免許を一度も取ったことがない人が運転する。無免許運転と聞いて多くの人が思い浮かべるのはこの光景だと思います。ところが実際に検挙されているのは、免許証を財布に持っている人が少なくありません。更新をうっかり忘れて期限が切れていた、免停の期間を数え間違えた、原付免許しかないのに友人の車を動かした。どれも道路交通法上は同じ無免許運転で、違反点数は25点、前歴がなくても一度で免許取消になります。
そしてもう一つ、あまり知られていないことがあります。無免許運転の事故では自動車保険の動き方が普段とまったく変わります。相手の治療費は保険会社が払うのに、自分の治療費と車の修理費は自分の財布から出す。そういう組み合わせになります。巻き添えを食うのは運転した本人だけではなく、同乗していた人と、車を貸した人にも罰則と保険の問題が及びます。
この記事では、無免許運転の刑事罰と行政処分を整理したうえで、運転した本人・被害者・同乗者・車を貸した人という4つの立場から、保険がどこまで使えるのかを解説します。
この記事のポイント
1無免許運転は違反点数25点。前歴がなくても一度で免許取消となり、欠格期間は前歴の回数に応じて2年から4年。
2刑事罰は3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金。2025年6月施行の改正刑法で「懲役」から拘禁刑に変わった。
3相手への対人・対物賠償は支払われますが、運転者自身の人身傷害・搭乗者傷害・車両保険は免責と定めている商品が多く、取り扱いは保険会社ごとに違う。
4無免許と知って車を貸した人、同乗を頼んだ人も、刑事罰と免許取消の対象になる。
無免許運転でも、相手への賠償は保険から支払われます。一方で、運転した本人のケガと車の修理は補償の対象外になりかねません。同じ1つの事故でも、相手に向かうお金と自分に戻ってくるお金では扱いがまったく違います。この記事では、運転した本人・被害者・同乗者・車を貸した人ごとに、保険の扱いを解説します。
置かれている状況によって、読むべき場所が変わります。
- 自分が無免許で運転してしまった|「無免許運転の罰則」と「運転した本人」の章
- 家族や友人に車を貸した、同乗した|「同乗した人・車を貸した人の責任」の章
- ぶつかってきた相手が無免許だった|「被害者」の章
- 免許の更新を忘れていた|「うっかり失効」の章
無免許運転で問われる責任と保険の全体像
無免許運転が絡む事故では、立場によって背負うものがまるで違います。まずは表で自分の位置を確かめられるようにしました。根拠と例外は、次章以降で一つずつ解説します。
| 立場 | 刑事罰 | 免許の処分 | 保険の扱い |
|---|---|---|---|
| 無免許で運転した本人 | 3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金 | 25点で免許取消(前歴0回なら欠格期間2年) | 相手への賠償は出る。自分の人身傷害・搭乗者傷害・車両保険は免責としている商品が多い |
| 事故に巻き込まれた被害者 | なし | なし | 相手の自賠責と対人賠償から受け取れる。自分の人身傷害・無保険車傷害・弁護士費用特約も使える |
| 同乗者(無免許と知らなかった) | 原則なし | 原則なし | 被害者として賠償を受け取れる。自分の人身傷害も使える |
| 同乗者(無免許と知って運転を頼んだ) | 2年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金 | 免許取消(欠格期間2年) | 賠償が減額されることがあり、人身傷害を免責としている商品もある |
| 車を貸した人(知らなかった) | 原則なし | 原則なし | 運転者限定・年齢条件から外れれば対象外。条件内でも、運転者の無免許運転による損害は免責と定める約款が主流 |
| 車を貸した人(無免許と知っていた) | 3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金 | 免許取消(欠格期間2年) | 所有者としての賠償責任は残るが、車両保険は免責の可能性 |
無免許運転とは|該当する5つのパターン
令和6年中に無免許運転で取り締まられた件数は18,031件でした(令和7年交通安全白書)。1日あたり50件近くが摘発されている計算になります。道路交通法64条は「免許を受けないで自動車等を運転してはならない」と定めています。この「免許を受けないで」には、免許証を一度も手にしたことがない状態だけでなく、持っていた免許の効力が失われている状態も含まれます。つまり、免許証が財布に入っていても無免許運転は成立します。該当するのは次の5パターンです。
無免許運転にあたる5つのパターン
分類の名前は覚える必要がありません。見るべきは、どのパターンも違反点数が同じ25点で、いずれも一定期間は免許を取得できなくなるという点です。
| パターン | どういう状態か | 違反点数(相当) | 行政処分 |
|---|---|---|---|
| 純無免 | 運転免許を一度も取得していない | 25点 | 免許取消と同じ扱いで、2年間は免許を取得できない |
| 取消無免 | 免許取消処分を受けたあとに運転した | 25点 | 欠格期間が2年より長くなる |
| 免停中無免 | 免許停止処分の期間中に運転した | 25点 | 免許取消(欠格期間2年) |
| 免許外運転 | 持っている免許では運転できない車種を運転した | 25点 | 免許取消(欠格期間2年) |
| 失効中の運転 | 更新を忘れ、有効期限が切れたまま運転した | 25点 | 免許取消(欠格期間2年) |
うっかり失効した人が「悪意はなかったのだから軽いはずだ」と考えるのは自然ですが、扱いは一度も免許を取っていない人とまったく同じ25点相当です。故意かどうかは処分の重さを左右しません。
なお、違反点数はもともと免許を受けている人に付けられる仕組みです。免許を一度も取っていない人や、取消処分を受けたあとの人には点数が付きようがないため、25点相当の扱いとして免許の拒否や自動車等の運転禁止という形で処分が下されます。
免許を持っていても無免許運転になるとき、ならないとき
免許証を持っている人ほど取り違えやすいのがここです。運転できない車を動かした場合、無免許運転として25点になることもあれば、はるかに軽い違反で済むこともあります。境目は3つあります。その車種の免許そのものを持っていないのか、免許はあるが年齢や運転経歴の要件を満たしていないのか、免許証の「条件等」欄の制限を外れているのか。この違いで25点・12点・2点に分かれます。
| 状況 | 扱い | 違反点数 |
|---|---|---|
| 普通免許しか持たずに普通自動二輪を運転した | 無免許運転 | 25点 |
| 中型免許で大型自動車を運転した | 無免許運転 | 25点 |
| 原付免許で普通自動車を運転した | 無免許運転 | 25点 |
| 特例教習などで若くして大型免許を取得した人が、年齢や運転経歴の要件を満たさないまま政令で定める大型車等を運転した | 大型自動車等無資格運転 | 12点 |
| 「中型車は8トンに限る」の条件が付いた免許で、8トンを超える中型車を運転した | 免許条件違反 | 2点 |
| 眼鏡等の条件があるのに裸眼で運転した | 免許条件違反 | 2点 |
(違反点数は警視庁の交通違反の点数一覧表によります)
25点、12点、2点。同じ「乗れない車に乗った」でも、結末はここまで開きます。免許証の「条件等」欄と「種類」欄は意味が違うので、家族の車や社用車を運転する前に一度確認しておくと安心です。
免許不携帯は無免許運転ではありません
免許は持っているが、その日たまたま家に置いてきた。これは無免許運転ではなく免許証不携帯という別の違反で、反則行為の種別及び反則金一覧表では反則金3,000円と定められており、違反点数は加算されません。刑事罰である「罰金」と、青切符で納める「反則金」は法的な性格が異なります。両者の違いは青切符と赤切符の違いで解説しています。
なお、有効期限が切れている免許証を持ち歩いていても不携帯にはなりません。その場合は運転した時点で無免許運転です。
無免許運転の罰則|刑事処分と行政処分
無免許運転で科されるものは2種類あります。裁判所が言い渡す刑事罰と、公安委員会が下す免許の処分です。この2つは別々に進むので、罰金を納めれば免許が助かるという関係にはなりません。
刑事処分は3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金
道路交通法117条の2の2により、無免許運転をした人は3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金に処せられます。
拘禁刑という言葉に馴染みがない方も多いはずです。2025年6月1日に施行された改正刑法で、懲役と禁錮の拘禁刑への一本化が行われました。作業を一律に義務づける従来の懲役と異なり、受刑者ごとに作業と指導を組み合わせられるようになった刑罰です。
無免許運転を「3年以下の懲役」と説明している資料も残っていますが、これが誤りとは限りません。改正法には経過措置が置かれており、施行日より前にした行為には従前どおり懲役が適用されます。これから起きる無免許運転に適用されるのが拘禁刑だと考えてください。
行政処分は違反点数25点で一発取消|欠格期間は前歴で2年から4年
無免許運転の基礎点数は25点です。警視庁が公表している行政処分基準点数の表では、前歴のない人であれば6点から免許停止、15点以上で取消の対象になりますから、25点は取消の基準を10点も上回っています。前歴があると基準そのものが下がるため、さらに厳しくなります。過去に処分を受けたことがない人でも、1回で取消です。
取消のあと、どれくらい免許を取り直せないかを示すのが欠格期間で、過去の処分前歴の回数によって変わります。
| 処分前歴 | 25点から29点の場合の処分 |
|---|---|
| 0回 | 免許取消・欠格期間2年 |
| 1回 | 免許取消・欠格期間2年 |
| 2回 | 免許取消・欠格期間3年 |
| 3回以上 | 免許取消・欠格期間4年 |
過去に免許を取り消された経歴がある人が一定期間内に再び処分を受けた場合、欠格期間はさらに長くなります。
初犯でも取消は原則として避けられません
「初犯なら見逃してもらえる」という話をときどき耳にしますが、混同されているのは刑事処分のほうです。前科がなく、事故を起こしておらず、反省が認められる事案では、起訴猶予や略式命令による罰金で終わることも実際にあります。一方で行政処分は点数の積み上げで機械的に決まるため、初回でも25点は25点です。
意見の聴取という手続きで処分の軽減を求める道は残されていますが、それも取消そのものをなかったことにする制度ではありません。手続きの流れは後の章で触れます。
同乗した人・車を貸した人の責任|刑事罰と民事責任
2013年の道路交通法改正で、無免許運転を助けた人を直接処罰する規定が設けられました。運転していないのだから関係ない、という理屈は通りません。刑事罰と、事故が起きたあとに残る民事の賠償責任。この2つは分けて考える必要があります。
無免許と知っていて車を貸した場合
無免許運転をするおそれのある人に車を提供した人には、運転した本人と同じ3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金が定められています。貸した相手が事故を起こしたかどうかは問われません。提供した行為そのものが処罰の対象です。
無免許と知っていて同乗を頼んだ場合
無免許運転であることを知りながら、運転を要求または依頼してその車に同乗した人は、2年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金に処せられます。運転を頼んだこと、あるいは送ってほしいと依頼したことが要件になるため、単に乗り合わせただけのケースとは扱いが分かれます。
貸した人・同乗した人の免許はどうなるか
「貸した人にも25点が付く」という説明を見かけますが、正確には違います。貸した人や同乗した人に無免許運転の25点が加算されるわけではありません。道路交通法103条にある「重大違反唆し等」という枠組みで、点数とは別に免許の取消処分が下されます。前歴のない人で欠格期間は2年です。点数は付かないまま、免許だけがなくなるということです。
「知らなかった」で免れるのか
3つの規定はいずれも、相手が無免許であると知っていたことを前提にしています。本当に知らなければ処罰されません。ただし判断するのは捜査機関であり、免許証を確認した形跡がない、相手が免許取消になったことを周囲が把握していたといった事情があれば、知っていたと認定されることもあります。
車を貸すときに免許証を見せてもらい、有効期限と種類、条件等の欄を確認する。それだけで、あとから故意を疑われる材料がなくなります。家族間でも、免許を取り消された経験のある人がいるなら鍵の置き場所を決めておくと安全です。
所有者や親が負う民事責任
刑事罰とは別に、民事の賠償責任も残ります。自動車損害賠償保障法3条は、自分のために自動車を運行の用に供する者、いわゆる運行供用者に、人の生命や身体を害したときの賠償責任を負わせています。物損はこの条文の対象ではなく、民法の原則で判断されます。車の所有者は、運転していなくてもこの責任を問われることがあります。未成年の子どもが親の車を無免許で運転して事故を起こしたケースでは、親が運行供用者として賠償を求められるほか、監督義務を怠ったとして責任を問われた例もあります。
無免許運転で事故を起こしたら自動車保険は使えるのか|立場別に解説
無免許運転の事故では、保険の使える・使えないが普段とは違う場所で切り分けられます。被害者に届く補償は残し、加害者を助ける補償は落とす。見るべきは、誰の損害を埋める保険なのかという一点です。
【運転した本人】相手への賠償は出ますが、自分側の補償はほぼ出ません
日本損害保険協会の損害保険Q&Aによれば、無免許運転で人身事故を起こした場合でも、相手への賠償にあたる対人賠償責任保険と対物賠償責任保険は支払われます。相手への賠償は無免許運転でも保険から支払われるのが多くの商品での扱いです。無免許運転を免責事由に挙げてしまうと、賠償金を受け取れない被害者が生まれてしまうためです。自賠責保険も同じ考え方で、加害者が無免許であっても被害者への支払いは行われます。自賠責の仕組みは自賠責保険とはで解説しています。
反対に、運転者自身に向けられた補償は落ちます。人身傷害保険、搭乗者傷害、車両保険は、記名被保険者や運転者の無免許運転による損害を免責事由に挙げている商品が目立ちます。自分の治療費と車の修理費は自己負担になりかねません。どこまでを免責とするかは商品ごとに幅があるので、契約している約款の免責事由を読んでおいてください。
もう一つ抜けやすいのが、賠償額が対人・対物の保険金額を超えた分の扱いです。保険金額を無制限にしていなければ、超過分は本人が払います。示談交渉サービスについても、故意や重大な違反を理由に会社が対応を断るケースがあるため、契約内容の確認が要ります。示談の進み方は交通事故の示談交渉にまとめています。
対人・対物を使えば、翌年の等級は下がります。3等級下がる区分としている商品が一般的ですが、区分は契約ごとに定められています。無免許運転を理由に契約そのものを解除されることもあり、その場合は次の契約先を探すところから始めることになります。等級の仕組みは自動車保険の等級をご覧ください。
【被害者】相手が無免許でも自賠責と対人賠償は使えます
自分に落ち度がなく、ぶつかってきた相手が無免許だった。この場合、相手が自賠責と任意保険に入っていれば、そこから賠償を受けられます。相手の無免許は被害者への支払いを妨げません。
問題は、無免許運転をする人が任意保険にも自賠責にも入っていないことがある点です。相手から回収できない、あるいは相手が見つからないときに備えて、次の3つを自分の契約側に用意しておくと現実的な受け皿になります。
- 人身傷害保険|過失割合の確定を待たずに、自分と家族の治療費や休業損害が契約の基準で支払われます
- 無保険車傷害|相手が無保険で、死亡または後遺障害が残った場合の賠償の不足分を補います。自動セットの商品とオプションの商品があります
- 弁護士費用特約|過失がゼロの事故では自分の保険会社が示談交渉に入れないため、弁護士に依頼する費用を賄えるかどうかが結果を左右します
相手が自賠責にすら加入していなかった、あるいはひき逃げで相手が分からないときの最後の受け皿が、国が運営する政府保障事業です。自賠責保険の支払限度額と同じ範囲で損害が填補されますが、健康保険や労災保険から給付を受けた分は差し引かれます。請求できるのは被害者本人だけで、加害者側からの請求はできません。
事故直後に控えておく相手の情報
相手が無免許だと分かると、その場から立ち去ろうとすることも珍しくありません。だからこそ、現場で押さえる情報が後の回収を左右します。
- 相手の氏名・住所・連絡先
- 事故を起こした車両のナンバー
- 自賠責保険の加入先と証券番号
- 任意保険の加入先と証券番号
警察への届出は必ず行います。相手に「警察を呼ばないでほしい」と頼まれても応じないでください。手順は事故時の警察への届出にまとめました。
【同乗者】無免許と知っていたかどうかで扱いが変わります
同乗していてケガをした人は、原則として被害者の立場に立ちます。運転者が無免許だと知ったうえで乗っていた場合は、話が変わります。
| 補償 | 無免許と知らずに同乗した | 無免許と知って同乗した |
|---|---|---|
| 運転者側の自賠責 | 受け取れる | 受け取れる。同乗の経緯が過失として考慮されることがある |
| 運転者側の対人賠償 | 支払われる | 好意同乗として賠償額が調整されることがある |
| 自分が契約している人身傷害 | 支払対象としている契約がほとんど | 免責事由に挙げている商品がある |
| 乗っていた車の搭乗者傷害 | 支払対象としている契約がほとんど | 対象外とする商品も少なくない |
無免許と知りながら同乗した人は、自らも処罰の対象になるうえ、受け取れる保険金も細くなります。刑事罰を受ける側でありながら、被害者としての保護は薄いという立場に置かれます。
【車を貸した人】自分の契約から保険金が出ないこともあります
貸した車で事故が起きたとき、動くのは車の持ち主の契約になります。ここで問題になるのが、その契約に付けている運転者の範囲です。
運転者本人限定や夫婦限定にしていれば、友人が運転した事故は補償の対象外になります。年齢条件を26歳以上補償にしている契約で、20代前半の相手に貸したときも同じ結果です。無免許かどうかを問う前に、運転者の限定と年齢条件で対象から外れます。設定の中身は運転者の限定と年齢条件で確認できます。
限定を付けていなくても、記名被保険者や運転していた人、これらの人の父母・配偶者・子、車を使用または管理していた人など、商品ごとに定められた範囲の人が無免許運転をしたときは免責と定める約款が主流です。賠償責任だけが所有者に残り、自分の車の修理費は手元から出ていくことになります。他人が運転していたときの保険の扱いは他人が運転中の事故でも整理しています。
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うっかり失効は無免許運転ではありません|運転した瞬間に成立します
更新のハガキを見落として有効期限が切れていた。この状態そのものは違反ではありません。免許を失った人が街を歩いていても、誰も罰せられないのと同じです。無免許運転という違反が成立するのは、その状態でハンドルを握った瞬間です。ここを取り違えて「もう無免許なのだから、返しに行くために運転するくらいは」と考えてしまうと、25点を背負うことになります。
気づいた日から運転してはいけない理由
失効に気づいたその日から、車は動かせません。試験場や警察署へ行くときは、公共交通機関を使うか、免許を持つ人に運転してもらうことになります。手続きに向かう途中であっても、自分の車を動かせばその時点で無免許運転が成立します。
もう一つ、保険の面でも動けなくなります。無免許運転中の事故では、前章のとおり自分側の補償が落ちます。数日の不便を惜しんで運転した結果、車の修理費と治療費をすべて自分で払う羽目になるのでは割に合いません。
気づかないまま運転していた期間はどうなるか
失効に気づいたとき、多くの人が最初に心配するのはここです。期限が切れていた間も何度か運転していた、という状況ですね。
無免許運転は故意犯です。罪に問うには「免許がない状態で運転している」という本人の認識が要るとされており、期限切れにまったく気づいていなかった場合には、故意がないとして立件されないこともあります。失効から数日しか経っていない、更新の通知が届く前に転居していたといった事情があれば、その説明も通りやすくなります。
ただし、気づかなかったと言えば必ず通るという話ではありません。更新の通知が届いていた、失効から長い期間が過ぎている、期限切れを指摘されたあとも運転を続けていたといった事情があれば、認識していたと判断されることがあります。行政処分のほうも、故意の有無で点数が変わる仕組みにはなっていません。過去の運転が事故や別件の取締りから発覚することもあるので、気づいた時点で運転をやめ、再取得の手続きに入るのが最善の対処です。
失効からの経過期間別・再取得手続きの早見表
失効後の手続きは、経過した期間と、失効に至った理由が「やむを得ないもの」だったかどうかで分かれます。やむを得ない理由とは、海外旅行、入院、在監など、公安委員会がやむを得ないと認める事情を指します。
| 失効からの期間 | やむを得ない理由 | 免除される試験 |
|---|---|---|
| 6か月以内 | なし(うっかり失効) | 学科試験・技能試験が免除。適性試験と講習を受ける |
| 6か月超1年以内 | なし | 学科試験・技能試験は免除。ただし交付されるのは仮運転免許証で、対象は普通・準中型・中型・大型を持っていた人に限られる |
| 1年超 | なし | 免除なし。新規取得と同じ手続きになる |
| 6か月以内 | あり | 学科試験・技能試験が免除。理由がやんだ日から1か月以内に申請が必要 |
| 6か月超3年以内 | あり | 学科試験・技能試験が免除。理由がやんだ日から1か月以内に申請が必要 |
(警視庁の運転免許証の有効期限が過ぎてしまった方へによります。手数料や必要書類は都道府県ごとに案内が異なるため、管轄の窓口で確認してください)
やむを得ない理由がある場合でも、帰国や退院から1か月を過ぎると救済の枠から外れます。海外赴任や長期入院から戻ったら、免許の期限を真っ先に確かめる習慣にしておくと安全です。
再取得すると免許の色や経歴はどうなるか
失効後の手続きは更新ではなく、試験の一部免除を受けた新規取得です。免許を受けた日が新しい取得年月日になるため、それまで積み上げた運転経歴は引き継がれません。ゴールド免許だった人も、再取得した時点では無事故無違反の期間を一から数え直すことになります。
免許の色は自動車保険の保険料にも響きます。ゴールド免許割引を適用していた契約であれば、次の更新から割引が外れると考えてください。詳しくはゴールド免許と自動車保険の関係性と、免許がゴールドからブルーになったらどうなるかをご覧ください。
失効中も自動車保険の契約は続いています
免許が失効しても、自動車保険の契約が自動的に切れるわけではありません。保険料の引き落としも続きます。ここで気をつけたいのが、記名被保険者を失効した本人のままにしておくと、日常的に運転している家族が事故を起こしたときに補償の範囲がずれる可能性があることです。
しばらく運転しないと決めたなら、記名被保険者や運転者の範囲を実態に合わせて変更する方法が現実的です。車を手放すのであれば、解約時に中断証明書を発行してもらう手もあります。中断証明書には廃車や譲渡といった発行条件があり、中断時の等級にも下限が設けられているため、免許が失効したというだけでは発行されません。中断せずに解約すると、次の契約は新規契約の等級からのスタートになります。中断できる期間は一般に10年程度ですが、条件は保険会社ごとに定められています。
無免許運転が発覚したらどうなる
検挙のされ方には幅があります。その場で現行犯として捕まることもあれば、事故処理や別の違反の取締りをきっかけに後日発覚することもあります。呼び出しの通知が届いてから何が進んでいくのか、順に追います。
その場で逮捕されるとは限りません
無免許運転は赤切符が切られる非反則行為で、反則金を納めて終わりにはできません。ただし、必ず身柄を拘束されるわけでもありません。住所が明らかで逃亡や証拠隠滅のおそれがないと判断されれば、在宅のまま捜査が進み、後日の呼び出しに応じる形になります。
事故や別件の取締りの過程で過去の無免許運転が判明し、時間が経ってから呼び出されることもあります。「その場で何も言われなかったから大丈夫」とはなりません。
意見の聴取と処分の流れ
取消に相当する点数に達すると、公安委員会から意見の聴取の通知が届きます。処分を決める前に本人の言い分を聞く手続きで、出席して有利な事情を述べれば、欠格期間の短縮が認められる余地があります。ただし25点は取消の基準を大きく上回っているため、停止処分にとどまるケースはまれです。
欠席すると言い分を述べる機会そのものがなくなります。通知が届いたら日程を確保してください。
刑事のほうは、警察の取調べを経て検察官が起訴するかどうかを決めます。初犯で事故を伴わない事案なら略式命令による罰金で終わることが多い一方、無免許での人身事故は無免許過失運転致死傷として重く扱われます。似た構図は飲酒運転の罰則にもあります。
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まとめ
無免許運転は違反点数25点、前歴がなくても一度で免許取消となり、刑事罰は3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金です。更新を忘れて期限が切れていた場合も、持っている免許では運転できない車種を動かした場合も、点数の上では同じ扱いになります。
保険は、被害者への賠償責任を果たすための補償は維持される一方、運転者本人の損害を埋める補償は対象外になります。相手への対人・対物賠償は支払われるのに対し、人身傷害・搭乗者傷害・車両保険は対象外とする商品も少なくなく、扱いは保険会社によって分かれます。同乗者と車を貸した人にも刑事罰と免許取消が及び、所有者には民事の賠償責任が残ります。
今日できることは2つあります。免許証を出して、期限が切れていないか、種類と条件等の欄がふだん乗っている車と合っているかを確かめること。それから保険証券を開いて、運転者限定と年齢条件が家族の実態からずれていないか、人身傷害と弁護士費用特約が付いているかを見ておくこと。この2つ目は、相手の無免許に巻き込まれる側になったときの手取りを左右します。補償の中身は人身傷害保険と弁護士費用特約、相手が無保険だったときの受け皿は自賠責保険とはで確認できます。
無免許運転に関するよくあるご質問
投稿者プロフィール
- 経歴:大手損害保険会社に勤務後、弁護士事務所で秘書として交通事故訴訟の調査に従事





