「家族が無免許運転で事故を起こしてしまったら、ケガの相手への補償はどうなるのだろう」
「事故時にうっかり運転免許証の携帯をしていなかったらどうなる?」
「無保険車とはどういう状態を意味するのか知りたい」
自動車を運転するためには、運転免許証の取得が必要です。
では、もしも無免許の状態で自動車を運転し、事故を起こしてしまったら補償はどうなるのでしょうか。
そこで、本記事では無免許運転と自動車保険の補償について解説します。
無免許運転のリスクについてもあわせて解説しますので、ぜひご一読ください。
この記事をまとめると
- 無免許運転は免許不携帯よりも重い罰則がある
- 無免許運転では自動車保険に加入していても、ご自身の補償は得られない
- 無免許運転は更新漏れで起きることもあり注意が必要
- 事故時にトラブルになった場合は、弁護士に相談することが重要
- 自動車保険なら無免許運転者との事故に備えられる
無免許運転とは?定義を解説
無免許運転とは免許を取得していない状態で運転することを意味しますが、この他にも無免許運転に該当するケースがあります。
この章では無免許運転の定義について、免許不携帯との違いにも触れながら詳しく解説します。
無免許運転とは
無免許運転とは、以下の4つの状態を指す言葉です。
- 運転免許証を取得せずに、自動車を運転すること
- 運転免許証を取得していたものの、更新せずに有効期限が切れた状態で運転すること
- 運転免許証を取得していたものの、取消・停止などを理由に運転できない状態で運転すること
- 普通運転免許証などは取得していたものの、別の運転免許証が必要な車両を運転すること
まとめると、運転免許証を取得していないか、取得していても失効・停止などを理由に運転してはいけない方が運転してしまうことを意味します。また、意外と注意が必要なのが「普通自動車運転免許証は取得しているケース」です。
たとえば、普通の自動車は運転できるものの、トラックやタンクローリーなどの車両は「大型自動車第一種免許証」を取得していなければ運転できません。別の運転免許証を持っていても、必要な運転免許証を取得しないまま運転してしまったら無免許運転です。
免許不携帯との違いとは?
無免許運転とは別に「免許不携帯」という言葉もあります。
免許不携帯とは「運転免許証を携帯せずに運転してしまうこと」を意味します。
うっかりバッグの中に運転免許証を入れ忘れた、などの状態であり、有効期限が切れていない運転免許証はお持ちの方です。
罰則も大きく異なっています。
無免許運転と免許不携帯|罰則や罰金の違いとは
無免許運転と免許不携帯は、罰則や罰金が大きく異なります。
無免許運転 | 免許不携帯 | |
---|---|---|
違反点数 | 25点 | なし |
刑事処分 | 3年以下の懲役または50万以下の罰金 | 罰金3,000円のみ |
同乗者の処分 (※無免許と知っていた場合) | 2年以下の懲役または30万以下の罰金、行政処分もあり | なし |
車を貸した人への処分 (※無免許と知っていた場合) | 3年以下の懲役または50万以下の罰金、行政処分あり | なし |
免許不携帯では違反点数が加算されず、ゴールド免許がブルーに降格することもありません。
一方の無免許運転は違反点数が25点と飲酒運転の次ぐ重い加点となっており、発覚すると2年間の免許取り消しの行政処分が下されます。
過去3年以内に前歴がある場合はさらに取り消し期間は延びます。加えて、無免許運転で人身事故などのトラブルを起こした場合は逮捕される可能性もあります。
無免許運転は同乗者の処分や車を貸した人への処分もあります。
無免許運転のリスクとは?罰則だけじゃない重い責任とは
無免許運転には重い行政処分などの罰則が用意されています。加えて、無免許運転のリスクは罰則だけには留まりません。
そこで、この章では無免許運転のリスクについて、罰則以外の視点からも詳しく解説します。
無免許運転で事故を起こすとどうなる?
無免許運転では事故を起こさなくても、発覚した場合に重い罰則が設けられており、懲役が科せられるおそれがあります。
さらに事故を起こし、人身事故を起こした場合には過失運転致傷や過失運転致死、危険運転致死傷の罪に問われ、逮捕されるリスクは高くなります。繰り返し無免許運転で刑事処分が下された過去がある場合も同様に逮捕されるリスクがあります。
自動車保険に加入はできる?
無免許の方は任意保険である自動車保険に加入できるのでしょうか?
結論から言うと、契約自体は可能です。
自動車保険は契約者・記名被保険者(運転する方)が分けられています。契約者は運転免許証を持っていなくても契約できるしくみです。
しかし、被保険者は運転免許証がある前提で契約することになっており、運転免許証の取得年月や色を保険会社側へ申告する必要があります。
つまり、事実上無免許の方は自動車保険の補償対象外です。
無免許運転による自動車保険の補償はどうなる?
無免許運転による事故の補償については、加害者側(無免許運転者側)と被害者側に分けて考える必要があります。
① 加害者側(無免許運転者側)
無免許運転者が事故を起こし加害者側となった場合、無免許運転者側がご自身の自動車保険から車両保険や人身傷害保険などから補償を得ることはできません。
ただし、事故の相手方にも過失がある場合は、相手方の自動車保険から過失割合に応じて補償は行われます。
② 被害者側
事故の相手方が無免許運転だった場合でも、相手方の自動車保険や自賠責保険からの補償は行われます。
被害者側にも過失割合があった時は、ご自身の自動車保険から無免許運転者側への補償は行われます。
無免許運転者が自動車保険・自賠責保険に加入していなかったらどうなる?
被害者側にとって不安になるのは、事故の相手方が無免許運転・自動車保険未加入・自賠責保険未加入だったケースです。
そもそも無免許運転そのものが違法行為である以上、自動車保険や自賠責保険のいずれにも加入していないケースもあります。
しかし、被害者側には損害を被った以上は泣き寝入りとならないように、補償は行われるべきです。
そこで、用意されているのが「政府保障事業」です。
政府保障事業の請求は窓口になっている保険会社が対応していますが、支払うのは国です。
- 【政府保障事業の概要】
- 支払限度額
- 自賠責保険と異なる点
被害者が、加害者側の自賠責保険に未加入によって補償が受けられない場合、受けた損害について国が加害者にかわって補てん(立替払い)する制度です。
支払限度額は自賠責保険(共済)と同じです。
政府保障事業へ請求を求められるのは、被害者のみであり加害者から請求できません。国はあくまで立替えを行うものであり、政府は加害者に立て替えた補償金を請求します。健康保険、労災保険など社会保険から給付を得た場合、その金額は差し引いて被害者側へ支払います。
被害者側はご自身が加入している自動車保険からも、車両保険や人身傷害保険などの補償は受けられます。
政府保障事業への請求については、下記リンクをご参考ください。
参考URL:損害保険料率算出機構
損害保険料率算出機構 政府の保障事業とは
無免許運転者の同乗者への損害は誰が補償する?
無免許運転者の車に同乗している時に事故が起きてしまい、死傷によって損害を被ってしまった場合は、誰が補償を行うのでしょうか。このようなケースでは、同乗者が無免許運転を知っていたか否かによって、補償が変わってしまうおそれがあります。
1.同乗者が無免許運転を知らなかった場合
同乗者が加入していた自動車保険や自賠責保険から補償が行われます。(ただし、同乗者が自賠法第3条で規定する他人に該当するかどうか問われます)
相手方に過失割合がある場合は、相手方からも補償が受けられます。同乗者やそのご家族が人身傷害保険に加入していた場合も、契約内容によっては補償が支払われる可能性があります。
2.同乗者が無免許運転を知っていた場合
同乗者が無免許を知りながら自分を乗せるように要求していた場合は、無免許運転ほう助罪にも該当するため厳しい罰則を受けるだけではなく、補償も受けられない可能性があります。
無免許運転の車に同乗することは、大きなリスクがあるのです。もしもご存知の上で乗車してしまったら、ご自身も罪に問われる可能性が高いため、絶対に同乗しないことが大切です。
うっかり無免許運転!トラブルを防ぐためのポイント
無免許運転は意図的に運転免許証を取得していない方も見られますが、更新ミスなどによって気が付かないうちに無免許運転に陥っている方も少なくありません。
そこで、この章では「うっかり無免許運転」を防ぐためのポイントをわかりやすく解説します。
運転免許証の更新を忘れないこと
運転免許証は「更新制」です。
取得済の運転免許証には有効期限が記載されており、免許証の中央にはゴールド、ブルー、またはグリーンで有効期限が明記されています。
更新が近くなると「更新通知ハガキ」が運転免許証の登録住所宛に届きます。ハガキは更新期限の約31日~40日程度が目安で届くため、必ず確認しましょう。
運転免許証の更新を忘れてしまったらどうする?
もしも運転免許証の更新をうっかり忘れてしまったら、どのように対応すればよいでしょうか。
- 失効から6か月以内
失効から6か月以内なら、学科試験・技能試験は受けずに免許証を再取得できます。適性検査を受け、通常の更新時に行われる講習(一般・優良・違反のいずれか)を受けることで再度取得できます。 - 失効から6か月以上1年未満
6か月以上、1年未満の方が普通運転免許証、準中型免許証、中型免許証、大型免許証のいずれかの免許証をお持ちだった場合には、仮免許証は取得できます。ただし、本免許証ではありませんので再取得が必要です。 - 失効から1年以上
失効からやむを得ない理由なく手続きを怠っていると、運転免許証は完全に失効してしまいます。 - やむを得ない事情があった場合
やむを得ない事情があり、失効から6か月以上3年以内である場合は、やむを得ない理由が終わった時(例・海外旅行や出産など)から1か月以内に仮運転免許証が取得できます。こちらも本免許証ではないため注意が必要です。
運転免許証の失効を防ぐコツとは
運転免許証はうっかり更新を忘れてしまっても、一定の期間内であれば救済策が設けられています。しかし、手続きはややこしい上、期限が切れていることには変わりありません。
こうしたトラブルを防ぐためには「事前更新」を行うことも検討しましょう。
「事前更新」とは更新期間内に入る前に、運転免許証の更新を行う方法です。
たとえば、事前に妊娠・出産によって更新期間内に更新へ行けない可能性がある場合は、やむを得ない事情で事前更新を希望することを証明すれば、更新が認められています。ただし、更新を早めると次の誕生日までで1年と数えるため、通常の運転免許期間よりも短期間で次の更新を迎えます。
近年高齢者の更新漏れも多く発生しています。
ハガキの見落としなどが原因となっているため、ご家族の更新漏れがないようにサポートすることも大切です。
今の運転免許証で、運転できる車両か確認を怠らないこと
一般的に多くの方が取得している運転免許証は「普通自動車第一種運転免許証」の事であり、公道を走る私用車向けの免許証のことです。
この運転免許証の場合、中型車は8トンまでに限られており、普通自動車・小型特殊自動車・原動機付自転車までしか運転はできません。
8トンを超える大型自動車などを運転する場合には、別に大型免許を取得する必要があります。
また、旅客運送のために自動車を運転する場合は、普通自動車第二種免許(以下「第二種」)が必要です。
一般的に発生しやすいミスの一つとして、大型免許や第二種を持っていないにもかかわらず、運転してしまうケースです。
転職などをきっかけにうっかりと運転してしまうケースがありますが、無免許運転になってしまいます。
乗られる際には必ずご自身の運転免許証が適合しているかどうか確認しましょう。
無免許運転が発覚したら|トラブル発生前に対処しよう
もしも更新漏れなどを理由に運転免許証が失効していることがわかったら、どのように対応するべきでしょうか。
この章では無免許運転の発覚時の対処について解説します。
まずは絶対に運転しないこと
先に触れたように、無免許運転には重い罰則が設けられています。
更新漏れなどで失効がわかった時点で、まずは絶対に運転しないようにしましょう。
更新漏れはご紹介のとおり、一定の期間内であれば救済策があるため、すぐに更新手続きに移行しましょう。
家族や友人が無免許であるとわかったらどうする?
家族や友人が無免許運転をしていると知っていても放置してしまうと、同乗した際に同乗者として罪に問われるリスクがあります。運転しないように注意し、運転免許証の取得を促しましょう。
子どもが無免許運転していたら保護者の責任はどうなる?
子どもが無免許運転をしているとわかったら、発覚すると重い処分が少年へ下されるおそれがあります。
14歳未満か14歳以上によって処分は異なりますが、悪質性が高く14歳以上の場合には逮捕される可能性があります。
よくあるトラブルの内容は以下です。
- 子どもが非行に走り、無免許運転で警察から捜査を受けた
- 子どもが友人のバイクを無免許で運転し、事故を起こした
普通自動車免許は18歳以上、原動機付自転車は16歳以上でなければ免許証が取得できないため、子どもによる無免許は「そもそも免許証を取得していない」状態が多くなっています。(純無免許運転)
非行による問題行動とされ、逮捕・勾留される可能性が高く、事故が起きている場合には弁護士へ相談の上で示談交渉なども含めて親が責任を持って行動せざるを得なくなります。
無免許運転が分かった時点で子どもを制止し、親の自動車にも勝手に乗らないように厳重に管理することが大切です。
もしも親の自動車やバイクに無免許運転で乗っていたら、車両の所有者として「運行供用者責任」と問われる可能性も高くなります。
無免許運転者の被害に遭ってしまったら|問題解決のポイント
無免許運転者が事故を起こし、被害者側として損害を被ってしまった場合にはどのような流れで解決すれば良いでしょうか。
この章では被害者側の視点から問題解決のポイントを解説します
事故発生後すぐに警察へ通報しよう
無免許運転者との事故では「お詫びをするから警察へ言わないで欲しい」と加害者側(無免許運転者側)から言われることがあります。
しかし、道路交通法第72条において運転者は事故が発生した日時や場所などを警察に報告する義務があると定めています。
どのような事情があっても、事故発生後すぐに警察へ事故報告を行いましょう。
以下をメモにし、必ず加害者側の住所社連絡先を確認しましょう。
- 【事故後に確認しておきたいポイント】
- 加害者側の氏名
- 加害者側の住所と電話番号(必要に応じて勤務先、名刺などを交換)
- 事故を起こした自動車やバイクのナンバー
- 自動車保険の加入先、証券番号
- 自賠責保険の加入先、証券番号
警察への事故報告がなければ、実況見分調書が未作成となり、交通事故証明書が発行されないため保険会社側から補償を受ける際に手続きが難航するおそれがあります。
【警察への届出】について詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にして下さい。
事故時は警察へ届出必須!自動車保険が役立つポイントとは?
賠償しないと主張されたらどうする?
無免許運転者側が自動車保険や自賠責保険に加入しておらず、ケガや車両の損害について補償しないと主張されるケースもあります。
政府保障事業やご自身の自動車保険から補償が得られたとしても、十分ではないおそれがあります。
無免許運転者との示談交渉は難航化しやすいため、被害者側が直接対応することはおすすめできません。できれば弁護士へ依頼し、示談交渉を行ってもらうようにしましょう。
【示談交渉】について詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にして下さい。
交通事故の示談交渉とは?自動車保険が果たしている示談交渉サービスを解説
無免許運転者との事故に自動車保険で備えておこう
自動車保険は自賠責保険を大きく上回る補償が用意されており、相手が無免許・無保険の状態であってもご自身の自動車保険で補償を受けられます。
そこで、無免許運転者との事故に備えるためにも、自動車保険の補償は以下2つのポイントを押さえて用意しておきましょう。
弁護士費用特約を付けておこう!
弁護士費用特約は、記名被保険者とその家族(別居の親族や別居の既婚の子などを除く)が対象となる特約です。
加入しておくと、弁護士は必要になった際に法律相談料や着手金、報酬金などを保険会社側から弁護士へ支払ってくれます。
無免許運転者側との示談交渉にも活用できますので、加入しておきましょう。
人身傷害保険や車両保険にしっかりと加入しよう!
相手方から十分な補償が得られない場合でも、人身傷害保険でご自身のケガを、車両保険でご自身の車両を補償することができます。
特に車内・車外の両方を補償しておくことで、他の車両に乗車中の自動車事故も補償対象となります。
無免許運転は絶対ダメ!リスクを避けるためにも必ず取得・更新しよう!
この記事では無免許運転について、自動車保険の補償や発生するさまざまなリスクについて解説しました。
無免許運転には運転者だけではなく、時には同乗者にも重い罰則が科せられます。
事故時には大きなトラブルに発展し、逮捕される可能性も高いため、必ず運転免許証は取得・更新を怠らないようにしましょう。
残念なことに、無免許運転によるトラブルは最近も発生しています。
ご自身が無免許運転者との事故トラブルに巻き込まれてしまった場合には、任意保険である自動車保険でケガ・車両・弁護士費用などの補償が得られます。
日頃から自動車保険にもしっかりと加入し、万が一のトラブルに備えておきましょう。
投稿者プロフィール
- 経歴:大手損害保険会社に勤務後、弁護士事務所で秘書として交通事故訴訟の調査に従事
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