賠償責任分野がセットとなっています。自転車運転者自身のケガに備えるには、自転車事故を補償する傷害保険や、自動車保険に付帯できる自転車事故向けの傷害特約などを検討しましょう。
- 人身傷害保険…自動車保険の補償の1つ。搭乗中以外の補償も可能、搭乗中のみ担保なら自転車は対象外となるため注意。
- 傷害保険…損害保険の一種として販売されている。ケガ、死亡に備える保険で、入通院や治療費等を補償、自転車乗車中も対象。
自動車保険で個人賠償責任保険へ加入するメリットとは?
個人賠償責任保険は幅広く日常生活のトラブルに備えられるため、非常に魅力的です。
しかし、自動車保険で加入する際には、費用や等級が気になる人も多いでしょう。
そこで、この章では自動車保険加入時に個人賠償責任保険もセットで加入するメリットについて考察します。
高額な損害賠償に備えられる
日常生活のトラブルは小さな金額の賠償責任で終わるとは限りません。高額の賠償に発展するケースもあります。特に自転車による事故は、高額賠償事例が多く、以下の事例が広く知られています。
《神戸地裁2013年7月4日判決》
11歳の少年が夜間に自転車走行中、62歳の女性に衝突。女性は頭蓋骨を骨折し、意識が戻らない状態となった。神戸地裁は少年側へ9,521万円の賠償金の支払いを命じた。
《高松高裁2020年7月22日判決》
男子高校生が夜間、イヤホンで音楽を聴きながら無灯火で自転車を運転し、パトカーから逃走中に職務質問をしていた警察官と衝突した。警察官はその2か月後に死亡した。高松高裁は高校生側へ9,330万円の支払いを命じた。
このように、自転車事故の事例では、1億円近い高額賠償が発生しています。個人賠償責任保険に加入しておけば、こうした高額の賠償責任にも備えることが可能です。
家族のトラブルに備えられる
自動車保険に用意されている個人賠償責任保険は、すでに補償の対象となる人をご紹介したとおり、同居しているご家族と別居の未婚の子が補償範囲です。1つの契約で、家族が日常生活上の事故によって負った法律上の損害賠償責任に備えられます。
等級はダウンしない
対人賠償保険や対物賠償保険を使用した事故などは、一般に3等級ダウンの事故です。一方、車両保険は事故原因によって3等級ダウン事故、1等級ダウン事故またはノーカウント事故に分かれます。具体的には、飛石によるフロントガラスの破損などのケースでは1等級がダウンします。では、個人賠償責任保険から支払いを受けるとどうなるでしょうか。
個人賠償責任保険は等級ダウンの対象外事故のため、使用しても等級がダウンすることはありません。等級が気になって加入を避けている方は、この機会に加入を検討してみましょう。
保険料は比較的安価
個人賠償責任保険は自動付帯ではないため、加入する際にはオプション料を支払う必要があります。しかし、補償対象も広く、等級もダウンしない保険(特約)ですが、保険料はおおよそ1,500円~2,000円程度に留まります。個人賠償責任保険単体で加入するよりも安い傾向があるため、お得と言えるでしょう。
トラブル発生!個人賠償責任保険の利用の流れ
日常生活の中でトラブルを起こしてしまった場合、個人賠償責任保険を利用することがおすすめです。では、実際に利用する際にはどのような流れで保険金が支払われるのでしょうか。
この章では事故後の流れについて詳しく解説します。
事故から支払いまでの流れ
個人賠償責任保険から保険金の支払いを受ける流れは以下です。
- ① トラブル発生後、速やかに個人賠償責任保険加入先の保険会社へ事故報告
- ② 保険会社から必要書類が発送される
- ③ 必要に応じて示談交渉が行われる
- ④ 示談締結、支払いに必要な書類の提出
- ⑤ 支払保険金が確定した後、保険金が被保険者または相手方の指定口座へ支払われる
保険金の支払いの流れは、一般的な交通事故のケースと同じです。トラブルの相手方が入通院をしている場合、治療が完了した後に保険金が支払われます。トラブルが発生したら速やかに個人賠償責任保険に加入している保険会社へ連絡し、解決に向けた準備を始めましょう。なお、事故受付後は、保険会社側にて個人賠償責任保険の支払い対象かどうか審査が行われます。
示談交渉における注意点
トラブルを起こしてしまった場合、時に示談交渉を行う必要があります。しかし、保険会社によっては示談交渉のサービスを付けていない個人賠償責任保険もあります。加入時にはサービスの有無を確認することがおすすめです。示談交渉サービスを利用できない場合は、被保険者自身が相手方と交渉するか、必要に応じて弁護士へ依頼します。
ただし、保険会社へ相談せずに賠償責任や支払額を認めると、保険金の全額が支払われない恐れがあります。そのため、相手方と示談を成立させたり賠償金の支払いを約束したりする前に、加入先の保険会社へ連絡し案内に従って手続きを進めることが重要です。
加入前に確認しよう!個人賠償責任保険の重複や途中加入とは
個人賠償責任保険に関心を深めたら、さっそく加入を検討しましょう。では、加入時に押さえておきたい保険の選び方とはどのようなものでしょうか。
補償の重複に注意が必要
個人賠償責任保険はすでに解説のとおり、記名被保険者本人と配偶者、記名被保険者の同居家族・別居の未婚の子などをカバーできる保険です。つまり、家族全員が契約上の補償対象者に含まれている場合は、1つの契約で家族の賠償責任に備えられます。ご家族の自動車保険や火災保険などに、すでに個人賠償責任保険が付いている場合は、追加で加入すると補償が重複し、不要な保険料負担が生じる恐れがあります。複数の個人賠償責任保険に加入しても、保険金が二重に支払われることはありません。加入の際にはご家族に声をかけ、すでに加入していないか確認しましょう。
■重複を確認する時のポイント
- 自動車保険以外にも、火災保険や傷害保険などに個人賠償責任保険、特約が付帯されていることがあります。クレジットカードに付帯されていることがあるため、漏れなく確認しましょう。
- 重複が見つかった際には、補償範囲が異なっている場合は残した方が良いケースもあります。
途中加入を希望する場合
個人賠償責任保険に現在加入しておらず、自動車保険の更新をまだ迎えていない場合は、各保険会社によりますが更新前でも多くの自動車保険では「途中加入」が可能です。ただし、お手続きは代理店型とダイレクト型で異なります。
- 代理店型…代理店に個人賠償責任保険の途中加入を伝える
- ダイレクト型…ネット上でご自身の契約情報にアクセスし、異動の手続きを行う
ダイレクト型の例として、チューリッヒでは「契約内容の変更」画面にアクセスし、ご自身で手続きを進めます。
賢く加入!個人賠償責任保険の選び方
自動車保険だけではなく、火災保険などにも用意されている個人賠償責任保険ですが、実際に加入する際には保険内容を比較し、慎重に選ぶことをおすすめします。
この章では個人賠償責任保険の選び方を解説します。
補償の限度額を確認しよう
個人賠償責任保険は高額賠償に備えられますが、保険金額は商品によって異なり、一定の支払限度額を設ける商品と、国内事故を無制限とする商品があります。限度額を超える賠償については賠償責任を負っている方の自己負担となるため、できれば限度額は十分に比較しましょう。
例として、一部の保険会社の補償限度額を紹介します。(2026年7月現在)
『ソニー損保』ソニー損保の自動車保険に用意されている個人賠償特約では、お支払いの限度額を1事故につき「3億円まで」としています。
『おとなの自動車保険』SOMPOダイレクト(旧・セゾン自動車火災保険)の「おとなの自動車保険」では、お支払いの限度額を「無制限」としています。
『楽天損保』楽天自動車保険の個人賠償責任補償特約では、国内事故は無制限、国外事故は1事故につき1億円を限度としています。
なお、限度額が設定されていても、保険料が低く抑えられていることも多いため、保険料もあわせて比較し、ご家族にあった個人賠償責任保険を決めることがおすすめです。
示談交渉サービスは「あり」がおすすめ
多くの自動車保険の個人賠償責任保険は「示談交渉サービス」が設定されていますが、別の保険やクレジットカードなどの個人賠償責任保険では、示談交渉サービスがないケースもあります。
トラブルの内容によっては、相手方への対応に苦慮することも多く、個人賠償責任保険に加入される場合は示談交渉サービスがあるものを選ぶと良いでしょう。示談交渉に慣れている保険会社が丁寧に対応してくれます。
まとめ|事故に備えて安心の補償を
本記事では自動車保険などに用意されている個人賠償責任保険について、支払い事例や補償範囲などを中心に詳しく解説しました。火災保険やクレジットカードなどにも用意されている個人賠償責任保険は、補償の重複が起きやすいため、加入時にはご家族内で確認されることが大切です。
また、個人賠償責任保険は各保険会社によって補償の限度額や保険料が異なります。ご家族の補償を十分に用意するためにも、じっくりと比較された上で加入しましょう。
個人賠償責任保険に関するよくあるご質問
投稿者プロフィール
- 経歴:大手損害保険会社に勤務後、弁護士事務所で秘書として交通事故訴訟の調査に従事





